コメント: |
森博嗣氏の作品は、基本的に仕掛けとしてエンタテイメント性が高いと思う。私にとっては、ある時期、いつでもどこでも通勤時間の気分転換に読み進めてゆくのに、適度にしっかりした薀蓄と回文のような詩情的な作風を斜めから楽しむ趣向が最適だった。勿論深読みして考証を連ねるにも作者は十分対応してくれる、まことにコストパフォーマンスが考慮された作品群だと思う訳だが。
スカイ・クロラに始まるシリーズ4作目。このシリーズは、作者にとって、特別といっても良い位置付けなのではないかと思う。空に向かう思考、鋭利な無垢、ノイズの中に透徹を見出す美意識。
自分が手に取った中では、初めて作家自身の主張が発せられていると感じる。いましばらく目をこらして、その正体を見極めたい。 |