コメント: |
禅僧と思われる老師と、生を苦しみ求道中の少年との対話。
自分とは何か、生きるとは何かを問うのではなく、生というものを、自分という器で飲み干せ、と言っている。
言葉で要約するとかえって伝わらないかもしれない。
流れの中の言葉を紡いでゆくと、そこにある種の感覚が浮かんでくるかもしれない。
私自身、少年の頃、突然、「死とは何か」、「死んだ後の自分はどうなるか」を思ったとき、もう堪らないような感覚に囚われたことがある。それから、この疑問が解決したかというと、必ずしもそうではない。
今は、単に生を生き抜いているだけ、ような気もする。
何も考えず、何も悩まず、ただ現在を生きるのみ、ということができれば、人間はどれほど幸福か、と思うこともしばしばある。
この本に解決を求めてはならない。ただ、苦しいとき、辛いとき、そういうようなときが来るのは自分だけではない、と思えるだけでも良いことかもしれない。 |