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食べるアメリカ人
食べるアメリカ人
著者: 加藤 裕子
出版社: 大修館書店
評価: ★★★☆
カテゴリ: 健康 アメリカ
コメント:  オビにある,「アメリカ人は,なぜあんなにマズい食事で平気なのか?」という宣伝惹句にノセられて買ってしまった235ページ。この設問への答えとしてあげられているのはピューリタン的禁欲指向,開拓時代に培われた味より便利さへの渇望,そしてそれが行き着いた果ての,「オフクロの味は缶詰スープ」という現実など,目からウロコが落ちるような話ではない。まぁCIAやNSAの陰謀でメシがまずいわけもないが。<BR>  面白かったのはアメリカ人のどっかおかしい健康オタクぶりや,傍若無人なスシの食い方など,オレも常々思っていたあれこれが取り上げられていること。思わずそうそう,そうなんだよね,と同意首肯させられる。普通の日本人なら3食分はゆうにありそうな量のメシをコーラの1リットル瓶で腹に流し込みながら「日本食はローカロリー,ローファットだというから食ってるんだがちっとも痩せない」と愚痴るおばさんを見たことがあって,オレも「そんだけ食うなら何食っても一緒ぢゃないのか」と思ったもんな。<BR>  その他,アメリカで美味しいものを食うには郊外のエスニックを狙えだとか,結婚祝いの贈り物として定番のクックブックの話だとか,ベジタリアンの種類だとか,スラスラ読めるだけでなく史料的な価値もありそうだ。ここ数年,毎年行っている,バークリーのレストラン「シェ・パニーズ」の創業者アリス・ウォーターズの開店直後の苦労話なども興味深い。
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アメリカ新上流階級 ボボズ―ニューリッチたちの優雅な生き方
アメリカ新上流階級 ボボズ―ニューリッチたちの優雅な生き方
著者: デイビッド ブルックス
出版社: 光文社
評価:
カテゴリ: アメリカ 文化
コメント:  一言,もの凄く不愉快な本。途中で何度も読むのをやめて放り投げようかと思ったが,読み終えてウェブとかに悪口を書きたい書いてやる口を極めて罵ってやるというその一心で我慢して読んだ。<BR>  「ボボズ」とは著者によれば「Bourgeois Bohemians」の略,簡単に言えば高学歴かつ高収入のアメリカの知的エリートたちのこと。著者のブルックスは自らをその一人として,前世紀(と書くと恐竜が出てきそうな気がするがオレの産まれた20世紀のことだ)前半,アメリカ社会の支配層であったブルジョアの価値観と60年代,それに異議を唱えたカウンター・カルチャー系のボヘミアン文化を融合して新たな時代の担い手となる人々であると位置づける。<BR>  オレのようにひねた読者でなければ(例えばこの本の翻訳者であるセビル楓さんのようなヒトであれば),気取らず親切で洗練された彼等の生き方に共感したり憧れたりできるだろう。酒よりコーヒー,美食より健康,ヤッピーの俗物性を嫌い,サバティカルを取ってボランティア活動に精を出す……。が,こう言っちゃなんだがそれらはマリー・アントワネットの洗練であり白木葉子の慈善ではないのか。<BR>  世界の5%にも満たない人口で世界の半分のエネルギーを消費するアメリカという国で,その政策(今この国でタケナカが真似しようとしている政策だが)ゆえに拡大した貧富の差の上澄みの部分にいるニューリッチどもが,週末に郊外のラテ・タウン(彼等が住む街をこう呼ぶのだ,バーよりコーヒーハウスが多いから)のカフェで熱帯雨林の大切さについて静かな口調で語り合って,ボクらは自然を大切にしている偉いでしょ,というのである。京都議定書の批准を拒否するジョージ・W・ブッシュを「ボボズ」代表として支持しながらだ,バカぢゃなければ偽善だろ? これ。<BR>  本書がアメリカで上梓されたのは2000年,つまりあの9.11以前なわけだが,この翻訳なった2002年の段階で訳者のセビル楓さん,解説を書いておられる明治大学の越智道雄センセともに,この本に書かれた彼等が9.11に続くアメリカのアフガン攻撃やユニラテラリズムへの世界からの批判についてどう考えているのかに言及していない。彼等の中でもグレードが高いのは外交政策に関わる仕事と書いてあるにも関わらずだ。てめぇらナルシストのためにアフガンやイラクで子供が死ぬんだよかったな,け,と燃え尽きた矢吹丈に代ってワタシが言わせていただきたい。
