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切磋琢磨するアメリカの科学者たち―米国アカデミアと競争的資金の申請・審査の全貌
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著者: |
菅 裕明 |
出版社: |
共立出版 |
評価: |
4 |
カテゴリ: |
大阪大学図書館
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コメント: |
これまで、聞きかじっていた米国の学生の学部から始まる教育システム、そこから始まるアカデミックキャリア、テニュア、国などから来るファンドの取り方、すなわち、米国のアカデミックシステムとその社会的位置づけをAssociate Proffessorまで経験した著者が徹底的に描いてみせる。これを読むと、独立行政法人化にはじまり、大学院重点化、産学連携、ポスドク増大計画、最近の修士博士一貫化に至る文科省の高等教育に対する政策が、米国のアカデミックシステムの一部だけを取り出し、一貫性なく、輸入しようとしてきたかがよくわかる。
筆者も語っているように米国のアカデミックシステムは米国社会の中での位置づけがあって、成り立つものであり、木を移植しても育つのが難しいように、その一部だけを取り出して輸入してもうまく育つはずもなく、結果として草ぼうぼうになってしまった我が国の高等教育の荒廃があるのではないかと思えてくる。
2004年初版であるが、最終章の我が国との比較が、未だに新鮮なのは、大学改革が進展していない証でもある。「今更聞けない米国のアカデミックシステム」であるが、一度通して復習してみることをお勧めする。 |
関連本棚: |
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文明の生態史観 (中公文庫)
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著者: |
梅棹 忠夫 |
出版社: |
中央公論社 |
評価: |
5 |
カテゴリ: |
評論
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コメント: |
この論文の初出が1957年。ジャレドダイヤモンドの「銃・病原菌・鉄」が2000年であるからそれより40年以上前に、世界の文明を科学、特に生態学的観点で比較しようと試みた発想には驚く。しかも、近代文明とくに封建制から市民革命への以降をヨーロッパ、日本のようにうまくいったところ、インド、中国、東南アジアのようにブルジョアジーの発達がなく、うまくいかずに共産党や軍の独裁にいったところ、新世界(米国)のように、ブルジョアが新天地であまり抵抗なく移行していったところと分析してみせる。さらに、単なる西洋、東洋ではなく、アフガニスタン、トルコ、インドのような中洋ともいえる間の存在があるということを指摘しており、まさに、現代を予告するかのようだ。ミャンマーやインドの民主化がなぜ難しいかが改めてよくわかる。近代化を支えるブルジョワジーが未成熟なのだ。 |
関連本棚: |
土屋研
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大学生のための100人100冊
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デカルトの誤り 情動、理性、人間の脳 (ちくま学芸文庫)
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著者: |
アントニオ・R・ダマシオ |
出版社: |
筑摩書房 |
評価: |
5 |
カテゴリ: |
脳科学
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コメント: |
人間の理性や論理的な思考といったものが、情動とは切り離せないものであることを、神経生理学、臨床心理学などの豊富な例を用いて示される。特に、前頭葉を何らかの理由で一部損傷した患者たちの示す異常な行動を科学的に調べることにより、示される理論はショッキングである。ソマティクマーカー、乱暴にいえば直感といったものが、意識化で様々な選択肢にあらかじめいい悪いの重みを与えることで我々は判断が下せる。我々の普段知らない大きな無意識のごくわずかな一部が意識として我々が考えるものであるという。「はいチーズ」といわれて素直に笑えないのは、普段笑うときには、まず情動が様々なシグナルを脳に与えているからこその笑いとは大きく異なっているからだという。デカルトの誤りとは我々の理性が我々の体とは独立に存在する脳の中のプログラムのような存在だと分離したことであると結論している。読みにくいがBMIやコンピュータのいく先を考えるにも面白い本だ。 |
関連本棚: |
sshinji
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日産 驚異の会議 改革の10年が生み落としたノウハウ
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著者: |
漆原 次郎 |
出版社: |
東洋経済新報社 |
評価: |
4 |
カテゴリ: |
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コメント: |
日産がいかにして再生していったか。そのために、「会議」というツールをどのように構成し、生かしていったかが解説される。読み飛ばしながら、エッセンスを理解すればいいだろう。いくつかのポイントは、会議のグランドルールに現れている。すなわち、(P10)
予定外の議題を持ち出さない。
ポジションパワーを使わない。
積極的に「聴く」「話す」「書く」「行動する」
時間厳守
「いかに〜するか」など建設的な表現活用
携帯電話はマナーモードに
安全なシェルター
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関連本棚: |
hama
sshinji
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閉じこもるインターネット――グーグル・パーソナライズ・民主主義
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著者: |
イーライ・パリサー |
出版社: |
早川書房 |
評価: |
5 |
カテゴリ: |
フィルターバブル
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コメント: |
本書のいうフィルターバブルとは、検索やSNSという我々の目を覆い隠す風船であり、我々はそのフィルターを通して飲み、外界を知りうることができると筆者は警笛を鳴らす。
なりたい自分とありのままの自分、いいねボタンは他人からみてそう思ってほしい自分を表しており、googleの検索は今の自分の欲望そのものである。
インターネットはかつてはフラットでオープンだったはずなのに、いつの間にか「閉じこもり」人々が情報を得にくくなっていたのだ。
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関連本棚: |
isihara
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増井
岸リトル
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タックスヘイブンの闇 世界の富は盗まれている!
