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イヴの七人の娘たち
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著者: |
ブライアン サイクス |
出版社: |
ソニーマガジンズ |
評価: |
★★★★☆ |
カテゴリ: |
生物学
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コメント: |
かなり前のニュースだが,覚えているヒトもいると思う,ミトコンドリアDNAの分析から,現代人全ての「母」にあたる女性が15万年前のアフリカにいたことが判明し,彼女は当然ながら「イヴ」と名付けられた,という話だ。この本はあの研究を行った,オックスフォード大学人類遺伝学教授ブライサン・サイクスそのヒトが,その研究内容を一般向けに噛み砕いて解説したノン・フィクションである。<BR>
この研究のよすがである「ミトコンドリアDNA」とは,細胞質にあって人間の活動エネルギーを生み出す働きをしている器官である。このミトコンドリアのDNAには,他の遺伝子と違って母方からしか受け継がれないという便利な特徴がある。昔バラの育成シミュレーション・ソフトを書いた時に出て来た植物における「細胞質遺伝」というのと同じようなものだナ。おまけにこのミトコンドリアDNAは,約2万年に一度の割合で突然変異を固定することが分かっている。なので例えばこれを読んでいるアナタとオレのミトコンドリアDNAを比べて,その違いの数を数えれば二人の共通の先祖 (母系) までどのくらい遡れば到達するのか,だいたい万年単位でわかる,という寸法なんですね。<BR>
……とは言え,それを実証するまでミチスジはもちろん平たんなものではなく,波乱万丈ヤマナカシカノスケなノン・フィクションになっている。なかでもワタシの心に残ったのは,かのヘイエルダール (こないだ亡くなった) が,コン・ティキ号で「実証」したポリネシア人の南米起源説がミトコンドリアDNAの研究ではっきりと否定されていたことである。これ,言葉は悪いがもっと宣伝すべきだと思うなぁ。まだまだ堅く信じているヒトが周りにたくさんいそうである。<BR>
結論として現在イヴの子孫には35の系列があることが判明している。このウチ東ユーラシア系はアメリカ系を含めて7系列ある。自分のDNAがどの系列かを知りたいヒトは,オクスフォードの研究所サイトに申し込むことができ,その<a href="http://www.sonymagazines.jp/mmt/200111080710">日本語インストラクション</a>がこの本の出版社,ソニーマガジン社に用意されている。やってみます?<BR> |
関連本棚: |
どら
Anemonefish
taku
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ナンシー関大全
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著者: |
ナンシー 関 |
出版社: |
文藝春秋 |
評価: |
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カテゴリ: |
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コメント: |
「噂の真相」や「週刊文春」のコラムは好きでよく読んでいたが,こうしてまとめて読むのは初めて。それがいわば絶筆というか追悼編集モノなのはなんと惜しいことか。このヒトのコラムのいいのは視点・視座がぶれないこと。こういう風に言うと誤解があるかもしれないが,妙な上昇志向がないので,対象との距離感が(それが自分であっても)貫徹されているのだな,オレの大嫌いな林真理子と対極にある感じ。<BR>
TVと芸能界ネタは畑違いなので,書かれている対象のヒトを全然知らなかったりする場合もあるのだが,櫻井よしこの武器は「お上品爆弾」であると喝破し,返す刀でマスコミは皇室ネタに国民的「快楽のツボ」を見いだしたと分析する透徹はちょっと図抜けてる。いや,あらためて惜しいヒトを亡くしたもんである。彼女に比べたら死んでくれて惜しくない評論家なぞ掃いて捨てるほど生きてやがるもんなぁ(笑)。 |
関連本棚: |
のらねこ兵☆2
可楽まんだら草紙
楽しく生きるための100冊 2019
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¥999 BOOK PLUS
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著者: |
フレデリック ベグベデ, Fr´ed´eric Beigbeder, 中村 佳子 |
出版社: |
角川書店 |
評価: |
★★★☆ |
カテゴリ: |
青春
ユーモア
小説
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コメント: |
