コメント: |
これまで、聞きかじっていた米国の学生の学部から始まる教育システム、そこから始まるアカデミックキャリア、テニュア、国などから来るファンドの取り方、すなわち、米国のアカデミックシステムとその社会的位置づけをAssociate Proffessorまで経験した著者が徹底的に描いてみせる。これを読むと、独立行政法人化にはじまり、大学院重点化、産学連携、ポスドク増大計画、最近の修士博士一貫化に至る文科省の高等教育に対する政策が、米国のアカデミックシステムの一部だけを取り出し、一貫性なく、輸入しようとしてきたかがよくわかる。
筆者も語っているように米国のアカデミックシステムは米国社会の中での位置づけがあって、成り立つものであり、木を移植しても育つのが難しいように、その一部だけを取り出して輸入してもうまく育つはずもなく、結果として草ぼうぼうになってしまった我が国の高等教育の荒廃があるのではないかと思えてくる。
2004年初版であるが、最終章の我が国との比較が、未だに新鮮なのは、大学改革が進展していない証でもある。「今更聞けない米国のアカデミックシステム」であるが、一度通して復習してみることをお勧めする。 |