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ずいぶん昔の話だが,梶原一騎・川崎のぼるの「巨人の星」コンビに「男の条件」というマイナーな漫画があって,その中で紙芝居描きの主人公が,縄張り荒らしの落し前をつけるため,ヤクザの親分 (というのがそういえば可愛らしい女子高校生なのだ,「セーラー服と機関銃」を先取りしてましたな) の弟を「紙芝居で感動させなければならない」ハメになるんである。<BR>
この弟というのが,である。なんつうか女子高生にして女親分を立派につとめる姉の弟のくせに,皮肉屋のガリ勉 (死語?) 野郎で,ハナから紙芝居など馬鹿にしている。まっとうな方法では「感動」させることは不可能だ。そこで主人公とその師匠 (だいたいこの主人公は漫画家になりたいわけでもなかったくせにこの師匠の男気に惚れて仕事をやめ,紙芝居屋をやってるんだが) は一計を案じ,この弟のコンプレックスをこれでもかこれでもかえぐり出すような内容にする。<BR>
これを観て弟は激高し,子分どもに主人公達を痛めつけるよう指示するが,組の重鎮である「人斬り政」(だったと思う) に「坊ちゃん,コンプレックスを突かれて怒るのも感動には違いありやせん」とか言われて,その場に泣き伏す…という,いかにも梶原的理屈っぽさ漂う展開 (「人斬り政」ってインテリぢゃん) になる,と。<BR>
やれやれ,長い前置きであったけれども,ボー・コールサート著「悩み多きペニスの生涯と仕事」を読み終え,私もこの「男の条件」のヤクザの坊ちゃん的「感動」をしたんである。文章によって感情を揺さぶられ,それどころかありもせぬ痛みまで感じてしまった。なんつうか,男なら誰でもそうだと思うのだが,例えば下の「陰茎折症」の描写なんかどんなに即物的に書かれていても平静な気持ちでは読めない,と思うのだ。</p>
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ペニスの海綿体は堅い壁を持っている。これが激しい興奮のときには強度の緊張状態に置かれる。誤った動作をすると,海綿体が棒のように曲ったり折れたりすることだってあるのだ。こうなると,海綿体組織の壁が切れ,血液が高圧で組織の中に流れ込む。この出血が,猛々しく鋭敏な愛の絵筆 (「愛の絵筆」というのはこの本の原題でもある) をほんの短時間で変色させる。腫れあがり,無力で,痛いだけの器官に変えてしまうんだ。すぐに病院に受け入れてもらう必要があるね。
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実はこの本を私は「題名買い」(題名だけ見て面白そうだ,と購入すること) したのだが, 松浦理英子の「親指Pの修業時代」みたいな小説かと思ったのだ。そしたら泌尿器科の専門医による,なんつうかペニスとセックスに関する医療相談みたいな本だった。で,上のような記述がバンバン出て来るのである。いやぁ,なんか股間が (性的興奮とは別の意味で) ムズムズして来ませんか。それはあなたも「感動」してるんですよ(笑)。 |