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ミドルセックス
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著者: |
ジェフリー・ユージェニデス |
出版社: |
早川書房 |
評価: |
★★★★★ |
カテゴリ: |
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コメント: |
今年の一押し小説。
この作家の作品は、ソフィア・コッポラが映画化した『ヘビトンボの季節に自殺した四人姉妹』が有名ですが、(未読の私が言うのは何ですが)それを凌駕した出来なのではないかと思います。
語り部は女の子として育てられた半陰陽の人物なのですが、彼女が今、ここにいるルーツを三代遡って語っていることになります。ギリシャ人の祖父母が実は姉弟であったことから話は始まるのですが、彼らが夫婦となる過程が人間くさくてみずみずしくて、実にいいです。そして、そんな純情な乙女であった姉さんが一転、魔女のような婆さんになってしまう歴史が綴られている訳で。
大河小説としても、女の子小説としても、移民小説としても、アメリカの歴史を垣間見る小説としても一級品。長いけれど非常にユーモラスで次のエピソードが気になってくるので、乗ると一気に読んでしまいます。夏休みのお供にどうぞ。 |
関連本棚: |
The Pulitzer Prizes
青月にじむ
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ABC戦争―plus 2 stories (新潮文庫)
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著者: |
阿部 和重 |
出版社: |
新潮社 |
評価: |
★★★★★ |
カテゴリ: |
田舎
不良
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コメント: |
表題作は、ずっと前に単行本を読み始めで投げ出しっぱなしだったのだが、文庫になったのを機に読み直してみたら、非常に面白い作品だったことに気付いた。あー、投げ出して失敗した。<br>
山形を彷彿とさせる地方の、電車通学の高校生たち。あんまり頭がよろしくない彼らは、電車の中でもなわばり争いをしたり粋がったりするのだが、もう全編方言まみれ。ずっと昔、山形に近いうちの田舎で、県内の地方都市対地方都市を企画して、そこに住む若者が「どっちが都会か」言い争うテレビ番組の企画があったが、あれを思い出させる馬鹿馬鹿しさだ。この人の作品は、ばかばかしいほど滑稽なことを、真剣にやっている人たちを描くことが多く、何となく記憶の中に痛いものを思い起こしながらも、一気に物語に引き込まれてしまうんだよなあ。<br>
併録されているもう二篇も、また違ったトーンが楽しめてそれぞれにいい。特に「公爵夫人邸の午後のパーティ」の馬鹿馬鹿しさったら無い。これは、三島由紀夫の「恋の帆影」なんかをちらり彷彿させる小品だと思う。<br>
これに出会わなかったら、阿部和重の面白さに気付くこともなかったように思う。オールタイムベストに入るかも。 |
関連本棚: |
R子の本棚
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青月にじむ
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フェンス
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著者: |
マグナス ミルズ |
出版社: |
DHC |
評価: |
★★★★ |
カテゴリ: |
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コメント: |
ふ、不条理だー。<br>
都合が悪くなったら? 消せばいいんですよ、そんなの。とばかりに、次々と人が死んでいくのに、全然怖くない。いや、少しは怖いかな。死体は、丈夫で長持ちと評判の、フェンスの下に埋めていく。そうすれば完全犯罪さ……。<br>
モラルとか、そういったものはどっかに行った状態。ああ、世間体とか気にしなくなったら、こうなっちゃっても仕方ないかも知れない。奇妙なリズムで杭は打たれ、フェンスが張られ、死体は増えていくのでありました。作業の一環に殺人があり、処理した後には顔を洗ってパブにビールを飲みに出掛けるのです。のどかな田舎の風景の中には、そこここに死体が埋まってる……! |
関連本棚: |
青月にじむ
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日本難民
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著者: |
吉田 知子 |
出版社: |
新潮社 |
評価: |
★★★ |
カテゴリ: |
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コメント: |
空には外国の軍隊の飛行機。ひっきりなしにミサイルが落ちたり機関銃で乱射されたりして、一緒に逃げまどっていた周囲の人がばたばたと倒れていく。呆気なく、命を落とす。<br>
一晩寝て起きたら、本当にこんな世界がやってきそうな、そんな身近な怖さが描かれている。あり得ないけれど、段々本当にそうなるかも知れない、といったような。そのときに、私ならばどんな選択をするか。ひとつの建物に年も立場もいろいろな人がひしめき合う。自分が隠し持っている乾パンはどうしようか? そういえば、隣の部屋のあの人は、さっきこそこそと外に出て行ったけれど、何か食料のあるところを知っているのではないか? 山の向こうに生活していくのに必要なものが沢山落ちているらしい。この沢に毒が……?<br>
そして、この物語を「架空の出来事だ」と笑ってはいられない現実が、私たちのすぐそこに存在する恐怖。 |
関連本棚: |
青月にじむ
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ジャージの二人
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著者: |
長嶋 有 |
出版社: |
集英社 |
評価: |
★★★ |
カテゴリ: |
親子
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コメント: |
「間」がいいのですよね。でもって、感覚が私たちに近いので(都市も近いしね)、ゆるゆるの状態が肯定と否定のあわいにあったりして、その情けなさがいい感じに面白い。<br>
やっぱり、キャベツ畑で携帯電話を捧げ持つ光景が印象的です。単なる迷信なんだけど、田舎で電波状況が良くないということと、キャベツ畑とか、開けた土地とかそういう「雰囲気」からその迷信は生まれてきたんだろうなあ、という面白さと、単なるその光景を想像してみた面白さと。 |
関連本棚: |
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銀次郎
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〈プラチナファンタジイ〉 奇術師 (ハヤカワ文庫 FT)
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著者: |
クリストファー・プリースト |
出版社: |
早川書房 |
評価: |
★★★ |
カテゴリ: |
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コメント: |
いい年こいたおっさんが、お互いにお互いを攻撃しまくる大人げない話ではあります。「語り」のトリックを使ったネタなので、一方の語りをどう覆すか、ごまかすか、などなど、読み込めば読み込むだけ面白い小説です。こういう「多方面からの語り」によって成り立っている小説が好きな人にはお勧め。<br>
奇術師としての手記なので、トリックに関しての解説も面白いし、片方のトリックがどうしても見破れなくて、とうとう道を踏み外してしまうもう片方の哀れさという人間模様も見えて、なかなか読ませる作りになっています。全体の軸としては、もうひとつ周りに「現代」の枠を作り、主人公が始終感じている「双子の片割れの問題」がどう説かれるかが鍵となり、その鍵を握っているらしい没落貴族の女性との展開が、もうちょっとあると面白かったかもなあ、とは思いました。そういう「ものたりなさ」を感じたところでのこの評価ですが、読んでて面白いですよ。分厚さ、そして「ファンタジー」という言葉にひるんでいる人は是非、手に取ってみてください。 |
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10センチの空
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著者: |
浅暮 三文 |
出版社: |
徳間書店 |
評価: |
★★ |
カテゴリ: |
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コメント: |
普通に面白かったです。ホワイト浅暮? 自分の夢を見失いそうなときに不思議な力を授かり、本来の自分を取り戻す、って感じかな。学生の境遇といい、浅暮さんのプロフィールがかなり重なってて、感傷的なテイストがあるかな。力を、他の人に分け与えるとその分け与えた分能力が落ちるという辺りが、いい感じ。 |
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