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(32/32)冊
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ささら さや(2) (バーズコミックス ガールズコレクション)
著者: 加納 朋子, 碧也 ぴんく
出版社: 幻冬舎
評価:
カテゴリ:
コメント: 本屋の店頭に平積みにされていたこの本のタイトルにふと惹きつけられて、本を1冊手に取って作品紹介や解説を読んでみたところ、どうやら「ゴースト ニューヨークの幻」を現代日本風にアレンジしたような雰囲気の連作短編ミステリであるようなので尚更興味を惹かれ、今まで1度も読んだ事のない作家であったが試しに読んでみる事にした。<br> <br> 不慮の事故により、愛する妻と生まれたばかりの息子を残して死んでしまった夫は、しかし妻のそばに幽霊として留まり、彼女と息子を見守りつつ、彼等の危機には彼女の周囲にいる人間の体を借りて駆けつける。連作短編だが、1篇ずつの感想ではなくまとめての感想を書いておく。<br> <br> 幸薄い人生だったさやに暖かい家庭を与えたのも束の間、妻と子供を遺してこの世を去らなければならなくなった夫が、他人の口を借りて妻に投げかける言葉はぶっきらぼうながら優しく、彼等を見守り続ける目は温かい。ようやく手に入れた家庭を無惨に壊され、1人遺された息子をも夫の家族に奪われそうになって、亡くなった伯母の家がある地へと必死に逃げてきたさやは、不器用で頼りたがりで泣き虫だけれど、恐らくは無自覚だろう驚く程の人の良さを振りまいている。新しい土地で彼女と知り合い何かあれば(なくても)彼女の家に集まる老女3人と若い母子は、それぞれ癖の強い性格で一見付き合い辛そうなタイプではあるが、皆がさやと息子へ惜しみない愛情を降り注ぎ支えとなる。<br> <br> 物語の中のいろいろな場面や台詞がツボにはまる切なさで、読んでいる最中どころか今書きながら思い返すだけで涙が出そうになったり。しかしただ切なく泣けるだけの話では終わっておらず、登場人物達の優しさ・温かさがどの篇からもほのぼのと発散されているのがとても良かった。ラストに向けてのさやの成長(敢えて端的な表現に留める)に感じる、切なさ・淋しさに裏打ちされた力強さも、これまたぐっとくる。こんなにしみじみと静かに感動させる話を書く作家を今まで知らなかったのは迂闊だった。忘れない内に著者の他の作品を集めようと思う。ミステリとしては弱めなので、ミステリを期待して読まない方が吉。
関連本棚: すろぷろ 素光 こまい
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不安な童話 (ノン・ポシェット)
不安な童話 (ノン・ポシェット)
著者: 恩田 陸
出版社: 祥伝社
評価:
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コメント: 着々と恩田陸作品を消費する日々。今日のこの作品は、「六番目の小夜子」「球形の季節」と続いての第3作目であり、今まで読んだ学園ミステリー(ホラー?)から離れた作品となっている。<br> <br> 秘書をしている大学教授に連れられて、今は故人である女流画家の遺作展に足を運んでみた女性が、会場で恐ろしい既視感に囚われ失神。そのショックも覚めやらぬ内に教授宅へ教授と彼女を訪れた画家の遺児は、「彼女が亡き母の生まれ代わりである」と確信している事、それを根拠として「自分と一緒に母親の形見分けを手伝って当時の記憶を思い出して欲しい」、と告げる。遺児もまだ幼い頃に非業の死を遂げた亡き女流画家は、その死の状況をひた隠しにされていた事もあり世間一般の記憶は薄く、主人公の女性が遺児と一緒に関係者達の元へ足を運ぶ毎に、女流画家の素顔及び死の真相が少しずつ明らかになっていく構成が面白い。登場人物がやや多くて絡みの薄い人物もおり、この辺はもう少し整理したほうがよりシャープな雰囲気になっただろう事と、ミステリとしては先が見えてしまいそうな展開なのがやや惜しい。何処かの書評サイトで「恩田陸の長編は練り込みが足りない」といった感じの指摘を読んだが、これは的を射ていると思った。扱われるネタや登場人物・舞台の醸し出す独特な雰囲気が、多少の欠点をカバーするだけの充分な魅力を持ってはいるのだけど。<br> <br> 主人公である女性は特殊な能力所持者であるにもかかわらず影が薄い存在である。が、彼女がその生まれ変わりとされる「今はマイナーな存在だがかつて一世を風靡した事もある女流画家」のカリスマ的存在感、彼女が秘書を務める大学教授のほのぼのとした人当たりの下に隠された豊富な知性、彼女を心配し見守る姉の料理好きな美人といった女性らしさとバリバリのキャリアウーマンで疲れて家でくつろぐ時のおやじ臭さといった二面性、その他何人かのキャラの個性的な魅力が光っていた。今までの学園物では見られなかっただろうキャラ達である。