ヘンな題名だが,本国フランスで発売されたときの題名が「99F」つまり「99フラン」で,本の値段そのままだった。もちろん今はユーロになったので「14.99e(ユーロ記号のつもり)」に改められている,らしい。そして日本でも「¥999」というのが書名であり,また値段なのだ。税別999円で売っているわけである。 |
関連本棚: |
好
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妖星伝 (1) (講談社文庫)
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著者: |
半村 良 |
出版社: |
講談社 |
評価: |
★★★★★ |
カテゴリ: |
日本
小説
SF
伝奇
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コメント: |
半村良が実に20年の歳月を費やして完成した伝奇文学の最高峰。<BR>
我が国において,古来「神道」と対極にあったとされる「鬼道」,その信徒たちは皆超能力を持ち,破戒仏を尊み,戦乱と流血の影に暗躍して来たという。江戸は飢饉,腐敗の田沼時代,伝説の統率者にして不死身の存在「外道皇帝」が再臨するという……。<BR>
うう,これ以上なにを言えよう。読む者の宗教観,世界観,生命観,倫理観,宇宙観をもひっくり返す空前絶後の力業。日本語が読めるなら,「妖星伝」を読まぬうちに死ぬな。 |
関連本棚: |
ブースカ
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戦争プロパガンダ 10の法則
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著者: |
アンヌ・モレリ, Anne Morelli |
出版社: |
草思社 |
評価: |
★★★★ |
カテゴリ: |
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コメント: |
ベルギーはブリュッセル自由大学の歴史批評学教授,アンヌ・モレリの書いた「いかにしてわれわれは心配するのをやめ戦争を愛するようにしむけられるか」というハウツー本。第一次世界大戦後の1928年に,イギリスの政治家,アーサー・ポンソンビーが著わした「戦時の嘘」を元に,戦時下におけるプロパガンダのメカニズムについてまとめたものである。原著の出版は昨年,米国でいわゆる「同時多発テロ」が発生する前のことだが,その内容はまるであの事件のあとの経緯を見て書いたと言ってもおかしくないくらいだ。<BR>
モレリによれば戦争プロパガンダは必ず,「われわれは戦争をしたくはない」という言葉で始まるのだそうだ。われわれは争いを好まない,なによりも平和を愛している,「しかし敵側が一方的に戦争を望んだ」のだと続く。なぜかというと「敵の指導者は悪魔のような人間だ」からであり,彼を滅ぼすのは神の意志,「われわれは領土や覇権のためではなく,偉大な使命のために戦う」のである。<BR>
そうして戦争が始まると,時として非戦闘員の死者も出る。が,そういうことで厭戦気分が広がるのは阻止しなければならない。「われわれも誤って犠牲を出すことがある」と言い訳をし,「だが敵はわざと残虐行為におよんでいる」と敵の邪さを強調する。こっちは正々堂々戦っているのに,「敵は卑劣な兵器や戦略を用いている」のだ。<BR>
にも関わらず,「われわれの受けた被害は小さく,敵に与えた被害は甚大」であるのは,正義がわれわれの側にあるからだ。その証拠に「芸術家や知識人も正義の戦いを支持している」ではないか,そうとも,「われわれの大義は神聖なもの」なのだから,国民はすべからくこの戦争に協力すべきであり,「この正義に疑問を投げかける者は裏切り者である」と,こういうわけだ。<BR>
「どんなウソも繰り返すうちに本当になる」というのは確かナチスの宣伝大臣ゲッペルスの言葉だった。このところテレビや新聞でさんざん繰り返されるので,サダム・フセインが核兵器を作っていてしかもそれができるやいなやアメリカに向けて発射するつもりであるように感じているヒトも多かろうが,いくら何でもそんなノータリンをイラク国民が大統領にしておくわけはないのである。もっと言えば,フセインだってちゃんと選挙を戦って大統領になっているんであり,その選挙もブッシュがゴアに勝ったそれに比べりゃよっぽと公明正大に見えた。そーゆーことを忘れてはいけないと思うのだ。 |
関連本棚: |
偏食子ヤギ
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帝国以後 〔アメリカ・システムの崩壊〕
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著者: |
エマニュエル トッド |
出版社: |
藤原書店 |
評価: |
★★★★ |
カテゴリ: |
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コメント: |
