謎本なんてのも懐かしい響きですね。ただ、これは「磯野家の秘密」的な謎本ではなく、「涼宮ハルヒ」をオタク的教養を基にして解説した本です。素晴らしいですね。こういった本の存在が、選民としての正しいオタク(ああ、言っちゃった^^;)を世に広く知らしむるワケですよ。いや、オタクは死んだんですが(笑)
思えば、「エヴァンゲリオン」というのは「オタクの教養」を引き上げるための大きな起爆剤になりました。エヴァ放映当時、ただのガンオタだった私は、エヴァにハマることでネットワーク上の同好の士と交わることを知り、GAINAXやDAICON FILMを知り、村上龍も読み(笑)、声優さんに興味を持つようにもなり、それをきっかけに他の多数の作品、クリエイターを知ることになって、オタクの教養を一気に引き上げたわけです。庵野秀明という日本3大オタク(他は誰だか知らん^^;)が作った作品だったからこそ、その中にはさまざまな引用とオマージュが散りばめられ、若かりしころの私は丹念にそのポインタをひとつずつ辿っていたわけです。
はてさて、あれから10年以上が経過し、その間にもいろいろと面白いアニメは沢山作られていたわけですが、視聴者のオタクの教養を引っ張り上げるような強烈な作品となると、なかなかに数が限られます。そして、「涼宮ハルヒ」は間違いなくそういう作品でした。なんせ、作者自らが選んだ「長門有希の100冊」なんてものが公開され、各話が放送される度、「なに読んでるの?長門さん」と、劇中で長門有希が読んでいる本に言及するページが作られるほど。もう、これだけでも教養が高いですよ。私も長門に背中を押されて「ハイペリオン」を読んだわけです。
そんな、教養溢れる(といっても、オタクのだけどね)「涼宮ハルヒ」について、いろんな観点からウンチク垂れ倒しているのがこの本。個々の議論はイマドキはネットで語り尽くされているものが多いですが、そういった散逸しがちなものを一冊の本にまとめるのは素晴らしいことです。いい仕事してます。
中を見ると、原作のハルヒの世界観や、アニメのスタッフ、演出意図等の作品の読み込みから
- セカイ系の系譜とハルヒの関係
- SFとハルヒの関係
- クラシックとハルヒの関係
- ミステリーとハルヒの関係
- 綾波と長門の関係(笑)
なんてものまで考察してあって、いやあ、さすがにこれ全部をテリトリーとするには人生が1度では足りないんじゃないかという程のウンチクぶり。かなりお腹いっぱいですが、読み終わって二つ、欠けてるなーと思う視点が二つ。ひとつは、深夜のU局アニメでありながら衝撃の第1話という事件を視聴者が共有できた影の立役者であり、すでにアニメ、いや映像作品全般を作る上でマーケティング的に無視できない存在になったあのサービス、そう、YouTubeについて。もう一つは・・・アレだ、ハルヒ萌えな私が身もだえしながら読みたい、デレなハルヒの描写のまとめと考察デスヨ(笑)
でも、こうやってオタクの教養をこねくり回してうだうだと妄想語りができる作品なんてのもなかなかないわけで、やはり「涼宮ハルヒ」は偉大だなあと思うわけです。というわけで、はやく「驚愕」出して下さい。
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