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砂漠に思いを馳せる
日常と非日常 ——— ただの虫好きの内向的な中年が、砂漠で珍虫を追っていくうちに砂漠に暮らす村へと迷い込んでしまう。日も暮れて帰れなくなった主人公は一晩だけの宿泊を求める。村人に案内された宿には女がいた。砂を深く掘り、梯子を降りてその中に住んでいる女。非現実的状況のはずなのに、妙に現実的で生々しい女の描写と、砂穴の描写。砂穴に閉じ込められてしまった主人公だが、日が経つにつれて次第にすべてが日常化してゆく。それは馴化なのか、それとも特化された環境の中で悟る人生への諦観なのか。。。
本を開けてただの文字列を読んでいるだけなのに、なぜか息苦しくなり、口の中に砂を感じてしまう --- それほどの表現力に満ちた作品。この作品は安部公房の作品の中でもストーリーが分かりやすく、頭の中にイメージを創りやすいのではないでしょうか。安部ワールドを覗くには最適の一冊。
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