関連本棚: 海鳴り文庫 素光 権太の既読 Nakata Ron
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ネバーランド (集英社文庫)
ネバーランド (集英社文庫)
著者: 恩田 陸
出版社: 集英社
評価:
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コメント: これまた恩田陸の学園物だが、ハードカバー刊行が2000年のようなのでそれほど古い作品ではないのかもしれない。著者あとがきによれば、「トーマの心臓」(萩尾望都)を書こうとしたそうであるが、さて。<br> <br> 年末年始の休みを学生寮に居残って過ごす事にした、九州にある名門男子校の同学年生徒3人組と、乱入を決め込んだ自宅組の1人。気心知れた3人組に無邪気な1人が加わった事や、また周囲に誰もいない事で従来の「役割・関係」が取り払われる事での微妙な関係の変化、そして食事後酒を飲み交わしながらのゲーム大会と「告白」罰ゲームによって、彼等がそれぞれ抱える秘密が少しずつ曝け出されていく。ぶっちゃけ、ありがちなトラウマをかき集めてきたなー、登場人物達の性別を逆にして男主人公を無理矢理はめ込んだらまるでエロゲかギャルゲだなーとは思うが、少年達の気の置けない会話や行動の微笑ましさ・リアルさと、期間限定ではあるが彼等だけのお城で彼等が行う「告白」と「浄化」の清らかさが、今まで読んだ恩田陸の学園物に通じる切ない雰囲気で良かった。ただ1点だけどうしようもなく気になったのは、「岩槻のエピソードが活かされてないのでは、というか不要なのでは」という点。彼のエピソードはガールフレンド但馬嬢のエピソードで充分補えそう。「トーマの心臓」が頭にあっただけに削れなかったんだろうか、と余計なお世話を焼いてみる。<br> <br> この作品は人数も少ない事だし、既に映像化されてやしないだろうかと思って調べてみたら、やっぱり映像化されていた(→「NEVER LAND」)ので、キャストとストーリーをチェックしてみた。登場人物の年齢的にジャニーズアイドルが配役されるのはまあしょうがない(別に嫌いな訳でもないし)として、エピソードを整理したり膨らませて話を「わかりやすく」書きかえたり、それに伴って元々は少なかった登場人物を水増ししたり、何より舞台が閉塞的で厳しい冬から開放的な夏に変わっていたり等、原作の持ち味は失われていそうな感じだが、連続モノのドラマとしてはそれほど悪くもなさそうだった。原作を読んで充分満たされている以上、ビデオを探し出して観ようと思うまでの興味はないけれど。
関連本棚: hashimoto トリゴシ苦労 Breathe うにのとげ Ayan あき 暇人 みなち 夢幻燈本舗別店書庫 みいみ 嘘八百 素光 左に傾いた木 inuko くうたん LENNKA はりねずみ とむの棚 さかなほ みやのすけ sandersonia MOB トリゴシ no title 月二海 yoosee 准エコノミスト・今福 pixy
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球形の季節 (新潮文庫)
球形の季節 (新潮文庫)
著者: 恩田 陸
出版社: 新潮社
評価:
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コメント: 恩田陸は今まで「六番目の小夜子」「puzzle」しか読んだ事がなかったのだけど、友人の1人が好きで何冊か所持しているらしいので、この機会に手当たり次第に借りて読んでみる事にした。この作品は「六番目の小夜子」の後に発表した第2作だそうで、これまたファンタジー大賞(第何回?)の最終候補にまで残ったそうである。<br> <br> 東北の小さな町に4つある高校で、いっせいに広がった奇妙な噂。各高校の生徒が参加する「地歴研」が噂の発信源を突き止めようと各高生徒達にアンケートを実施し追跡調査を行うその最中、噂は現実となり、そして固唾を飲んで成り行きを見守る生徒達の前にまた新たな噂が広まる。「六番目の小夜子」が1つの学校の中で独立した「噂」の物語なら、この「球形の季節」は複数の学校にまたがり1つの町の中で独立した「噂」の物語である。写実的な描写と曖昧な描写が混在していて戸惑ったり、登場人物達がはっきりとは個性的でない為に途中で混同しかけたり等、親切なエンターテインメント作品とは言い難いが、「六番目の小夜子」同様思春期の少年少女達の心情や回想を鮮やかに描き出している点と、幾つものお呪いが醸し出す空想めいた紛れもない現実的雰囲気、それらを広く受け入れる町「谷津」の得体の知れない懐深さが、不思議な魅力であると感じた。<br> <br> 舞台となる町「谷津」は閉鎖的な田舎町でありながら、しかしそこに住む人々には田舎特有の悪意的な排他性が感じられない。登場人物達が子供ばかりだからか、田舎ではあるが昔から貧乏な町ではなかった為の余裕なのか、それとも「もう1つの谷津」の存在が彼等を他の田舎町の人々と違った超然さを与えているのか。「フィクションだから」と言い切ってしまえばそれで終わるけれど。