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ビター・メモリー (Hayakawa novels)
ビター・メモリー (Hayakawa novels)
著者: サラ パレツキー
出版社: 早川書房
評価: ★★★★
カテゴリ: アメリカ 小説
コメント: 第1作の「サマータイム・ブルース」に登場以来ずっと彼女の「頼りがいのある姉」みたいな立場だった医師,ロティ・ハーシャルの過去を巡る物語である。原題は「 Total Recall」,同名の映画のイメージがあるのでそのままの邦題にしなかったんだと思うが,映画の方の原作はP.K.ディックの「追憶売ります」でその原題は「We ca n remember it for you wholesale」なんだからややこしいよな。<BR>  閑話休題,恋人モレルがアフガニスタンに取材に行くことで憂鬱なV.Iは,黒人労働者サマーズからの依頼で彼の叔父にかかっていた筈の保険金詐欺事件を調べ始める 。同じ頃シカゴでは今も残るホロコースト被害についての会議が開催され,そこで「ナチスの生き残りによって虐待を受けながら育ち,最近催眠療法によって自分が実 はユダヤ人であることを思い出した」と称する男がスピーチを行う。ラドブーカと名乗るその男の名を聞いてロティは失神,わけを問い質すV.Iに彼女はかたく心を閉ざ してしまう……。<BR>  ホロコーストとユダヤ人という重いテーマを真正面から描き切った力量はさすがだし,ミステリとしても謎解きもこれでいいんだろうが,1本の小説としてはバランス に不満が残る。未解決の謎,というか「それであいつはどうなったの?」という当然語られるべきエピローグが欠落している印象。なんつうか,すっと追いかけている シリーズだけに,そういう細部までを描くことによる物語の厚みを大切にして欲しいと思う。<BR>  それにしてもなるほど,「故人が生命保険に入っていたことを遺族が知らないという理由で,保険会社が支払わずに済んでいる金」というのはきっと想像以上に巨額 なんだろうな。言ってみりゃ使われないテレフォンカードみたいなもんだもんなぁ。オレもちゃんと親に聞いておかなければ。
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ダーウィンの使者〈上〉 (ヴィレッジブックス)
ダーウィンの使者〈上〉 (ヴィレッジブックス)
著者: グレッグ ベア
出版社: ソニーマガジンズ
評価: ★★★★
カテゴリ: アメリカ 小説 SF
コメント:  なんつうのかね,昔はハードSFって言ったら物理学の世界だったのだが,昨今のハードSFは生物学なんだな。オレもそれなりに例えばスティーブン・ジェイ・グールドの本とかを読んだり,ディスカバリー・チャンネルを観たりしてその方面に関して世間の平均以上の知識を持っているツモリだったのだが,「ヒト・ゲノムに数十万年前から潜んでいたレトロウィルスが現代社会のストレスを引き金に活性化して非連続的進化を引き起こすその方法」の解説なんてのは読んでてもさっぱり判らないよ(笑)。<BR>  しかしそれなりに面白く,特に後半,主人公の女性生物学者が自らミュータントを妊娠することを決心してからのダッシュな展開はマイケル・クライトンばりに読ませる。…ま,こういう言い方をするということはつまり前半は結構タイクツなトコもあったということなんだがね。事実を記録したドキュメンタリではなく小説なんだから,フォーカスを絞ることも必要だろう。はっきり言えば前半には無用な,物語的にいなくても大差ないくせに名前を与えられてる登場人物が多い気がする。それからラストで出て来るミュータントの幼児の容貌の描写がイマイチ像を結ばないのもマイナス要因である。顔に「まだら」があっても,文字で「可愛い」って書いてあればああ可愛いのだな,と読んでるヤツは納得するだろうが,それぢゃきっと映画化の話は来ないよ。ペイントの剥げかけたグレート・ムタは可愛くない。
