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タイムトラベルの哲学―「なぜ今だけが存在するのか」「過去の自分を殺せるか」 (講談社SOPHIA BOOKS)
青山 拓央
講談社
ISBN: 4062691639
紀伊國屋
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べ_deleted000 :
SFに出て来るタイムトラベルの分析 (その実現可能性の分析ではない) から,なんとい うか時間論を哲学するココロミ……というべきなんだろうか。面白くは読んだが説得はさ れなかった,という読後感である。
具体的に行こう。まずは4章「タイムトラベルと2つの今」の中での「私の今」と「動く 今」に関する考察が,オレにはなんかヘンな感じがした。一切の実証が不可能でありなが ら「動く今」のイメージが有効に働くのはそれが「決して他人と共有され得ない『私の今 』」の「生活の為に必要な方便的サブセット」だからぢゃないのかな。青山クンの言葉を 借りれば「動く今」と呼んでいる方の今こそが「私の今」の手下なんだ,というのがオレ の「感じ」なんだけどな。
もひとつ,こっちは別に違和感ではないんだけど,9章「タイムトラベルと同一性」の 議論の中で,ニュートン力学から相対論への飛躍を論じた部分「時間概念の構成に用いる 無根拠な同一性の選択」という言葉はちと分かりにくかった。ニュートン力学から相対論 への「移行」(飛躍かなぁ) は,ヘンな言い方をすれば「限定解除」なんだよね。ニュー トンにはどのような同一性の選択肢もなかった,アインシュタインはその選択肢を得て, その中で最も遠くまで (この「遠く」は時間的にも空間的にも,というか時間と空間の区 別がなくなるところまで,なんだけど) 有効でありそうな選択をした,のだと思うのね。
こっからは本を読みながらずっとオレの頭が「哲学してた」部分なんだけど,子供のこ ろ,時間について最初に考えたのはアキレスと亀みたいなことだったんだよ。オレは母親 の実家である寺で幼児期を過ごしたんだけど,メシの前に毎朝お経をあげなきゃいけない のね。で,冬の寒い日とかに口のなかでモゴモゴ言ってた時,ふと,「……ということを ボクは今考えてるんだ……ということをボクは今考えてるんだ……ということを」って考 えた。びっくりした。言葉は同じだけど,これを一度思う度にその中身は違う,その「今 」も違う。それは単なる経過のようでいて認知が絶え間なくメタになっていく過程なんだ よね (もちろんそんな気の利いた言葉は知らなかったが) 。
人間の生存ちうのをこの意味で認知のインフレーションであり,同時にエントロピーの 消費だと考えれば,熱力学の法則をメタファーとして使って,そも命というのは「時間に 関しての位置エネルギーみたいなもの」と考えられそうデハナイデスカ,なんて。……ひ さびさに知恵熱出そうであります(笑)。
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最終
更新
: 2005-09-09 17:54:28 +0900
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