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多田道太郎句集 (芸林21世紀文庫)
多田道太郎句集 (芸林21世紀文庫)
著者: 多田 道太郎, 小沢 信男
出版社: 芸林書房
評価: ★★★★★
カテゴリ: 탊캩
コメント: とある日曜日の午後(と、書くと一人暮らしのアンニュイな日曜日のようだが、あえて別の表現をすると "珍しく土曜日に終電がなくなってから散開した酒宴の後の日曜日の午後" ともいう)、遅く起きた私は、mailのチェックを始め、部屋に音がないのでとりあえずテレビをつけてみた。コーヒーの補充に出かけなければいけないのを思いだしたので、撮り溜めした番組の消化はやめてニュースでもやっていないかとチャンネルを変えてみたが、日曜日の午後では期待はできない。今となっては、その時、何が気になったのか分からないが、教育テレビの俳句の番組でチャンネルを変えるのをやめた。アナウンサーからインタビューを受けている俳人は、多田道太郎であった。<BR> 年齢の割には白黒のはっきりした返答をする。非常に小気味よい語り口だと思って聞いていると、どこか飄々としている。憎めない好々爺である。mailもコーヒーも後回しで、真面目にテレビを見始めた。自身の生い立ちに降れ、いくつかの俳句の背景を語り、アナウンサーに「ご自身では、どの句がお好きですか」と聞かれると、徐に傍らの句集を手に取り「そうですね。どれが宜しいでっしゃろ。」俳人は京都在住である。「そうですね。“掌にあつめればたったこれだけ草の花" とか、"「スカタンや」「阿呆や」とののしる草の花どち" は、わりに皆さん良いとおっしゃってくださいます。」アナウンサーはそうですかと返答したが、回答になっていないのは明らかで、単にはぐらかしただけなのだが、うまいやり方だ。食えないジイ様である。だが、その食えない加減が非常に美味しかったので、コーヒーを買いにいくついでに、書店に寄ってみた。<BR> 句集に目を通し始めて暫く、俳句というのが生活に根ざしたものだと思い出した。句会でお題を与えられて詠んだ句のみならず、師や知人や娘の死にふれ詠んだ句と様々である。どれが好きかというのは非常に立ち入った質問であった。そんな簡単に答えられる訳なのだ。次の質問で何故と聞かれ、その背景を親しくもない者に話さねばならないのは辛い作業に他ならない。食えないジイ様は、あまりの言い様であった。撤回しよう。<BR> 後にWebで、フランス文学の学者で、日本語や日本風俗学に関する著書も多い事を知る。ぜひ、この好々爺を追いかけて読んでみようと思う。
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