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万物の尺度を求めて―メートル法を定めた子午線大計測

ケン オールダー
早川書房
ISBN: 4152086645  紀伊國屋, Amazon, WebCat
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Tambourine :

1メートルが何を元に決まっているか、あなたは知っていますか?

ほい、その通り。地球の子午線周り1周の1/4、つまり北極から赤道までの距離を1千万メートル(1万キロメートル)とするように決められたのです。学校でこれを教わったときは、ははあなるほどと思いました。素朴な気持ちで、これなら地球上のすべての人が納得出来るだろうと。「世界の標準時はイギリスのグリニッジ天文台の時刻で決まってます」なんてのに比べれば、断然、受け入れやすいに違いありません。

でも、やっぱりよくよく考えてみると、いろいろと疑問はあります。

* 誰が何のために言い出したことなのか<br />* 実際に誰か地球の大きさを測っていたんだろうか

やはり、メートルの大きさを決めるために地球の大きさを測った人はいました。時はフランス革命直前のの18世紀末。ルイ16世の指示の元、フランス科学アカデミーは、二人の天文学者をパリを貫き北はダンケルク、南はバルセロナを両端とする子午線を測定するために派遣します。北にドゥランブル、南にメシェン。二人は、両端から測定を始めて子午線上で出会い、ミッションが完了するその時の再会を約束して旅立ちます。

そして、フランス革命が勃発。二人が旅立って6ヶ月後、ルイ16世は処刑されアカデミーは解散されます。旅の空の下、それを知りながらミッションを継続させようとする二人。幾多の試練が二人を襲います。そして、メシェンの過ちとは・・・。

この二人の人生と、度量衡の統一という観点からみたフランス革命の描き方が面白くて、生き生きとした物語に心打たれます。一度でも、実験屋としてデータの処理をしたことがある人なら、へぇーと思うことがたくさんあるでしょう。そうかー、この頃はまだ最小二乗法ってなかったのね。実験屋じゃない人にとっては、たかだかある点とある点の距離を正確に測るだけでこんな苦労が必要なのかと驚くんじゃないかな。

分厚い本ですけど、楽しく読めますよ

うち : 面白いよ。 メートルが地球の円周の1/4000万で、それをはかって決めた人がいるというのは、大昔に子ども向けの本で読んだ記憶があるけれども、それが、決して単純な話ではなかったのははじめて知った。 でも、それ以上に面白かったのは、当時の(フランスに限らず)度量衡のシステムは人間の生活に基づいて決まっていたことで、例えば土地の面積でも、ある長さの平方というセンスではなく、ある収穫量を与える面積(それ故に、やせた田土地ではおなじ評価でも今日的な意味の面積は大きい)とか、鉱夫が1日に掘り出せる量の1/12という風に定まっていたという話。あるいは、地域ごとの度量衡は、その地域内の生活に公平をもたらすように定まっていたという話。経済がそれぞれに閉じている倍には、それでOKで皆幸せだった。だけど、交流が始まって、国が経済圏になると、共通の度量衡が必要になり、その文脈の中で共通尺度が意味を必要になるということ。 16世紀文化革命では、聖書の各国語訳により標準となる各国語ができて、それがその国のアイデンティティーに効いているという話が出てきたけれども、それと同じように、度量衡も世の中をまとめるのに関連しているということは、言われるまでは、まるで思いついてもいなかった。 さて、振り返るに、ネットによりある意味、文化圏が拡がりつつある訳で、その時に何が共通化され、そして、どんな地域文化が失われるのだろう。そういったことも考えさせてくれる本である。
他の本棚 spi, minek, Tambourine, うち, ystt

最終更新 : 2006-11-07 02:14:37 +0900
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