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新装 ぼくを探しに

シェル・シルヴァスタイン
講談社
ISBN: 406112983X  紀伊國屋, Amazon, WebCat
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評  価
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♪ : 何となしに、引越し後3年ばかり椅子を探していると言った私を、知人が目黒界隈の家具屋散策に連れ出してくれた事がある。その日は決まらなかったのだが、後にあの店のあの椅子に決めたと連絡をしたら「あのシェル・シルヴァスタインの“ぼくを探しに”みたいな椅子ですな」と評してくれた。絵本だというのだが覚え乏しく、さしあたっては話を合わせようと本を購入することにした。本屋で驚いたのが、強烈にデフォルメされた主人公の表紙には見覚えがあり、むかし確かに読んだ事も、姪だった子(別れた旦那のお姉さんの子)にプレゼントした事まで思い出した。
良い絵本は、話が簡単で奥が深い。主人公はパックマンのような姿で、自分の欠けている部分にあうピースを探して日々転がりながら旅をしている。道中、色々な欠片たちに出会うのだが...。
短く単純な言葉なのだが、その時々の読み手の心の状態により、如何様な意味をも持たす事ができる非常に興味深い本である。こんなに面白いのに何故ちゃんと覚えていなかったのか不思議であった。おそらく最初に手にした頃は幸せボケしていて、“私はもうピースを見つけているわ”ぐらいにしか思わなかったのだろう。(おそらくもなにも、若かったのである。)
それに引き換え、再読した時の私は、欠けている部分のある姿が自分と重なって仕方がなく、ピースを探す主人公になぞらえては自分に欠けているものは何なのかと考えあぐね、仮に伴侶を得ても埋める事のできない欠損部のある事に気付き、痛く悲しくなってしまった。(自分でも往生際が悪いと思うのだが、つまりは、そういう年齢になってしまったようである。)
だが、しかし、その悲しみもビック・オーと出会うまでの事...。ある種の答え(救いでも慰めでも良いけが)に相当するものが託されているので「ぼくを探しに」を読んで悲しくなってしまった人は、続編「ビック・オーとの出会い」も手にしてみよう。
こうして2冊の本を読んで、自分の心の動きの落差にすっかりやられてしまった私にとって、「ぼくを探しに」は、自分の心の状態を計るバロメーターという位置づけを得るに至ってしまった。何年か経った時に、この本を読んで何を思うのか、非常に楽しみである。
蛇足なのだが、作者はpieceとpeaceを懸け合せているのではと思えてならないでいる。英語版も手に入れねば。
さらに蛇足なのだが、続編が手元に届くまでの間に、「汚れちまった悲しみに」がどうしても読みたくなり本棚を漁ってみた。以来、私的には久しぶりに本の連鎖が続いている。ともあれ、良い本に再びめぐり合わせてくれて、本を読む習慣を取り戻させてくれた知人に、何よりも深く深く感謝。
ばろなごん : 足りないものを探し続けることが本当にいいことなのか、を考えさせる本。
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最終更新 : 2008-02-25 17:00:57 +0900
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