出た当時は割と話題になった山本弘さんのSF短編集。「ザ・スニーカー」などに発表されたウェルメイドでライトな短編を集めて、それに書き下ろし2篇と全体を貫くストーリーを付け加えてまとめたものです。
人間に対して反旗を翻したマシンに敗北した人類は衰退し、かつての文明は見る影もなく崩れ去った未来。一人の少年が美しい戦闘用アンドロイドに捕らえられます。アンドロイドの名前はアイビス。アイビスは人とマシンがどのように争ったのかその歴史の真相を語るために、まず、人類がもっとも反映していた21世紀に書かれたフィクションを語り出します。 「念のために確認しておくけど、21世紀初頭の日本の風俗には詳しいわね?」<br />「ああ、その頃の本はたくさん読んだから」<br />「『スタートレック』って知ってる?」
ぐはっ(笑)。というわけで、第1話はスタートレックのひねったパロディです。でも、これがいい話なんだ・・・。そして、テクノロジの進歩とそれがもたらす幸せな世界を描いたSFをアイビスは読んで聞かせます。
そして、アイビスがついに語り出す真実の物語。それが「アイの物語」。この話はかなり本格SF。そして、歴史の真相とは・・・
最初の数話は普通の人が「SF」と聞いて思い浮かべる、わりとわかりやすいSF初心者向けの話。ライトノベル感覚で楽しく読めちゃいますし、そのままの流れで最後まで読めばしっかりSF。SF入門の本としても、非常に良くできてると思います。年々、平均年齢が高まっているという噂のSFファンは、この本をどんどんとプッシュして若い読者をSFの沼に引きずり込むべきだと思います(笑)
なんだか、久しぶりに幸せな未来を書いたSFを読んだ気がして、気分がいいなー
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