アフガン,イラクとヤリタイ放題でいよいよ世界を統べる帝国たらんとしているかに見えるアメリカであるが,彼の国が真に世界帝国になりうるチャンスはとうに失われたのであり現在はその崩壊の過程にある,というフランス人歴史学者の挑発的分析の書である。 <BR>
まず,ソ連の崩壊以降世界は安定へと向かっているという基本認識が語られる。第三世界では未だイデオロギー的,もしくは宗教的熱病の発作のような争乱が見られるけれども,全体の傾向として発展と民主主義の確立へと漸進している……。ところがそうした方向を喜べない国が世界に一つだけある。それがアメリカ合衆国なのである。 <BR>
例えば今話題のイラク新法,もし北朝鮮が攻めて来たら(毎日餓死者を出してるようなクニがほんとに攻めて来られると思ってるヒトがいるのはワリと驚きなんだが)アメリカさんに守ってもらわなくちゃならないんだから賛成しなくちゃ,と言うヒトが結構いる。裏を返せば北朝鮮と仲良くできれば死ぬかもしれないイラクくんだりに我等が自衛隊を送る必要はないのであり,そうなると困るのは日本ではなくてアメリカだ。だからアメリカは軍事的に比較すればとるに足らないイラクやキューバ,北朝鮮を「悪の枢軸」と喧伝する。ヤツラと闘う正義のアメリカの言うことを聞け,というわけだ。 <BR>
著者の分析では,そろそろアメリカのこの論理に基づく「演劇的小規模軍事行動主義」(ブッシュの言う「テロリズムとの戦い」の上の文脈による言い換え)の底が割れて来ている,ということになる。今回のイラク攻撃に関しても,アメリカにとって「欧州にある保護領」であるドイツが公然と異を唱えた。「極東の保護領である日本もいずれ……」という期待はいささか買いかぶりぢゃないかと思うが,ともかく今や「消費しかできない世界の略奪者」たるアメリカの崩壊は歴史の必然だという分析には,賛否はともかく一読の価値があろう。 |
関連本棚: |
stonechild
欧米社会論
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二瓶
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ビター・メモリー (Hayakawa novels)
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著者: |
サラ パレツキー |
出版社: |
早川書房 |
評価: |
★★★★ |
カテゴリ: |
アメリカ
小説
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コメント: |
第1作の「サマータイム・ブルース」に登場以来ずっと彼女の「頼りがいのある姉」みたいな立場だった医師,ロティ・ハーシャルの過去を巡る物語である。原題は「
Total Recall」,同名の映画のイメージがあるのでそのままの邦題にしなかったんだと思うが,映画の方の原作はP.K.ディックの「追憶売ります」でその原題は「We ca
n remember it for you wholesale」なんだからややこしいよな。<BR>
閑話休題,恋人モレルがアフガニスタンに取材に行くことで憂鬱なV.Iは,黒人労働者サマーズからの依頼で彼の叔父にかかっていた筈の保険金詐欺事件を調べ始める
。同じ頃シカゴでは今も残るホロコースト被害についての会議が開催され,そこで「ナチスの生き残りによって虐待を受けながら育ち,最近催眠療法によって自分が実
はユダヤ人であることを思い出した」と称する男がスピーチを行う。ラドブーカと名乗るその男の名を聞いてロティは失神,わけを問い質すV.Iに彼女はかたく心を閉ざ
してしまう……。<BR>
ホロコーストとユダヤ人という重いテーマを真正面から描き切った力量はさすがだし,ミステリとしても謎解きもこれでいいんだろうが,1本の小説としてはバランス
に不満が残る。未解決の謎,というか「それであいつはどうなったの?」という当然語られるべきエピローグが欠落している印象。なんつうか,すっと追いかけている
シリーズだけに,そういう細部までを描くことによる物語の厚みを大切にして欲しいと思う。<BR>
それにしてもなるほど,「故人が生命保険に入っていたことを遺族が知らないという理由で,保険会社が支払わずに済んでいる金」というのはきっと想像以上に巨額
なんだろうな。言ってみりゃ使われないテレフォンカードみたいなもんだもんなぁ。オレもちゃんと親に聞いておかなければ。 |
関連本棚: |
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二度生きたランベルト
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著者: |
ジャンニ ロダーリ |
出版社: |
平凡社 |
評価: |
★★★★ |
カテゴリ: |
寓話
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コメント: |
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関連本棚: |
??
