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クール革命―貧困・教育・独裁を解決する「ソーシャル・キュア」
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著者: |
ティナ・ローゼンバーグ, Tina Rosenberg |
出版社: |
早川書房 |
評価: |
4 |
カテゴリ: |
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コメント: |
貧困やエイズ、禁煙、ダイエットなどの問題を本書でいう「ソーシャルキュア」人々のつながりによる人間集団が持つ自浄能力、が解決するのに有効であることが様々な例を持って紹介されている。これらの問題が、人々が孤立しているからこそ解決されない時、人々の結びつきから入り、あとは人間の自然治癒力に任せようというアプローチは、よく働く。「重要なのは情報ではなく(誰から聞くかという)アイデンティティなのだ」同時に人間集団だからこそ抱える問題点もまた、顕在化するのも弱点であり、ソーシャルキュアにとっては障害となる。
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圧巻はこの本の日本語タイトルにもなっているセルビアにおける「オトポール」の活動だ(8、9章)。非暴力、クールな革命をソーシャルキュアの手法を使って成し遂げ、ミロシェビッチを退陣に追い込み、東欧のカラー革命の流れを作った。その後のオトポールの挫折はソーシャルキュアが社会と結びつけばつくほど、解決の難しい問題を抱えていくことが、現れている。
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総じて、「ソーシャルキュア」とは人々の結びつきを核とするソーシャルイノベーションの手法であるともいえる。アメーバ型の組織であればこそ、様々なアイデアが自律的にくみ合わさって、困難な問題を解決していく。
一方で、ポジティブなピアプレッシャーによる活動が「ソーシャルキュア」であるとすると、ネガティブなピアプレッシャーによる活動は、現代のテロ組織やカルトである。10章では、善と悪の組織の戦いが描かれる。悪のピアプレッシャーに勝てるのは善のピアプレッシャーしかないのだ。善のピアプレッシャーは我が国でいうといい意味での村組織、隣組である。米国での例が紹介されているが、高度成長により、個を選択した我々は、善のピアプレッシャーが生み出せる環境を失ってしまったのかもしれない。
ソーシャルキュア=ピアプレッシャー+ソーシャルイノベーション
である以上、イノベーションのジレンマとどのように戦うかが問題なのだ。また、コミュニティの再生も問題だ。 |
関連本棚: |
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切磋琢磨するアメリカの科学者たち―米国アカデミアと競争的資金の申請・審査の全貌
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著者: |
菅 裕明 |
出版社: |
共立出版 |
評価: |
4 |
カテゴリ: |
大阪大学図書館
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コメント: |
これまで、聞きかじっていた米国の学生の学部から始まる教育システム、そこから始まるアカデミックキャリア、テニュア、国などから来るファンドの取り方、すなわち、米国のアカデミックシステムとその社会的位置づけをAssociate Proffessorまで経験した著者が徹底的に描いてみせる。これを読むと、独立行政法人化にはじまり、大学院重点化、産学連携、ポスドク増大計画、最近の修士博士一貫化に至る文科省の高等教育に対する政策が、米国のアカデミックシステムの一部だけを取り出し、一貫性なく、輸入しようとしてきたかがよくわかる。
筆者も語っているように米国のアカデミックシステムは米国社会の中での位置づけがあって、成り立つものであり、木を移植しても育つのが難しいように、その一部だけを取り出して輸入してもうまく育つはずもなく、結果として草ぼうぼうになってしまった我が国の高等教育の荒廃があるのではないかと思えてくる。
2004年初版であるが、最終章の我が国との比較が、未だに新鮮なのは、大学改革が進展していない証でもある。「今更聞けない米国のアカデミックシステム」であるが、一度通して復習してみることをお勧めする。 |
関連本棚: |
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グレートカンパニー――優れた経営者が数字よりも大切にしている5つの条件
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著者: |
リッチ・カールガード |
出版社: |
ダイヤモンド社 |
評価: |
4 |
カテゴリ: |
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コメント: |
原題の「the Soft Edge」の方が内容にしっくりくる。イノベーションのジレンマに陥らない会社の5つの条件といったところで
信頼
知性ースマートさ
チーム
テイスト
ストーリー
がそれにあたる。様々な実例、メイヨークリニック、モモフク、ネスト、スペシャライズド、シーラスなどに合わせて説明されると説得力がある。 |
関連本棚: |
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科学者が人間であること (岩波新書)
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著者: |
中村 桂子 |
出版社: |
岩波書店 |
評価: |
4 |
カテゴリ: |