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著者: |
ニコラス・シャクソン |
出版社: |
朝日新聞出版 |
評価: |
5 |
カテゴリ: |
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コメント: |
キプロスの銀行救済がどういう意味を持つのか、この本を読めばわかる。
タックスヘイブンは単なる税だけではなく銀行の透明性もゆがめ、それが今おこっている金融の暴走の一因になっている。そのつけを払わされているのは、増税などさまざまな手段で国家からお金を吸い上げられる一般庶民である。タックスヘイブンの受益者である多国籍企業や富裕層はそれさえ逃れることができる。
というのが、本書の主張。イギリス、アメリカ、世界中のタックスヘイブンを様々な取材により明らかにしている。
ちなみにヘイブン(回避地)であってヘブン(天国)ではないのだ。 |
関連本棚: |
T.Miyashima
sshinji
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北欧モデル 何が政策イノベーションを生み出すのか
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著者: |
翁 百合, 西沢 和彦, 山田 久, 湯元 健治 |
出版社: |
日本経済新聞出版社 |
評価: |
5 |
カテゴリ: |
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コメント: |
現代日本への処方箋
地域分権によって、税の受益関係をはっきりすること。
働きに見合うインセンティブを失わない税制度
社会保障の中身も現役世代にあつく
抜本的な政治改革をおこなう
緻密な処方箋
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関連本棚: |
sshinji
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スティーブ・ジョブズ I
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著者: |
ウォルター・アイザックソン |
出版社: |
講談社 |
評価: |
5 |
カテゴリ: |
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コメント: |
第1巻はsteve jobsの若い頃。やんちゃだった頃、その成功と挫折が描かれている。ほぼ、リアルタイムだったので、懐かしくもある。何より、こんなむちゃくちゃな人間が、すごいことのできる米国の奥深さに驚く。日本も今後は、変人でもとんがっている方がいい。エンジニアとのやりとりも面白い。
第2巻も含めて、mac, next, iMac, ipod, iphone, ipadと歴史の裏側を見る感覚、
プレゼンのカリスマしか知らないスティーブジョブズの人間性をみる。
また、経営者としての手腕も、アップルの魔法を分解して見せるようで面白い。
steve jobsは最高の人を見つけ、集め、最高の仕事をさせる。
日本が忘れてしまったもの作りの原点があり、また、それをグローバルな視点で行うという日本にかけているものもシリコンバレーだからこそ、持ち得たということか。
命を削って作品を世に送り出す、まさにアーティストだったのだと実感。
元気になる、自分もそうなれるのではと思わせる。 |
関連本棚: |
増井
しはみ
西町「頑固堂」書店
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教育×破壊的イノベーション 教育現場を抜本的に変革する
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著者: |
クレイトン・クリステンセン, マイケル・ホーン, カーティス・ジョンソン |
出版社: |
翔泳社 |
評価: |
5 |
カテゴリ: |
教育
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コメント: |
intelligenceはIQだけでなく、9つのメジャーで測る.
したがって、数学が得意な子もいれば、体育が得意な子もいる.
そのこのペースで、その子の理解度で進められるのが理想.on line educationはそれを実現する.
すべての学校が、きめの細かいカリキュラムや多様な教育の要求に応えるのは無理.online educationを補助的に利用することで、それが可能になる.
online educationの究極はCGM, Khan academyのような利用者が作成した教育コンテンツがクラウドで共有され、整理され、ベストなものが検索によって必要な人、学校に届けられる.
教師の役割は、これまでのようにクローズドな環境で決められたものを教える形ではなく、その子の成長にあわせて、ベストなものをクラウドも含めた広い環境の中から見つけて、与えるというコンサルティングのような形に変わる.
ただし、それを正攻法でやるのではなく、上記のような補助的なものから徐々に移行していく.
我々のような学内ICTを推進している人には痛いほど共感できるし、示唆に富む。 |
関連本棚: |
sshinji
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