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Flow: The Psychology Of Optimal Experience

Mihaly Csikszentmihalyi
Simon & Schuster Audio/Nightingale-Conant
ISBN: 0743525043  紀伊國屋, Amazon, WebCat
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Geneve : “Flow”という大変に充実した心理状態についての本です。著者名はミハイイ・チクセントミハイイとCDでは発音されています。ヨーロッパからアメリカに渡ってきてシカゴ大学の心理学部長を務めた心理学者です。 2枚組みのCDは本の朗読ではなく、Csikszentmihalyiの講話のような形で進んでいきます。書籍自体は「楽しみの社会学」という名前で日本語訳も出ているようです。 お金や財産、権力というようなmaterial wellbeingは人間の本当の幸福の源にはならない。本当の幸福感とは、毎日の普段の生活の中の瞬間瞬間(moments)をフルに満喫する(relish)することによって得られるで、それを生み出すのが“Flow”という心理状態です。 端的に言えば、今やっていることに完全に集中してのめりこんでいて、何にも惑わされず、時間の経過にも気がつかないような没頭状態のことです。“State of optimal experience,” “living at your peak of your abilities”などと説明されています。ノリにノッて止まらない状態とでも言いましょうか。 Csikszentmihalyiは30年以上に渡ってこのFlowについて研究を重ねてきました。世界中で8000人以上の人をインタビューした結果によると、ある人がFlowの状態にあるときは次の8つの特徴が、いつも8つ全てが同時ではないにしても、見られます。 1. ゴールが明確である。これは長期的なゴールのことでは必ずしもなく、瞬間瞬間のゴールのこと。例えばチェスで次の一手が局面をどう変えるか、楽器を弾いていて次のコードをどう出すか。 2. やっていることが目標に向かっているのか遠ざかっているのかのフィードバックが即座に(moment by moment)ある。 3. 行っていることのチャレンジ度が自分の能力とマッチ・バランスしている。 4. 今行っていることに完全に集中している、しかもspontaneousでeffortlessに。Attentionがsplitしていない。(だから同じ時間で多くを達成できる。) 5. 日常生活の雑事やフラストレーションがまったく気にならない。現実からの逃避(escape)の効果があるが、お酒やドラッグのようなescape backwardでなく escape forwardである。 6. 人生・行動をコントロールできているという実感がある。 7. 自己意識(self consciousness)がなくなる。他人が自分をどう見ているかというego defenseから無縁の状態になる。むしろSense of transcendenceを感じる。しかしFlowが終わってから振り返ってみると、自分がいかに好調だったか、スキルを伸ばしたかなど、self esteemが高まっていることに気がつく。 8. 時間の感覚がまったく変わってしまう。1時間が数分に感じられたり、あるいは逆に実際は数秒しかたっていないのに15分以上に感じられたりする。 Flowの状態は、言い方を変えると “autotelic experience”から生じるといいます。Autotelicという単語は私の辞書には載っていないのですが、著者によると”having for its own sake”という意味だそうです。 本CDの後半では、このautotelicな経験がその人のpersonalityを複雑なものし、そしてそうしたcomplex personalityの持ち主はストレスというものを上手に扱えるようになると、論じます。 ちなみにFlowと対極にある心理状態はpsychic entropyと呼ばれ、それはboredomとanxietyを指します。 Csikszentmihalyiが強調しているのはpleasureとenjoymentの違いです。Pleasureというのは食欲・性欲などの欲求を満たすということなので、オートマティックに感じることができる(例:食べればおいしい)上、スキルというものが関わってこないので、普通は成長にはつながらない。 しかしFlowによって得られるenjoymentは、新しいチャレンジに向かってスキルを高めることが入ってくるので、人間の心の成長につながる。それによって人格というものがhigher level of complexityを獲得します。 ですから、自分の意識というものをよく理解して、Flowの状態を常に作り出せるようにしておくと、例えやっていることが雑用でも単純労働の繰り返しでも、本人にとっては人生の1分1秒がこの上なく幸福感にあふれたものになるのだ、とCsikszentmihalyiは結んでいます。 そう言われてみれば、私はこのFlowという概念を聴きながら、もちろんスポーツ選手や将棋の棋士、芸術家などもそうですが、同時にいつもとても楽しそうに掃除をしているホテルのメイドさんとか、靴磨き一筋30年とか、老舗のせんべい焼き職人がこの道40年とか、そういう人たちの仕事にこめる思いみたいなものを思い浮かべました。 またその昔新入社員のころ言われた「コピー取りひとつにしても人によって仕上がりに大きな差が出る」という話や、「ボール拾いを見ているだけで野球選手として大成するかがわかる」という高校野球のある監督さんの話なども思い出しました。傍目にはどんなに退屈・単調そうな作業も、それに取り組む心がけ次第で本当の成長や幸せにつながる、ということなのでしょう。
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最終更新 : 2005-05-09 23:10:16 +0900
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