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著者のラスキンは知る人ぞ知るApple Macintoshの最初のプロダクト・マネージャ,つまり今あるMacintoshインタフェースのコンセプトを方向付けたヒトである。そのラスキン氏がその経験やその後の研究の成果として,より人にやさしいコンピュータ・システムのインタフェースとはどうあるべきか,を論じたのが本書である。<BR>
ソフトウエアを書いてメシを食ってるニンゲンとしてはかなり耳の痛い話もある。例えばモノトニーの話。これは「一つの機能を実現するには一つの方法しか用意されていない」ということで,例えばMacintoshの標準的なアプリケーションではドキュメントを印刷するのに,メニューから「印刷(Print...)」を選ぶか,その「ショートカット」と称してコマンド・キー(スペースバーの横にあるリンゴのマークのついたキー)を押しながら「P」のキーを押す。が,おまけのつもりなのかツールバーなどにこれと全く同じ機能のボタンを用意しているアプリケーションが少なくない。こういうのは実はいいインタフェースではないというのだ。<BR>
つまり,ある機能を実現する場合にその方法に選択の余地がない方が,ユーザはその操作における自動性を獲得しやすいのである。あ,ここでいう自動性とは,たとえば自転車に乗っていてハンドルを切る動作みたいなもののことね,自転車に乗っていて,誰も「右に曲がろう,右に曲がるにはハンドルを右に切るんだったな」とは考えないでしょ? すなわち,コンピュータの操作に自転車同様の自動性を獲得できれば,ユーザはその分のノーミソを本来の仕事に向けられるということになる。……そうなんだけどさぁ,「選択肢が多いこと」に対する信仰ってのは根深いもんがあるんだよねぇ,実際は。 |