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からくり民主主義
からくり民主主義
著者: 高橋 秀実
出版社: 草思社
評価: ★★★★☆
カテゴリ: ドキュメント 社会
コメント:  一読して,ようようこういうことを専門にルポするヒトが出て来たか,と思った。以前,シグマ計画のてん末について「SPA!」の取材を受けた(なんでオレが?とはオレも思ったけどね)時に同じような話をしたのだが,自分の専門分野のことが新聞や雑誌に取り上げられた時に感じる隔靴掻痒感や非現実感みたいなものって,きっとどの業界のヒト,どの事件の当事者にも共通しているコトなのだと思うのだ。<BR>  オレたちは「シグマ計画」について「こいつらあほか」と思ってたし,防衛庁のシステムの開発チームにオウムの子がまぎれこんでいた事件の時には「なんで騒ぐねん,いて普通やんか」と話し合ってた。同じように「報道される米軍基地問題」と地元のヒトの見ている現実は違うものだし,若狭湾原発銀座に住む「事故報道に不安を隠せない」はずのヒトビトの本音は「たまに事故が起って反対派が騒がないと補助金が減る」だったりするんである。<BR>  まぁありがちな表現を使えば「ニッポンの建て前と本音」つうことなんだが,今まで「そういう構造」について書くヒトというのはあんまりいなかった。「ゲンパツは危険ですコレデイーのか?」「諫早湾でムツゴロウが死んでいますコレデイーのか?」「統一教会のマインドコントロールは親から子を奪いますコレデイーのか?」……てなぐあいに,このテの問題に対するアプローチというのはたいてい「個別の問題に対する真正面からの告発」であり,「これがゲンジツです,これでイーのか?」と問うものだったのだ。<BR>  この本の著者・高橋さん(オレと同年なのだ)は,上にあげたような現場に「えらく遅れて」取材に行く。新聞やテレビや週刊誌の取材が帰ってさらに1年も経ったあとで取材に行くのだ(本人はいつも「出遅れる」と書いている)。そして当事者のみなさんと「世間話」をする。するとそこにはもともとそこにあった問題ではなく,それが「報道」というフィルタをどう通って行き,問題自身をどう変質させていったか,が見えてくる。で,その構造が同じなんですね,みんな。そして,そのフィルタの外側,つまり報道を通した結果としてオレタチが見るものは「からくり民主主義」なんである。どっとはらい……というべきか(笑)。
関連本棚: benisuzu morimon 増井 知多武豊 stonechild-2 偽物 suchi 増井の処分予定本
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性的不能者裁判―男の性の知られざる歴史ドラマ
性的不能者裁判―男の性の知られざる歴史ドラマ
著者: ピエール ダルモン
出版社: 新評論
評価: ★★★★
カテゴリ: 歴史 社会 宗教
コメント:  カトリック教会によって離婚が罪とされていた中世から近世にかけてのヨーロッパで,唯一結婚の解消が認められたのが「夫あるいは妻が性的に不能で『結婚』を成就できない」場合だった。性的不能を理由とした離婚の訴えは,聖職者を判事とする公開の場で取り上げられ,現代の基準に照らせばまぎれもなくセクハラと言える尋問の果て,遂には「コングレ(性交実証)」と呼ばれる……なんてんですかね,ナマ板ホンバン? まで強制されていたのである。<BR>  この本は16〜17世紀フランスの「性的不能による婚姻無効訴訟」の記録を丹念にたどり,いかに倒錯した心性が神に仕える聖職者をしてこのような愚行に熱中せしめたのか,を追求した歴史学の論文である。結論を乱暴に要約すれば,肉体的には頑健正常(むろん性的にも,だ)でないとその資格を与えられないにも関わらず,女の肉体は悪魔の罠であると教えられ禁欲を強いられていた当時の聖職者にとってこの種の審判は「脳中に罪を犯す」絶好の機会だったというわけなんだが……。<BR>  そもそもカトリック教会が聖職者に妻帯を禁じたのは,相続によって教会財産が流出するのを恐れたからで,聖書に根拠があることではない(西暦306年の教会法で規定)。信者に婚姻外の性交渉を禁じたのも元を糺せば財産を巡る争いの元になるからだった。この2つの裏を返せば,貞潔の誓いというものは婚姻さえしなければ守られていることになるわけで,10〜14世紀,結婚しない聖職者はヤリタイ放題ヤっておったと(13世紀のある司教は産ませた私生児が65人を数えるまで何の罰も受けなかった)。<BR>  ……このなおざりにされていた禁欲が,16世紀頃になってにわかに(少なくとも表面上)守られるようになったのは別に突然真の信仰に目覚めたわけぢゃなくて,早い話新大陸からやってきた性病の蔓延のせいなんだよね。このへんの事情は以前読んだ「性病の世界史」に詳しかったんだが,こんな風に全く別に読んだ複数の本からの情報が頭の中で交錯して一個の絵を形作る快感というのは読書好きの醍醐味だね,うん。<BR>
関連本棚:
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再現・昭和30年代 団地2DKの暮らし (らんぷの本)
再現・昭和30年代 団地2DKの暮らし (らんぷの本)
著者: 青木 俊也
出版社: 河出書房新社
評価: ★★★★
カテゴリ: 文化 社会
コメント:
関連本棚: 家をたてたい人
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「パチンコ依存症」からの脱却―パチンコへの誤解と恐ろしい病にあなたは蝕まれている!
