なかなか斬新な切り口で唸らされた。著者はロシアの元量子物理学者だそうで、説明の仕方も物理学調というか、わたしの趣味に合います。ひじょうにおもしろかったです。
著者のいう「バリアント; variant の空間」という言葉づかいに強い印象を受けましたね。量子物理学の議論のなかで唱えられる並行宇宙モデルと類縁性が高いと思いました。つまりトランサーフィンってのは、どうすればあなたの望むパラレルワールドにスライドできるのかってこと。
ひとつのモデルが真理か否かを証明するよりも、そのモデルからどれほどの実益を享受できるかこそが重要なのだとする著者の姿勢にも好感がもてますね。
わたしたちが取り得る行動の選択肢については「流れに沿って進むという原則に従って、最も簡単で単純な方法ですべてが行われるようにする」(305p)という一般解が与えられる。
あらゆる行動の最適なバリアントが小流となっており、それらの小流は最適な因果関係の鎖から構成されている。しかし、この小流の鎖が必ずしも通常の理性が捉えることのできる論理的思考と合致するとは限らない。与えられた状況から少し距離をおいて、すなおに小流に身をまかせてみよう。思っているよりもずっと簡単にできるのだから。
余談。この本の導入部で、ちょっと不思議な夢の小説みたいなところがある。むかーしむかしマツキヨせんせいが自費出版された『次元の本2』を彷彿とさせる味わいを感じました。
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