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ハイブリッド―新種 (ハヤカワ文庫SF)

ロバート・J. ソウヤー
早川書房
ISBN: 4150115354  紀伊國屋, Amazon, WebCat
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評  価
コメント
Leiko : 「タイトルがネタばれのような気がするが、ソウヤーのことだから簡単に帰着はしないだろうと期待しておく」と読む前には言っていたわけなのですが、全然ネタばれじゃなかった……。
それにしても今回は煮え切らない展開が少なくない。
あれだけカトリックの信仰にこだわっていたメアリが、デザイナーベビーを造ることに何の疑問も抱かないってのはどうよ。遺伝学者だからそのあたりの技術に抵抗がないのかもしれないが、出生前診断以上にデリケートな問題だと思うんだけどなぁ。まぁ、この巻でのメアリは、見ているこっちがびっくりするぐらいにネアンデルタールの世界にどっぷり適応していくわけで、タイトルのハイブリッドというのはある意味メアリのことだと言えなくもない。
ソウヤーの作品は無意味に人が死なないので好きだったのだが、今回は終盤で「こんな展開じゃ無念だ」と思える人物の死が待っている。これはさすがに悲しすぎる。
で、ラストのオチは……。(しばし沈黙しつつ、)ソウヤーの「広げた風呂敷は全部丸め込んで畳んでみせる」という技は健在だと分かったので良かった。ただ、無宗教と無神論は違うものだし、一神教と多神教だって大きな違いがある。神と呼ばれるものが必ずしも超越した存在とは限らない。そこを考え出すとキリがないのは分かってはいるが、この話は北米大陸が舞台だからこそ成立した話なのだろうということは確かだ。
sho : 問: 前作『ヒューマン-人類-』から今までの間に我々が得た重要な知見をひとつあげよ
答: それは「モヒカン族の発見」です

いやもう、読み始めてすぐこれに気づいてしまったときは、思わず「あっ」とか声を上げてしまったよ。つまり、このシリーズにおけるネアンデルタールたちは、まんまモヒカン族なんである。徹底した合理精神、問題解決には技術を持ってのぞむその姿勢、どこから見てもモヒカン族だ。なるほど、読んでいてネアンデルタール人社会にどうしようもなく惹かれるわけがわかったよ。

さらに作者はホモ・サピエンスのムラ人っぷりをわざと強調して描いているので、その対比はさらに明確になっている。典型的なムラ人であるジョック・クリーガーの描写はまさにそれ。結果的に、ネアンデルタール人描写にちっとも新鮮味がなくなってしまった上に、話の流れがたいへん読みやすくなってしまい、読書の面白さが減ってしまったのである。翻訳を待っている間に新しい科学的発見があって、設定自体が台無しになってしまうSFは少なくないが、まさかこっち方面から攻められるとは思いもしなかった。これはもう、otsuneさんに責任とってもらわないと!

もちろん、小説としての面白さは残るわけだが。前作で明かされた「人類存亡の危機」は、まさかという形で利用され、エピローグとあわせて、なかなか楽しく笑えるオチがつく。後半語られるかなりムチャなフェミニズム思想もそうだが、実はこれ、ソウヤーはギャグ小説として書いてたんじゃないかと勘ぐってしまう。モヒカン族はそのムーブメント自体が「ネタ」なわけで、そう考えると相乗効果を楽しめる余地もあるかもしれない。

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最終更新 : 2006-11-20 17:14:11 +0900
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