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睡魔
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著者: |
梁 石日 |
出版社: |
幻冬舎 |
評価: |
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カテゴリ: |
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コメント: |
映画「月はどっちにでている」の原作者,梁石日(ヤン・ソギル)のマルチ商法小説。主人公の趙奉三は大阪で事業に失敗,東京に逃げて来てタクシーの運転手をし
ていたが,交通事故で続けられなくなり失業。自分の体験を元に小説を出版するも思うようには売れず,悪友の誘いに乗って健康マットのマルチ商法に突っ込んで行く
。 <BR>
この健康マットのセールス・トークには大笑いする。いわく,大気中にはニンゲンの健康にいい「磁気」が一定量ある。これがなければ生物は生きていけない。なぜ
かというと赤血球にはプラスとマイナスがあり,互いに反発することで血液の流れが促進されているからである。ところが現代人は磁気を発している土をアスファルト
で覆ってしまい,この磁気を吸収できない。この健康マットは表面の突起の下に強力な磁石を多数縫い込んであって不足しがちな磁気を補給できるスグレものである…
…あんた,アスファルトやコンクリートで磁気が遮られるなら,例えばオレの部屋でコンパスが北を指すのは何故ですか (笑) 。しかし,このマルチの会社「ジャパン
・エース」(もちろん架空の会社である) が二泊三日で行う研修会に参加したみなさんは欲と二人連れだ,この説明をすんなりと受け入れてしまうのである。実際,ああ
ニンゲンというのはこのように洗脳されてしまうのか,うぬぬ,この雰囲気の中に叩き込まれたらオレも危ないかもなと思うくらい,この研修会のシーンはスゴい。小
説としても面白いが,今後の人生こういうモンに騙されないための参考書としても有用な一冊と言えよう,新社会人とかのヒトに是非ともオススメしたいっす。 |
関連本棚: |
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トンデモ科学の見破りかた -もしかしたら本当かもしれない9つの奇説
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著者: |
ロバート・アーリック |
出版社: |
草思社 |
評価: |
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カテゴリ: |
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コメント: |
いやこれは面白かった。え,また霊感商法なんかのトンデモ話をバカにする類いの本かって? そーぢゃない。そーゆーのは「トンデモ話」かも知れないが「トンデモ
科学」とは言えません。この本で取り上げられている諸説は,そーゆー「ヒトを騙してツボを売りつけよう」みたいな市井の詐欺師ではなくて,一応ちゃんとした学者
が大真面目に論文とかを書いているシロモノなのよ。<BR>
俎上に載せられた諸説は以下の9つ。「銃を普及させれば犯罪率は低下する」「エイズの原因はHIVぢゃない」「紫外線はからだにいいことの方が多い」「放射線も微
量なら浴びた方がいい」「太陽系には遠くにもう1つ太陽がある」「石油や天然ガスは生物起源ではない」「未来へも過去へも時間旅行は可能」「光より速い粒子『タキ
オン』は存在する」「『宇宙の始まりはビッグバン』つうのは嘘」……。<BR>
物理学者でもある著者はこれら一つ一つについてまずは丁寧に解説し,問題点を挙げ,検証方法を検討し,最後に「私見」としての「トンデモ度」を判定する。SFや
科学に全く縁のないヒトには辛い部分もあるかも知れないが,キチンと読み通せば目からウロコの2枚や3枚チャリンチャリンと落ちること必定の良書である。ちなみに
上の9つのウチ,著者がトンデモ度ゼロ(本当であってもおかしくはない)と判定したのは3つ,どれがそうかは読んでのお楽しみ。 |
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「パチンコ依存症」からの脱却―パチンコへの誤解と恐ろしい病にあなたは蝕まれている!
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著者: |
伊藤 耕源 |
出版社: |
すばる舎 |
評価: |
★★★★ |
カテゴリ: |
社会
病理
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コメント: |
この本は,「パチンコを辞められない」というのもアルコールやタバコ・薬物等の依存症と同様病気であるという前提のもとに,まず「パチンコを確率論的に論じ,『勝てる』という幻想を正し」,次に「パチンカーの心理を理解し,ギャンブルと人生の関わりを再考させ」,最後に「依存症から脱却するための具体的なプログラムを呈示する」ものである。内容は大真面目だか説教臭くはない。読んだヒトがパチンコを辞める気になるかどうかは分からないが,少なくともアホな幻想からは解放されるのではなかろうか。<BR>