科学
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コメント: |
大森荘蔵の世界観、人間や自然は生き物であり、科学はそれに対峙する、死物化する傾向がある。これらどちらかをとるのではなく、両方を認める重ね書きが重要
これは、「ファースト&スローにも通じる」
P67 じこはおこるさ トーマスの歌
柳田邦男の遠野物語にみる自然への畏敬
重ね書きは可視化ととることもできる。
宮沢賢治の科学への期待と恐れ
注文の多い料理店
ケン十公園林
グスコーブドリの伝記
南方熊楠の「心事物」
心とものが交わるところが事である
科学コミュニケーションの否定
科学の現場が重ね書きによるコミュニケーションを行うことが大事
いわれていることは至極当然であるため、新しさは欠いているが、レイチェルカーソンに次ぐ研究者必読の書
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sshinji
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6度目の大絶滅
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著者: |
エリザベス・コルバート |
出版社: |
NHK出版 |
評価: |
4 |
カテゴリ: |
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コメント: |
我々は「人新世」人が作る環境の只中におり、それが真っ直ぐ種の多様化を急速に失っている。すなわち、大絶滅に向かっている。1万年規模の変化は地球にとってはわずかな時間だが我々がそれに気がつくのは難しい。 |
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明治・父・アメリカ (新潮文庫)
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著者: |
星 新一 |
出版社: |
新潮社 |
評価: |
4 |
カテゴリ: |
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コメント: |
昨今、日本人がだらしない.そのことは幕末や明治の人たちを見ればわかる.我が国にまだ武士道があり、高潔な誇りがあった.
田舎の貧乏な暮らしから米国に留学し、一台で製薬会社を立ち上げるまでの星新一の父の伝記であるが、至る所に失われた日本人の誇りを感じることができる.息子による父の自伝も星新一のスタイルでウェットにならずに書かれている.息子に読ませたい本. |
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How Google Works (ハウ・グーグル・ワークス) ―私たちの働き方とマネジメント
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著者: |
エリック・シュミット, ジョナサン・ローゼンバーグ, アラン・イーグル |
出版社: |
日本経済新聞出版社 |
評価: |
4 |
カテゴリ: |
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コメント: |
googleがもっとも成功した未来の大学の姿ではないかと思ってしまう。イノベーションを途切れることなく、クリエーティブを最高の効率で回している。
P353 (ガスパロスがIBMのディープブルーに負けたことを受けて)(それは、)「新時代の幕開けとなった。新たなチャンピオンはコンピュータではなく、コンピュータと協業することで自らのスキルを一段と高めた人間だ。」
P349 自動運転者を巡っては必ず事故は起こるだろう。(中略)そうなったとき政府は19世紀のイギリスの赤旗法のような自動運転者という新技術に対して人間が運転する一般車よりはるかに厳しい安全基準を設けたいという欲求を抑えなければならない。 |
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実践 行動経済学 健康、富、幸福への聡明な選択
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著者: |
リチャード・セイラー, キャス・サンスティーン |
出版社: |
日経BP社 |
評価: |
4 |
カテゴリ: |
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コメント: |
googleのwork rulesから連れられてきた。第一部はほぼ心理学の話、いかに我々ヒューマンと完璧な経済人エコノは違うか。合理的な行動をしないからこそ助けが必要になる。そのおせっかいがリバタリアンパターナリズムである。
それを具体的な政策の面から応用しようとしたのが、第2部となる。真骨頂は第2部にあるのだろうが、第一部はいわゆるPT (Persuasive Technology)にも通じる話。
ちょうど、一般意志2.0にも応用可能。その時活躍するのが、選択アーキテクチャである。
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ヒトラーランド――ナチの台頭を目撃した人々
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著者: |
アンドリュー・ナゴルスキ |
出版社: |
作品社 |
評価: |
4 |
カテゴリ: |
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コメント: |