「パチンコ依存症」からの脱却―パチンコへの誤解と恐ろしい病にあなたは蝕まれている!
著者: 伊藤 耕源
出版社: すばる舎
評価: ★★★★
カテゴリ: 社会 病理
コメント:  この本は,「パチンコを辞められない」というのもアルコールやタバコ・薬物等の依存症と同様病気であるという前提のもとに,まず「パチンコを確率論的に論じ,『勝てる』という幻想を正し」,次に「パチンカーの心理を理解し,ギャンブルと人生の関わりを再考させ」,最後に「依存症から脱却するための具体的なプログラムを呈示する」ものである。内容は大真面目だか説教臭くはない。読んだヒトがパチンコを辞める気になるかどうかは分からないが,少なくともアホな幻想からは解放されるのではなかろうか。<BR>  あ,そうそうそれを書いておかねばな。オレ自身はもう8,9年前,「ハネモノ」が消え「CR機」というのがお目見えしたころにパチンコはやめてしまった。本書によればお客のほとんどが「パチンコはギャンブルだ」と認識しているそうだが,オレはそう思えなくなったのでやめたのである。ギャンブルっつうのはもう少し勝てる確率が高いものを言うんだってば。オレの考えではあれはまさしく「遊技」であって,「遊技料」を払ってチンチンジャラジャラさせてもらうだけのものになっちまったのだ。<BR>  ではやめたワタシがなんでこんな本を買ったかというと,ひょんなことからこの本を紹介したウェブページを見つけて興味を持ったからなのね。この本では1998年7月に,日本テレビが制作・放送した「実録180日・見たぞ驚異のパチプロ軍団」という番組を「パチンコには勝てる方法があるという誤解を助長するヤラセ番組」として糾弾しているのだが,ウェブページには作者が日本テレビに内部調査を要求した,その後日談が掲載されているんである。いやいや,日本テレビはもっと真摯な態度で応えて欲しいもんである。こんな番組作ってる局の番組で「パチンコ屋の駐車場で子供が熱射病」つうニュースに眉を顰めて見せるなんて,偽善もいいとこやないですかサクライさん。
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女は結婚すべきではない―選択の時代の新シングル感覚
女は結婚すべきではない―選択の時代の新シングル感覚
著者: シンシア・S. スミス
出版社: 中央公論社
評価: ★★★★☆
カテゴリ: 結婚 女性 社会
コメント:  ヨワイ40を超えてヒトリモノの私がこういうタイトルの本を読んでわかったようなコメントを書いたりすると,おそらく要らぬ憶測とナミカゼを呼ぶだろう予感はある。あるのだが,いや正味のところ,たいへん面白かった。<BR>  アメリカ社会に根強く残る (と言ったら「日本のほうが」だろうが) 「結婚制度への盲目的服従」がいかに人生を,特に女性の人生を苦しくつまらないものしているか,ということを数多くの実例をあげてレポートした本。著者であるスミス氏は,長年連れ添った夫と死別したあと,周囲の人々が「あなたはまだ若いんだから,いい相手を見つけて再婚すべきよ」と勧めるのに憤慨したそうだ。その時の話が面白い。<BR>  なんで女は結婚してないといけないみたいに言われなきゃいけないのか。そう聞き返されて周りの方がたまげてしまい,いろいろな支払いや車の修理など夫たるものの「仕事」を次々とあげつらう。そんなものは自分でできると彼女が言うと最後に出てきたのが「でもゴミ出しは旦那でしょ? (アメリカでは一般にゴミを出すのは男の仕事とされているそうな) 」と言われた。彼女は答える,ゴミ出しのために再婚する?馬鹿みたい(笑)。<BR>  タイトルはトンがっているが (原題は「Why Women Shouldn't Marry」) ,けしてウィメンズ・リブや過激なフェミニズムの本ではない。つうか,ここに「失敗した結婚の例」としてあがってるいくつかの事例はアメリカと言わず日本の夫たちこそ読むべき,身につまされるトコロがある話ではなかろうかと思う。そのヘン,シングルのオレなればこそ,うけけとヒトゴトとして笑って読めたのかも知れぬがね。
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理系白書
