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岸信介―権勢の政治家 (岩波新書 新赤版 (368))

原 彬久
岩波書店
ISBN: 4004303680  紀伊國屋, Amazon, WebCat
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svnseeds :

http://d.hatena.ne.jp/svnseeds/20070120#p1

激しくおすすめ。岸信介について最初に読んだ本。年末にシンガポールで読んだ。岸信介関連をざっと知るにはこの1冊だけで良いんじゃないか、というくらい良くまとまっております。目だったバイアスは感じられず、掘り下げも新書にしては十分。ホントおすすめです。

岸は若いころ北一輝や大川周明に影響を受けており、その北や大川は当初マルクス主義にかぶれていたということをはじめて知る(p.30)。彼らはその後国家社会主義者となり右翼思想の源流となったのは周知のとおり。大変面白い。結局日本の思想家というのは、右も左も元を正せばマルクス主義に行き着くのだなあ。右も左も何か問題があるとすぐに構造のせいにして改革を言い出すのはこれがためなり哉。

また岸が中心となった保守合同の話も大変興味深い。自民党は元来様々な保守政党の寄せ集めでありそれが派閥の源流である、というのは表面的な知識としてはあったのだけれど、吉田茂から始まる経済重視派(池田、宮澤など)が戦後のパージにより生じた空隙を埋めた官僚出身の政治家たちであり、一方の典型的な右派政治家はパージから復活した戦前からの政治家だった、というのは中々面白い。

それと、岸がまさに政治生命を賭した安保改定も大変面白い。片務的な旧安保条約をある程度双務的なものへ改定し、憲法を改定した後により対等な条約へ再改定しようとしていたという。米国による占領の記憶がまだ生々しく、またソ連・共産中国という「わかりやすい脅威」があった時代であれば、憲法を改定し対等な安保条約を持つというゴールの設定は非常に論理的に思える。僕がわからんのは何故今またこれをやろうとしているのか、という点なのだけれど、この問題を考えるのに非常に有効な視点を与えられたように思う。

それにしても当時の安保反対運動は酷いなあ。僕としては岸に同情してしまう(この本の記述には偏りはないので念のため)。当時の状況からして、日本には何らかの安全保障条約が必要であり、また日本は建前上武装を放棄しているのだから米国に頼らなければいけない、というのはgivenな条件だったはず。片務的な旧条約をある程度(というのも憲法に縛られているため)対等なものにした岸の仕事は、反対派が言うような酷いものではない。それに成立までの強引なやり方も社会党がまともに議論に乗ってこなかったことに少なくとも原因の一端はあるわけだから、岸を民主主義の敵呼ばわりするのはあんまりじゃないかなあと。こうした中身が伴わずムードだけで話を大きくする手法が、今では自民党側の十八番になっている点に皮肉を感じずにはいられない。
他の本棚 neanias, 米示

最終更新 : 2007-06-29 12:01:15 +0900
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