あ,そうそうそれを書いておかねばな。オレ自身はもう8,9年前,「ハネモノ」が消え「CR機」というのがお目見えしたころにパチンコはやめてしまった。本書によればお客のほとんどが「パチンコはギャンブルだ」と認識しているそうだが,オレはそう思えなくなったのでやめたのである。ギャンブルっつうのはもう少し勝てる確率が高いものを言うんだってば。オレの考えではあれはまさしく「遊技」であって,「遊技料」を払ってチンチンジャラジャラさせてもらうだけのものになっちまったのだ。<BR>
ではやめたワタシがなんでこんな本を買ったかというと,ひょんなことからこの本を紹介したウェブページを見つけて興味を持ったからなのね。この本では1998年7月に,日本テレビが制作・放送した「実録180日・見たぞ驚異のパチプロ軍団」という番組を「パチンコには勝てる方法があるという誤解を助長するヤラセ番組」として糾弾しているのだが,ウェブページには作者が日本テレビに内部調査を要求した,その後日談が掲載されているんである。いやいや,日本テレビはもっと真摯な態度で応えて欲しいもんである。こんな番組作ってる局の番組で「パチンコ屋の駐車場で子供が熱射病」つうニュースに眉を顰めて見せるなんて,偽善もいいとこやないですかサクライさん。 |
関連本棚: |
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『西遊記』の神話学―孫悟空の謎 (中公新書)
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著者: |
入谷 仙介 |
出版社: |
中央公論社 |
評価: |
★★★★☆ |
カテゴリ: |
文化人類学
中国
神話学
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コメント: |
「西遊記」,オレはこの猿を主人公にした荒唐無稽な冒険談が子供の時から大好きで,4,5歳のころ木馬座に「そんごくう」の着ぐるみ劇を観に行ったのを皮切りに,手塚治虫や諸星大二郎,そしてもちろん寺田克也の西遊記ネタ漫画 (「大猿王」の2はまだかぁ?) から,村上知行による翻訳,中野美代子や太田辰夫などの研究書までおよそ孫悟空ネタには目がないオトコなのである。とは言っても西遊記関連本の専門書店なんてモノはないし,新聞に広告がバンと出るようなジャンルでもないので,1998年に発行されたこの本を購入したのは昨年の終わり頃のことだったんである。<BR>
中身はと言えば,オレと同じようにガキのころから孫悟空が好きだったという中国文学者の入谷センセイが,「西遊記」全編のテーマを世界各地の古代神話に見られる「死と再生」説話の集大成として捕らえ,比較文化論的な考察を加えたモノ。古事記のスサノウノミコトに孫悟空を重ねて見るあたり,細部にはいささかコジツケめいて感じられる部分もないではないものの,たいへん面白く読めました。<BR>
特に玉帝,観音菩薩,釈迦如来などのいわゆる「神仏」のメンメン相互の関係を明白に図式化してくれたのと,それからオレが子供のころから「西遊記における論理的欠陥」と感じていた「孫悟空が水が苦手である」という設定に関してちゃんと考察してくれたのとはたいへんウレシクなってしまった。そうなのだ,玉帝と釈迦はどっちが偉いのか,治めている土地が違うのかチカラ関係がさっぱりわからないし,滝に飛び込んで水簾洞を発見したサルがなんで水が苦手なんやねん,八戒の見せ場を作ってやるために話を枉げてないか,と思っていたのだ。とにかく西遊記ファンのヒトはご一読を。 |
関連本棚: |
ラダガスト
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かがやく日本語の悪態 (新潮文庫)
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著者: |
川崎 洋 |
出版社: |
新潮社 |
評価: |
★★★★☆ |
カテゴリ: |
俗語
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コメント: |
悪態……悪態って分かるよね? 阿呆とか馬鹿とか間抜けとか,ボケ,尻青,たわけ,おたんこなす,デレ助,オカチメンコ,逆ボタル,脳足りん,すっとこどっこい,唐変木,スカタン,田子作,ウスラトンカチ,ウンコたれ,お前の母ちゃんデーベソと……つまりは口げんかで使う罵り言葉である。<br>
この本は詩人にして日本語の研究者でもある著者が,落語や色里言葉,方言など各方面から取材して集めた,実際に使われている(いた)日本語の悪態の集大成である。なるほどこうしてまとめられた古今東西の悪態を並べてみると,巻頭で著者が嘆いておられる通り,最近の流行の悪態は語呂合わせや短縮形が多くてあんまり芸がない。口げんかで互いにストレスを発散できず,内に溜め込んである日ナイフを振り回すって世相はちゃんと言葉にも影響しているのだなぁと。<BR>
