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この作品は「ごんぎつね」で有名な新美南吉が書いた童話である。
「おじいさん」が主人公である「東一君」に、「巳之助」すなわち自身の若かった頃の話をする。
(田舎に住んでいた巳之助が田舎にある自分の村にランプを紹介し、それを売って儲けるが、電燈が導入されたために商売が立ち行かなくなり、商品であるランプを捨ててしまう。)
大変短い話であるが、地元の人にいいものを紹介したいと熱望する気持ちやモノを売る喜び(「暗い家に、巳之助は文明開化の明かるい日を一つ一つともしてゆくような気がした。」以上本書より引用)、そのための惜しみない努力などの商売のエッセンスが詰まっており、子供だけでなく大人も楽しめる一作である。
ただ、電燈が導入された後が「ランプが売れないから今の商売をやめてランプに石を投げつけて壊したんだ、おじいちゃん馬鹿しちゃったんだ、東一君。」という、いささか急すぎる展開になっているのが残念である。これは話の中心部の心情の変化に重きを置く児童文学の特長でもあるのだが、その後の描写が丁寧にされていればより面白い作品になったと思う。 |