自動車を中心とする製造業が盛んな愛知県を拠点にする労務コンサルタントである著者が、疲弊する中小企業の実態を鋭く抉りだしている。戦慄すべき報告の内実は本を参照してもらうとして、著者は日本の製造業の復活にむけて「人を大事にする日本的な経営」の再構築の必要性を説き、五つの主目標を掲げている。
1. 会社は、社員の雇用を守る
2. 会社は、決算を公開して利益配分をする
3. 社員は、生産性を向上して会社の業務向上に協力する
4. 会社は、長期的な視点で人・設備・技術開発に先行投資をする
5. 会社は、外国との競合に打ち勝てる強い体質になる
どれも異論なしだが、私見では要となるのが 2 の財務情報の共有だろう。ここは多くのオーナー経営者が抵抗を感じるところかもしれないが、著者は手始めに「一人あたり付加価値」すなわち「社員一人あたりの年間粗利益額」をキーナンバーとして採用することを奨めている。これは非常に優れた提案だと思う。
|