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かなり前のニュースだが,覚えているヒトもいると思う,ミトコンドリアDNAの分析から,現代人全ての「母」にあたる女性が15万年前のアフリカにいたことが判明し,彼女は当然ながら「イヴ」と名付けられた,という話だ。この本はあの研究を行った,オックスフォード大学人類遺伝学教授ブライサン・サイクスそのヒトが,その研究内容を一般向けに噛み砕いて解説したノン・フィクションである。<BR>
この研究のよすがである「ミトコンドリアDNA」とは,細胞質にあって人間の活動エネルギーを生み出す働きをしている器官である。このミトコンドリアのDNAには,他の遺伝子と違って母方からしか受け継がれないという便利な特徴がある。昔バラの育成シミュレーション・ソフトを書いた時に出て来た植物における「細胞質遺伝」というのと同じようなものだナ。おまけにこのミトコンドリアDNAは,約2万年に一度の割合で突然変異を固定することが分かっている。なので例えばこれを読んでいるアナタとオレのミトコンドリアDNAを比べて,その違いの数を数えれば二人の共通の先祖 (母系) までどのくらい遡れば到達するのか,だいたい万年単位でわかる,という寸法なんですね。<BR>
……とは言え,それを実証するまでミチスジはもちろん平たんなものではなく,波乱万丈ヤマナカシカノスケなノン・フィクションになっている。なかでもワタシの心に残ったのは,かのヘイエルダール (こないだ亡くなった) が,コン・ティキ号で「実証」したポリネシア人の南米起源説がミトコンドリアDNAの研究ではっきりと否定されていたことである。これ,言葉は悪いがもっと宣伝すべきだと思うなぁ。まだまだ堅く信じているヒトが周りにたくさんいそうである。<BR>
結論として現在イヴの子孫には35の系列があることが判明している。このウチ東ユーラシア系はアメリカ系を含めて7系列ある。自分のDNAがどの系列かを知りたいヒトは,オクスフォードの研究所サイトに申し込むことができ,その<a href="http://www.sonymagazines.jp/mmt/200111080710">日本語インストラクション</a>がこの本の出版社,ソニーマガジン社に用意されている。やってみます?<BR> |