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小説の自由
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保坂 和志
新潮社
ISBN: 4103982055
紀伊國屋,
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hecho :
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2005年夏最大の収穫。現在小説を書くということに対して最も鋭敏かつ意識的な作家である保坂和志が、彼なりの流儀で小説とは何か、散文とは何か徹底的に考察する。
この「彼なりの流儀」というのが大事だ。保坂にとって、「論じるために小説を読む」という態度は邪道なものにほかならない。彼の卓抜な比喩によれば、評論家は羊の群れを統率する牧羊犬である。彼らにとってみれば、言葉を操る小説家もまた当然牧羊犬的な存在であるはずだ。ところが、小説家自身はむしろ羊の群れの中の一匹でいたいと思っているのだという。言葉と現実のはざまを決定的な指標もないままさまよい、一寸先の闇にこわごわと足を踏み出す行為こそ、保坂の言う「散文」なのである。
この本の保坂の散文は、そのような態度表明に極めて忠実である。様々な小説が引用されるが、それらの読みは「論じられる」ために一定のベクトルに矯められてしまうことなく、様々なテーマが心を掴むのにまかせ、うろうろとさまよう。当初論じられるはずだったテーマはいつの間にか忘れ去られ、新たな関心事が作者の心を占める。しかしそのような彷徨の果てに、著者はいつしか「小説」あるいは「散文」と呼ばれるものの核に確かに行き着いたように僕には思われる。それは確かに明示することのできないものではあるけれども。
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最終更新 : 2006-04-28 21:05:12 +0900
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