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ラクエンのサダメ―ストレイト・ジャケット〈6〉 (富士見ファンタジア文庫)
ラクエンのサダメ―ストレイト・ジャケット〈6〉 (富士見ファンタジア文庫)
著者: 榊 一郎
出版社: 富士見書房
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コメント: シリーズ第6巻。最近著者は萌え小説ばかり書いていた様子なので、もうこちらの世界(ラノベではあるけれど陰鬱で救いの少ない世界)に戻ってこなかったらどうしよう、とちょっぴり危惧していたが、杞憂に終わったようで安心した。<br> <br> 「楽園」成就の為に繰り返される研究と、それが様々な人々にもたらすひそやかにして大きな波。今作は話の大半が孤島の内で進み、警察や魔法管理局のお馴染みの面子が出てこない半面、既刊では影をちらつかせるだけだった源流魔法使について触れられたり、「絶望しきれない」レイオットと「透明な無表情」のカペル2人の心情が本人達の口からある程度語られたり、とストーリー展開に加速度がついたように感じられる。レイオットが語る、「罪を犯した自覚を持つ人間が為すべき行為」論が熱かった。綺麗事だし青臭いのだけど、綺麗事を語らず斜に構えっぱなしのラノベは存在意義がないと思うのでこれで良し。<br> <br> カペルテータの、一見超然として無感動に見える顔や声の「無表情」と、時折見せる幼さ・無邪気さといった「透明さ」は、萌え要素としてなかなかだと思うのだけど、しかしいわゆる「ダウナー系」としてくくられる無表情少女達の1人に過ぎないんだよな、と気付いて何故かがっかりしてみたり。そして、生き生きとした表情で真っ直ぐな生き方そのままの叱咤や励ましをぶつけながら、意外と達観した物の見方が年相応な大人のネリンは、カペルと対照的でこれまたなかなかだと思うのだけど、これまた既存のカテゴリに属する女性像だと悟って再び意味もなくがっかりしてみたり。
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天より授かりしもの (創元推理文庫)
天より授かりしもの (創元推理文庫)
著者: アン・マキャフリー
出版社: 東京創元社
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コメント: SF作品で知られるアン・マキャフリーの、中世風ファンタジーというよりは童話的な小品。天より授けられた資質「天恵」が一国の姫という己の立場にふさわしいものではなかった為に、王城をこっそり抜け出して念願の一人暮らしを始めようとした王女が、しかし予想以上の苦労に凹みかけていたところに、1人の傷だらけの少年が現れ彼女と共同生活を営み始めるようになる。<br> <br> 昔読んだ「アリーテ姫の冒険」という本は、「賢さと勇気を兼ね備えた1人の王女が、魔女からの贈り物を適切に用いて不幸な結婚から見事逃れる」といった話で、姫の機知や落ち着きっぷりには素直に感心したものの、「魔女の贈り物が貰えたのは所詮王女様だからでしょう」といった反感部分があった。一方この「天より授かりしもの」に出てくるお姫様は、この世界の誰もがそれぞれ天から与えられるという「贈り物」を適切に用いるべく窮屈な世界から脱出したものの、1人では上手に暮らしていけず謎の少年と助け合いながら暮らす。大切なものを守り抜く為に現状と戦おうとするところ・しかし弱さのあるところ・誰かと助け合わずには生きていけないところ、この辺りが前述の「アリーテ姫〜」よりもっと、普通の女の子達に受けるのではないかと思ったりした。
関連本棚: 素光 mie nyarl kana hide-t
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舞闘会の華麗なる終演―暁の天使たち 外伝〈1〉 (C・NOVELSファンタジア)
舞闘会の華麗なる終演―暁の天使たち 外伝〈1〉 (C・NOVELSファンタジア)
著者: 茅田 砂胡
出版社: 中央公論新社
評価:
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コメント: 暁の天使たち」完結巻を読んで、次のシリーズには手を出すまいと心に決めた私だったが、シリーズ外伝となると読まないでおくのは何となく気持ちが悪いので買って読んでしまった。外伝と銘打たれてはいるが、あとがきで著者自身が認めている通り、暁の天使たち6巻「天使の舞闘会」の続編と言うか、完結巻と時系列を重複させて盛り損なったエピソードを補完している感じ。そのエピソードも、カラーイラストにも描かれている「お菓子作り」の他、吸血やらデートやらと、著者が書いているとはいえ内容はファン同人誌にありがちなものばかり。本編に盛り込まれている分なら微笑ましく読めても、そればかり詰め込まれて1冊の本にまとめられても同人誌にしか感じられず困惑。しかも「外伝1」って。続くのかこれ。いい加減疲れてきたけど、女王&海賊夫妻がどう落ち着くかを確認するまでは足を洗えないよ……。
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Missing〈11〉座敷童の物語・完結編 (電撃文庫)
Missing〈11〉座敷童の物語・完結編 (電撃文庫)
著者: 甲田 学人
出版社: メディアワークス
評価:
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コメント: 魔女・十叶詠子の「正体」解説に戦慄が走った。あとは、誰かが挫折から上手く立ちるのはその本人に目を向ければおめでたい事なのだけど、しかし個々が与えられた役割をこなす事で展開が悪化するんじゃないかなーと気を揉んでみたりした。
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Missing〈10〉続・座敷童の物語 (電撃文庫)
Missing〈10〉続・座敷童の物語 (電撃文庫)
著者: 甲田 学人
出版社: メディアワークス
評価:
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コメント: 猟奇ぶりにやられて感想を書く気力がないまま放置していたら、新刊が出てしまった。最近このパターン多すぎ。マクロな視点での最善策を模索し続けて行動に移れないよりは、視野狭窄で利己的でも行動に出る事こそが「正しい凡人の取るべき道」なのかなあ……とか考えたんだったような気がする。
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ななつのこ (創元推理文庫)
ななつのこ (創元推理文庫)
著者: 加納 朋子
出版社: 東京創元社
評価:
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コメント: 「ささらさや」の著者による、こちらも連作短編集。古本屋で見つけて喜んで買った。「第3回鮎川哲也賞受賞作」だそうであるが、鮎川哲也という人をしらないので賞の重みがよくわからない。<br> <br> ノスタルジックなイラストの表紙に惹かれて手にした短編(恐らく)童話「ななつのこ」に一目惚れした女子大生が、著者に直接語りかけたい衝動に駆られて生まれて初めて書いた「ファンレター」に自分の近況も盛り込んでみたところ、著者からの思いがけない返信には著者の想像による事件の「解決編」が記されていた。以後、主人公の日常にあらわれた些細な謎が「ななつのこ」1篇を絡める形で綴られ、童話作家がその真相を解き明かす、という形で1篇1篇話が進んでいく。繊細ぶったところがなく友人達からも元気いっぱいと思われがちであるらしい主人公の、意外と言っては失礼かもしれない感受性豊かさに、ファンレターを送られた童話作家同様に読み手の私の心も惹きつけられた感。<br> <br> 全7篇中から、感想を幾つか。<br> <br> 「一万二千年後のヴェガ」<br> :<br> 東京都M市のデパートの屋上にいたビニール製の恐竜が、一晩で新宿の保育園の裏庭へと移動したにも関わらず、持ち出す人間を見たものが誰もいない不思議。1篇めで主人公が「神奈川県と東京都の境目、辛うじて神奈川県にしがみついているような場所に住んでいる」「自分達は<都会>という名のコンクリートジャングルの住人」と書いていたので、てっきり川崎市に違いないと思っていたのだけど、この篇を読む限りでは相模原市(町田付近)であるようで、その辺はコンクリートジャングルといった地域でもない気がしたがそれはさておき。童話作家が手紙の返信で綴った「真相」が、思い浮かべるにあまりにユーモラスな光景で大変印象的(ネタバレするのもアレなのでこれ以上具体的に書けないが)。「デパートの屋上のプラネタリウムで上映される星座の歴史」に共通する、矮小さと壮大さも兼ね備えているように思える。