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アコーディオンの罪 (ACCORDION CRIMES)
アコーディオンの罪 (ACCORDION CRIMES)
著者: E・アニー・プルー
出版社: 集英社
評価: ★★★★
カテゴリ: アメリカ 小説
コメント:  時間はかかったけどこの本を読むのは愉しかった。なんてのかな,「ストーリーを追うヨロコビ」ではなくて,もっと純粋な「文章を読むヨロコビ」を感じさせてくれる本,映画よりも音楽に近いタイプの本である。たまにはこういう本を読むのもいい。仕事で切れ切れではなくてまとまった休暇とかを取っていっぺんに読めると最高なんだがな。<BR>  ストーリーを紹介するのは難しい。簡単に言えば,約100年前,イタリア移民のアコーディオン職人が持っていた「小さな緑色のボタン式アコーディオン」が,約100年後にミネソタからミシシッピへ向かうハイウエイ沿いで破壊され,その場にいた貧しい人たちにちょっとした人生の転機をもたらすまでの,なんつうか「アコーディオン・オデッセイ」である。もちろんアコーディオンに手足が生えて……なんて文福茶釜みたいな話ではないので,次々と替わるその持ち主たちがその場その場での「主人公」になる。<BR>  モノが楽器なので当然ながら音楽がからむ。イタリア系に始まってドイツ系,メキシコ系,フランス系,アフリカ系,ポーランド系,アイルランド系,ノルウエー系と移民達の手を渡り歩きながらそれぞれの音楽を奏でたり奏でてもらえなかったりする。…そだな,1999年だったか,「ラン・ローラ・ラン」ってドイツの映画があったではないか。あの中で主人公のローラとすれ違う人々のその後の人生がラッシュで垣間見られるところがあったでしょ。この本はあのローラのポジションにアコーディオンを置いた,ある意味アメリカの年代記とでも呼ぶべきもんなのだ。誰にでも薦められるわけぢゃないが,オレは面白く読みました。
関連本棚: stonechild kitashi
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ファストフードが世界を食いつくす
ファストフードが世界を食いつくす
著者: エリック シュローサー
出版社: 草思社
評価: ★★★★☆
カテゴリ: アメリカ
コメント:  まず本から離れたところから筆を起こす。2001年10月3日の毎日新聞「記者の目」というカコミ記事に論説室の高畑昭男という記者が「タリバンも米国も悪か? 『どっちも』論こそ危険だ」と題して,「テロは『絶対悪』なんだから今こそ米国に協力してこれと戦わねばならない,テロとの戦いは『絶対に必要』なことだ」という好戦論を書いていた。<BR>  オレとてテロリストの側につき彼等の行動を支持するわけではない,ないが,この記者に逆に聞きたい。世界中が協力して「テロ支援国家アフガニスタン」を攻撃し,再度の報復テロなどできぬよう,一族郎党皆殺しにしたとしよう (オレはそうしてもテロはなくならないと思うが,「テロ」の主たる母体が「憎悪」である以上,皆殺しはこの記者などのいう「根絶」の最低条件だろ? 殺したいんだろ?) 。そしてどんな世界がやってくるのだ? <BR>  さぁ,米国を攻撃するテロリストはいなくなった,世界各国は今さらながら「世界最強」を誇る米軍の力を見せつけられた。そのあとで,例えばこの日本はブッシュに「京都議定書の批准」を要求できるのか? 核実験全面禁止条約 (CTBT) を反故にしてる,と批判できるのか。世界中どこの国が米国の首に鈴をつけられる? この戦争で勝利の味を覚えた米国民はきっと言うぞ,「なにジャップがアメリカの政策に反対してやがるだと,そんなヤツはテロリストと同じだ,かまうこたぁないからやっつけちまえ」。<BR>  米国にはそんなことをしない良識がある? あるかどうかがこの本に書かれている。あの国の象徴とも言えるファストフード産業が,他国民どころか自分の国の将来をになう子供らまでを,いかに食い物にして肥え太って来たか。