もつくん2_deleted000_deleted000 :
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675年天武天皇の勅令により獣肉食が禁止され、以後1200年間(薬喰いと称して猪などを食する場合を除いて)肉食をタブー視し避けてきた日本人が肉を中心とした洋食に親しむようになったのは、とんかつが発明されたからである。
漱石の三四郎の一節に、牛鍋屋で学生が皿に盛られた肉をむんずとつかんで壁に叩きつける、という場面がある(私は恥ずかしながら三四郎を読んでいない)が、そのころ牛肉に安い馬肉を混ぜるという悪質な牛鍋屋が横行し、実際にこのような判別法(壁に引っ付いている時間が長ければ馬肉)が本当に行われていたらしい。このような食習慣が大きく変化する時期の戸惑う庶民の姿を交え、アンパンの誕生にも触れながら、とんかつの歴史を紐解いていく良書である。
一時期とんかつに凝っていたことがあって、親しい洋食屋さんで無理にお願いしてミディアムレアに揚げてもらったことがある。肉汁を衣がうまく受け止めてくれて、自家製のソースとともに、それはそれは美味しいとんかつであったが、さすがに豚の生焼けは危ない(最近はそうでもないようだが)ので、それ以後あのようなとんかつを食す機会はない。が、死ぬまでにもう一度食べてみたい。
その洋食屋さんが2006/9/16をもって、25年の歴史に幕を閉じることとなった。もうあのとんかつは食べられない。
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