<br> <br> 「白いタンポポ」<br> :<br> 友人の付き添いで参加した学校1泊キャンプにて仲良くなった小1女子を、教師達から情緒欠落というレッテルを貼られるに至らしめたという、少女が塗り絵で塗った「白いタンポポ」の謎。推理小説の時刻表トリックと一緒で、地元民等知っている人にとっては謎でもなんでもないのだけれど(私も知識としてはあった)、他の短編と同様に本題は謎解きではなく謎に行き着くまでの部分「この篇では『主人公と小1女子の交流』」にある。また、そう言えば私は子供の頃、「影響されて髪の色が紫や緑の人間を絵に描いて、それが理由で学校に『この子は情緒がおかしい』等と言われたら困る」という理由で、一部を除いたアニメの視聴を親に禁止されていたんだったと思い出して少し憂鬱になった。
関連本棚: worit post みかん(あ行〜さ行) 夜空の下 増井 みゅう 夢幻燈本舗別店書庫 みいみ MM yuko970023 素光 moppuneko joulli yoru ffffa daichi 桐華 soutaro 日々 とむの棚 うにこ あおぞら みづき ababincho silverrain うらら
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天使たちの華劇―暁の天使たち 外伝〈2〉 (C・NOVELSファンタジア)
天使たちの華劇―暁の天使たち 外伝〈2〉 (C・NOVELSファンタジア)
著者: 茅田 砂胡
出版社: 中央公論新社
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コメント: 「暁の天使たち」完結巻を読んで、次のシリーズには手を出すまいと心に決め、外伝を読み納めにするつもりでいる私である。外伝1巻「舞闘会の華麗なる終演」が「完結巻と時系列を重複させて盛り損なったエピソードを補完している感じ」、つまるところ「外伝にまとめないでちゃんと本編に盛り込めば良かった」のに比べて、こちらの外伝2巻は全くもって本編に必要不可欠ではないエピソードの羅列であり、正しく外伝或いは番外編を読んでいる気分。ただ「セクハラ教授をとっちめる」「棒術の試合に出る先輩を鍛えつつ策略を巡らす」「学園祭でコスプレ喫茶」「衣装製作発表会」といった内容が、著者が書いているとはいえファン同人誌にありがちなものばかりであるのは前作同様。読んでいて面白いのだけど何故か居心地が悪く、その理由が何なのかを考えた結果、「それこそファン同人誌のような『キャラクター達に対する溢れんばかりの愛』があけっぴろげに提示されているからではないか」との考えに至った。ストーリーは惹き込まれるものの、各主要未成人キャラの歪みがどうも引っかかって次シリーズへ移行しない予定の私には、その各キャラがやたらめったら溺愛されている様は正視し難いものがある。
関連本棚: 103 シガラ 素光 yoshy くじら
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MAZE (双葉文庫)
MAZE (双葉文庫)
著者: 恩田 陸
出版社: 双葉社
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コメント: アジアの僻地、棘だらけの植物に囲まれた丘の上に建つ白い建造物は迷路のような構造で、古くから「中に入った者が突如消えてしまう」現象が伝えられている。強力なバックのついているらしい幼馴染みに依頼された男が、この建造物の「人間消失」のルール探しに挑まされる。<br> <br> 主人公の「ルール探しまでは楽しかった」という言葉に同意。建造物のミステリアスな設定・伝承に心踊らせ、主人公や幼馴染みや他の同行者達との会話に本の外から耳を傾け、展開が途中からホラー色を帯びていくまで大変わくわくとしていた。それだけに、やたら現実的な結末に収束するのは、せっかくの楽しい夢から無理矢理に醒めさせられるような不快感が伴ったし、「でも乾いた現実一色ではありませんよ」といったサービスめいた「恩田陸風味」の場面は、逆に中途半端な感じで興醒めだった。この作品がつまらないとか出来が悪いとかいう意味ではなく、それだけ設定に魅せられてしまったが為の感想である。<br> <br> 「白い建造物内の人間消失」という設定とそれに対する主人公の推測は、先に読んだ「月の裏側」を彷彿とさせる点がある、と思った(詳しくは書かない)。また、主人公の満の飄々ぶりと、彼を連れてきた幼馴染みである「女言葉を操る美青年」恵弥のしたたかぶりが、なるほど息のあった親友として長く付き合っていけそうな噛み合い方だった。
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