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日本の「安心」はなぜ、消えたのか 社会心理学から見た現代日本の問題点
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山岸 俊男
集英社インターナショナル
ISBN: 4797671726
紀伊國屋,
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評 価 |
5 |
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増井 :
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池田信夫
人間の心理や社会状況にもとづいて、
「信頼社会」と「安心社会」というふたつの安定した社会が
いかに成立するのか/それらはどういう特徴を持っているのか/
を非常にわかりやすく書いてある。
現在の日本の社会問題に関してだけ書いてあるわけではない。
昔の日本は集団主義社会=安心社会だったが、
愛社精神とか滅私奉公とかが日本人の伝統だというわけではない。
戦国時代にはそんなものはなかったし、
日本の社会環境において、そうする方が得だからやってるだけである。
自己評価を低くする奴が多いのも、そうする方が得だから。
安心社会に安心はあるが信頼があるわけではない。
正直とか約束を守るとかいった美徳も実は必要ない。
そうしないと損するようになっているから守っているだけ。
集団主義社会は、いろいろ工夫しなくてもとにかく安心なところがメリット。
安心社会では関係性検知能力(空気読む能力)が大事
一方、近代的/都会的個人主義社会は信頼が大事な信頼社会である。
不信は連鎖するが、逆に信頼も連鎖して得をすることになる。
信頼をデフォルトにして行動する人は正しい観察眼を持つことが多く、
負の情報を与えるとすぐ修正する。
この連鎖によってまた観察眼が鍛えられる。
不信をデフォルトにしている人は逆に情報をうまく利用できない。
信頼社会は正直者が得する社会である。
その実現にはモラルではなく法律などの制度が重要。
最近は「ネット上のポジティブな評判」なども重要になってきている。
信頼社会では信頼性検知能力が大事
市場の倫理 = 商人道 = 信頼社会で有効なモラル体系
(市場の倫理 統治の倫理 (日経ビジネス人文庫)より)
- 暴力を閉め出せ
- 自発的に合意せよ
- 正直たれ
- 他人や外国人とも気やすく協力せよ
- 競争せよ
- 契約尊重
- 創意工夫の発揮
- 新奇・発明を取り入れよ
- 効率を高めよ
- 快適と便利さの向上
- 目的のために異説を唱えよ
- 生産的目的に投資せよ
- 勤勉なれ
- 節倹たれ
- 楽観せよ
統治の倫理 = 武士道 = 安心社会で有効なモラル体系
- 取引を避けよ
- 勇敢であれ
- 規律遵守
- 伝統堅持
- 位階尊重
- 忠実たれ
- 復讐せよ
- 目的のためには欺け
- 余暇を豊かに使え
- 見栄を張れ
- 気前よく施せ
- 排他的であれ
- 剛毅たれ
- 運命甘受
- 名誉を尊べ
モラル教育は利己主義者の楽園になる
倫理教育をいくらやっても心掛けが変わることはない。ソ連とか見てみれ。
教育でいじめはなくならない。いじめをする心は変えることができない。
いじめを許さない環境を作らなければならない
武士道精神が日本のモラルを破壊する!
安心社会と信頼社会それぞれは確固とした体系だが
これらを混ぜるのが最もよくない。ダブルスタンダードになる。
会社を守るために消費者を騙すというのは武士道的には正しい。
安心社会のモラルである無私の精神みたいなものは信頼社会には持ち込めない。
だいたいそれでは企業が成立しないし。
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最終更新 : 2008-05-27 06:30:20 +0900
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