あまり、語られることのなかったヒットラーの黎明期から成長の姿を丁寧に取材している。なによりも、選挙によって選ばれた独裁制であり、変えるチャンスはいくらでもあったのに変わらなかったことは、その後の歴史に繰り返し独裁制が現れることを思えば、納得できる。全く異常なことではなく、どこにでも起こりうる選択肢の一つでしかない。 |
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日産 驚異の会議 改革の10年が生み落としたノウハウ
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著者: |
漆原 次郎 |
出版社: |
東洋経済新報社 |
評価: |
4 |
カテゴリ: |
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コメント: |
日産がいかにして再生していったか。そのために、「会議」というツールをどのように構成し、生かしていったかが解説される。読み飛ばしながら、エッセンスを理解すればいいだろう。いくつかのポイントは、会議のグランドルールに現れている。すなわち、(P10)
予定外の議題を持ち出さない。
ポジションパワーを使わない。
積極的に「聴く」「話す」「書く」「行動する」
時間厳守
「いかに〜するか」など建設的な表現活用
携帯電話はマナーモードに
安全なシェルター
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第二次世界大戦 影の主役―勝利を実現した革新者たち
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著者: |
ポール・ケネディ |
出版社: |
日本経済新聞出版社 |
評価: |
3 |
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コメント: |
戦争をその技術や戦略といかにそれを改善していったかという観点で詳細に分析している。武器を発明し、それを使いこなす為の戦略や組織を作るといった観点に日を当てた労作。第二次世界大戦だからこそ新しい技術が多数導入されそれが戦争をどのようにかえていったかを明らかにしている。読みにくいのが難 |
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/sshinji/4120047776
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著者: |
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出版社: |
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評価: |
3 |
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西武百貨店、パルコ、無印良品、昭和の消費文化を作ってきた堤清二氏の自伝が御厨貴、橋本寿朗、鷲田清一のインタビューによって掘り起こされる。
日本で作り出したのは民主的テーラー主義、トヨタの改善に代表される従業員参加型の生産改善方式である。
三島由紀夫の楯の会の制服を作る、池袋西武百貨店の地となる巣鴨拘置所に絡んで児玉誉士夫との親交など、昭和後半の歴史との接点が面白い。 |
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/sshinji/4062199432
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著者: |
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出版社: |
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評価: |
3 |
カテゴリ: |
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コメント: |
人類学者のママ友観察記とでも言おうか。日本でもありそうな教育熱心なママ達の日々戦いの記録である。「狭い地域での過剰な教育競争が歪みをもたらしている」といった言葉があった気がする。 |
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イノベーションと企業家精神 (ドラッカー名著集)
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著者: |
P.F.ドラッカー |
出版社: |
ダイヤモンド社 |
評価: |
3 |
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コメント: |
ドラッカーによるイノベーションに対する企業家の心構え。クリスチャンセンとは異なり、イノベーションも破壊的なものでは決してない。しかし、豊富な例を挙げて、それに対する心構えを説いている。
ドラッカーはイノベーションの機会を7つに分類している。
すなわち、
予期せぬ成功と失敗を利用する
ギャップを探す。
ニーズを見つける。
産業構造の変化を知る
人口構造の変化に着目する。
認識の変化を捉える。
新しい知識を活用する。
14章 公的機関における企業家精神は、大学や政府におけるイノベーションがいかに難しいかを明快に語っている。
「公的機関は明確な目標を持たなければならない、公的機関は実現可能な目標を持たなければならない、いつになっても目標を達成できなければ、目標そのものが間違っていたか、あるいは少なくとも目標の定義の仕方が間違っていた可能性のあることを認めなければならない。」
最後に、いい言葉。
「(マネージメントに)常に必要とされるのは、学び続け、粘り強く働き、自らを律し、適応する意思である。」
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