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ささら さや(2) (バーズコミックス ガールズコレクション)

加納 朋子 碧也 ぴんく
幻冬舎
ISBN: 4344803647  紀伊國屋, Amazon, WebCat
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素光 : 本屋の店頭に平積みにされていたこの本のタイトルにふと惹きつけられて、本を1冊手に取って作品紹介や解説を読んでみたところ、どうやら「ゴースト ニューヨークの幻」を現代日本風にアレンジしたような雰囲気の連作短編ミステリであるようなので尚更興味を惹かれ、今まで1度も読んだ事のない作家であったが試しに読んでみる事にした。

不慮の事故により、愛する妻と生まれたばかりの息子を残して死んでしまった夫は、しかし妻のそばに幽霊として留まり、彼女と息子を見守りつつ、彼等の危機には彼女の周囲にいる人間の体を借りて駆けつける。連作短編だが、1篇ずつの感想ではなくまとめての感想を書いておく。

幸薄い人生だったさやに暖かい家庭を与えたのも束の間、妻と子供を遺してこの世を去らなければならなくなった夫が、他人の口を借りて妻に投げかける言葉はぶっきらぼうながら優しく、彼等を見守り続ける目は温かい。ようやく手に入れた家庭を無惨に壊され、1人遺された息子をも夫の家族に奪われそうになって、亡くなった伯母の家がある地へと必死に逃げてきたさやは、不器用で頼りたがりで泣き虫だけれど、恐らくは無自覚だろう驚く程の人の良さを振りまいている。新しい土地で彼女と知り合い何かあれば(なくても)彼女の家に集まる老女3人と若い母子は、それぞれ癖の強い性格で一見付き合い辛そうなタイプではあるが、皆がさやと息子へ惜しみない愛情を降り注ぎ支えとなる。

物語の中のいろいろな場面や台詞がツボにはまる切なさで、読んでいる最中どころか今書きながら思い返すだけで涙が出そうになったり。しかしただ切なく泣けるだけの話では終わっておらず、登場人物達の優しさ・温かさがどの篇からもほのぼのと発散されているのがとても良かった。ラストに向けてのさやの成長(敢えて端的な表現に留める)に感じる、切なさ・淋しさに裏打ちされた力強さも、これまたぐっとくる。こんなにしみじみと静かに感動させる話を書く作家を今まで知らなかったのは迂闊だった。忘れない内に著者の他の作品を集めようと思う。ミステリとしては弱めなので、ミステリを期待して読まない方が吉。
他の本棚 素光, こまい

最終更新 : 2005-10-23 04:36:39 +0900
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