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一応カテゴリー的に評論としてみたものの、本書は批評と呼んでも構わないし、哲学と呼んでも構わない。むろん、いずれも思想書であることにはかわりない。しかし、思想とは文体であると言った小林秀雄を持ち出すべくもなく、それらはスタイル(文体)という修辞を抜きに語れぬものであり、西部邁氏はその点きわめて意識的である。なかでも「表現について」は氏を語る上で外すことのできない、きわめて濃密でありながらその「濃さ」に紛わされぬようにちょっと身を引く、というアンビバレント(それが「平衡」を語るために必要なスタイルであったことは指摘するまでもない)がすばらしい一品である。 |