理系白書
著者: 毎日新聞科学環境部
出版社: 講談社
評価: ★★
カテゴリ: ドキュメント 社会
コメント:  毎日新聞科学環境部編。オビにはこうある。"文系の王国"日本で全く顧みられることのなかった「理系」の問題に初めて深く切り込んだ渾身のレポート……。それほどのもんか?<BR>  ウチは毎日新聞を購読しているので,一年を越えたこの連載記事もずっと読んでいた。その印象は,最初の頃こそ広く「理系」の問題に目を向けていたが,いつの間にか「理系」イコール「研究者」のことになってしまい,世にある「理系」のヒトビト全般の問題意識からかけ離れて行った,というものだった。……今回こうして一冊にまとめられたものを読んでその印象がかなり正確であったことに残念ながら失望した。<BR>  だいたい「研究者」の待遇に限れば理系よりも文系の方が過酷だと思う。理系の「設備」はそれでもカタチがある分予算が付き易い(モノが高価だから十分でないのは同じだが)。オレの出た大学でエジプト史を研究してたセンセ(例の吉村作治さんほどタレント性はなかった)はよく,国から出る研究費では現地に行くどころか文献蒐集もままならないとぼやいていた。首尾よく博士になれても専門を活かせる就職なんか……それこそ理系の研究者がうらやましくなるくらいに「ない」だろう。<BR>  つまり文理の別と研究者・非研究者の別がごっちゃになっているのだ。なんというか,オレも技術者のハシクレとして働くニンゲンなんだが,世界を変える研究をしているわけではないし今後もその見込みは無い。だが世間的には「理系」の仕事をしているヒトであり,理系的ネガティブイメージで語られる。そういう市井の「理系のヒト」が読んでると,この本に出て来るヒト達はとても縁遠い存在だという気がするのである。<BR>  ……こう言えば分かるだろうか。これを作った毎日新聞の記者諸君にお聞きしたい。もし「文系白書」という本が出版されて,開くと大臣にもなるような花形経済学者の話とかマーケティング理論の専門家の話や,源氏物語の文献研究をしている研究者の予算不足についての愚痴や道祖神の分布を調べている女性民族学者が教授にセクハラに遭った話(こんなのこそ文理共通だろ)ばかりが書いてあり,オビには「文系のすべてを浮き彫りにする」とか書かれている。……どんな気がする
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人はなぜエセ科学に騙されるのか〈上〉 (新潮文庫)
人はなぜエセ科学に騙されるのか〈上〉 (新潮文庫)
著者: カール セーガン
出版社: 新潮社
評価: ★★★★
カテゴリ: 教育 科学 社会
コメント:  なかなか刺激に満ちた本であとで引用したくなるようなフレーズ,データが随所に出て来る。例えば5回続けて表を出したコインを投げて次に裏が出る確率は実は表が出る確率と同じである,ところがヒトはそうは思いたがらない。セーガン博士は言う,「人は乱数にすら意味を求める」。<BR>  このセーガン博士,Appleのなにかのプロダクトのコードネームに自分の名前を使われたこと(もちろんこれは「敬意を表してのこと」だった) に抗議して,アップルの技術者がそのコードネームを「石頭の天文学者」と変えたことがあるほど,厳格で融通の効かない面もあるヒトなんだが (この本の中でもテレビのSFモノを批判してるところなんかはそういう感じがする) ,いやしかしこの本で彼が提起している問題はどこの国でも,特に「先進国」と呼ばれる国において,もっと真剣に考えられるべきだと思う。<BR>  「アメリカの学童は十分な勉強をしていない」という,世界規模の学力テストの結果を見ての彼の意見の感想として,高校1年生が以下のようなことを書いて来るクニはちょっとやばかろう? 「よその国みたいに賢くないのはかえっていいかもしれないと思います。どうしてかというと私達は製品を輸入すればよくて,そういう部品をつくることにばかりお金をかけなくて済むからです」 「よその国の方が優秀だからってそれがなんだって言うんだ。どうせみんなアメリカに来たがってるんぢゃないか」
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