そして歴代共和党政権が,特にレーガン・ブッシュ政権がいかにそれに手を貸して来たか,が全部書かれている。<BR>  テロリストは犯罪者として裁かれ罰せられるべきだ。今回の米国のやり方には賛成できない。なぜなら,米国以外の国がテロに遭った時に同じことができないやり方,アメリカにしか出来ないやり方でテロと戦おうと言ってるからだ。圧倒的な暴力をバックに,やんわりと協力を強制する。こう言っちゃなんだが,それはヤクザのやりクチだ。都合のいい時だけ「自由主義社会の盟主」になって権力を行使し,別の時には他国の苦境を顧みない。<BR>  石油などの化石燃料を使いたいだけ使い,世界中の二酸化炭素の約1/4を一国で排出するアメリカは,例えば地球温暖化による海面上昇が死活問題であるいくつかの国の苦しみには鼻もひっかけない。「自国の産業に悪影響があるから」京都議定書は批准しない,と言い切ったではないか。あんなことは米国にしか言えない。もしよその国があんな態度を取ったら他ならぬ米国にこっぴどく非難されるに決まっているからだ。そういうメンタリティがどっから来るのか,それもこの本を読めば解る。必読だと思う,あなたが例えばマクドナルドが大好きであれば。
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ポップ1280
ポップ1280
著者: ジム トンプスン
出版社: 扶桑社
評価: ★★★★☆
カテゴリ: ピカレスク アメリカ 小説
コメント:  吉野朔実の「弟の家には本棚がない」で知って取り寄せた1910年代のアメリカの田舎町を舞台にした暗黒小説……。つか,こりゃアメリカ版「村井長庵」(「歌舞伎・勧善懲悪覗機関(かんぜんちょうあくのぞきからくり)の」でもいいんだけど,ここは「筒井康隆の」を思い起こしていただきたいところ)ですな。<BR>  人口1280人の田舎町ポッツヴィル,この町の保安官ニック・コーリーは間抜けの皮をかぶった極悪人である。町の売春宿に巣食うヒモ達を殺して隣の郡の保安官をその犯人に仕立て上げるわ,時期保安官選挙の対立候補を噂を武器にして追い落とすわ,愛人の亭主を銃の暴発事故に見せかけて殺すわ……。そして彼はうそぶくのだ。「オレの意志ぢゃない,オレはみんながオレに期待していることをしているだけさ」。<BR>  同じ暗黒小説と呼ばれても,エルロイや馳星周の主人公たちはもっとギラギラで欲望むき出し,人を殺すときも鼓動バクバクな感じがするんだが,この男は違う。心の底からそんなことはたいしたことぢゃないと思っている,通るのに邪魔な石をどかすような感じ。ね,村井長庵でしょ? <BR>  ……ところで「弟の家には本棚がない」にはこの本をネタにジャン=ベルナール・プイというフランス人作家が「1280の魂」という本を書いた,でも翻訳はされていないという話が出てくるのだが,ワシもそれが読みたい,読みたいぞ。
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ホワイト・ジャズ (文春文庫)
ホワイト・ジャズ (文春文庫)
著者: ジェイムズ エルロイ
出版社: 文藝春秋
評価: ★★★
カテゴリ: アメリカ 小説
コメント:  600ページをこえる大冊。この本はエルロイの「暗黒のL.A.4部作」の最終章,1997年に公開されてアカデミ−賞の脚色賞,およびキム・ベイジンガーが助演女優賞を獲得した映画「L.A.コンフィデンシャル」(カーティス・ハンソン監督) に続く日々を描いた物語である。…つまり「L.A.コンフィデンシャル」は「暗黒のL.A.4部作」の第3作目だけを取り出して映画にしたもんなのね。<BR>  ヘビィな小説だ,馳星周絶賛,「暗黒小説」〜オレの定義では「登場人物の誰も好きになれない『どいつもこいつも小説』」の傑作である。前述の映画を観た人ならば,映画でガイ・ピアースが演じるエド・エクスリーと原作の印象の違いに驚くかもしれない。映画とはかなり展開も違っている (一応ネタバラシは避けておく)
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