ま,正面切って「次世代に語り伝えよう戦争体験」みたいなわけにはいかぬにしても,「宇治むら」なんてオツな作りの隠語は知っていると楽しいし,「酢豆腐」とか「権九郎」みたいに裏に一個の物語を背負った言葉は知ってるだけでそれ日本文化への造詣ということになるわけだしね……。<BR>
ところで一個だけこの本に異論。124ページに出て来る「男はつらいよ〜寅次郎紅の花」のリリー(浅丘ルリ子)の悪態「口ほどにもない臆病者で,つっころばしでぐにゃちんで,とんちきいのオタンコナスだってんだよ」の中の「ぐにゃちん」は「山田洋次監督の造語なのかぐにゃぐにゃしたオタンチンという語感を覚えます」なんてもんぢゃなくて,単なる★◎♪▼♂だと思いますけど(笑)。 |
関連本棚: |
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闘蟋―中国のコオロギ文化 (あじあブックス)
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著者: |
瀬川 千秋 |
出版社: |
大修館書店 |
評価: |
★★★★ |
カテゴリ: |
道楽
文化
中国
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コメント: |
日本にもある闘鶏や闘犬さながらにオスのコオロギを闘わせる,そういう遊びが中国にあるというのはなんかで読んで知っていた。が,これほど深いもんとは思わなかった。深いだけでなく歴史も古い。唐代玄宗皇帝のころというから8世紀の初頭には既にコオロギを闘わせる遊びが流行し,都の金持ち達はこれに莫大な金を賭けていたらしい。うーん,唐ですか。<BR>
と,オレだけ勝手に感心していても始まらないのでまずは競技のあらましを紹介しよう。例えば10人,虫主(虫の飼い主のこと)が集まって闘蟋を開催するとすると,皆それぞれ10個あまりの素焼きの壷(養盆という)を持って現れる。1つの養盆に1匹のコオロギが入っており,内部の調度は鈴房(ベッド)に水皿に飯板,ほとんど後楽園ホールのボクサーの控え室という風情である。<BR>
試合に先立って厳密な体重測定が行われるのもボクシングと同じだ。闘蟋は基本的に体重の同じムシ同士で闘われる。自分の戦士の計量が終わった虫主たちは,彼等(思わず擬人化する)の戦意を高めるため,それぞれ自分が効果ありと信じる「最終調整」を行う。ある者はコオロギを熱気から護るために養盆ごと廊下に持ち出し,ある者は養盆にメスを入れて交尾をさせる,虫を手のひらに入れて振る者,養盆の蓋をわずかに持ち上げて息を吹き込む者いろいろだ。<BR>
やがて試合が始まる。闘盆と呼ばれる浅手の鉢(最近は観やすいようにアクリルの透明なものが主流なんだそうだ)の中央に仕切りが置かれ,それを挟んだ両側に戦士が1匹ずつ放される。茜草と呼ばれる細筆のような道具の先で彼等をつついて挑発し(これはつまり相手の触覚が体に触れたと思わせてコオロギの縄張り意識を刺激するわけだ),双方牙を剥いたところで仕切りを取り外す……。<BR>
とにかく全ての局面においてノウハウ,ウンチク限りのない趣味である。やれ養盆を焼く土はドコに限るとか,晩秋には水皿をそれまでの5mmほどの深さのものから3mmのものに変えないといけないだとか,茜草には生きているネズミのヒゲを引っこ抜いて使うべきだいやオヒシバ(イネ科の1年草)の茎の繊維にエノコログサの細い茎を芯として挿し入れそれを蒸したあとで日に干してハエの頭の血を少しつけたものこそ霊験あらたかだとか,どんなメスがヤマノウチカズトヨの妻となって内助の功を発揮するかだとかどんなメスが強力無双の戦士をスポイルしてしまうかだとか,これでもかこれでもかと中国人は際限なく探求記録しちゃう。とにかくひとたびこれを読めば,コオロギを飼ってみたくてウズウスすること必定である。お金があって戦争が終わって例の肺炎騒ぎがおさまれば今年の秋には上海の虫市に行きたい! |
関連本棚: |
サントリー学芸賞
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DUTY(デューティ)―わが父、そして原爆を落とした男の物語
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著者: |
ボブ グリーン |
出版社: |
光文社 |
評価: |
★★★★☆ |
カテゴリ: |
歴史
ドキュメント
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コメント: |
「マイケル・ジョーダン物語」で日本でも名前を知られているシカゴ・トリビューン紙のコラムニスト,ボブ・グリーンによるドキュメンタリー。落とされた側の国のヒトとして,また今アメリカがやってる戦争は暴挙だと思っているヒトとして,軽々にこの本を「良かった,感動した」とは言いにくいんだが,良かったし感動してしまった。 <BR>
彼の父親は第二次世界大戦に従軍し,主にヨーロッパで戦った。ドイツが降伏し,次の作戦,日本上陸のため船でインド洋を渡っている時,広島,長崎に原爆が落とされ,日本が降伏,おかげで若きボブ・グリーン・シニアはもう人殺そしてそのことを,原爆を落とし戦争を終わらせたB29「エノラ・ゲイ」の乗員達に感謝していた,というのである。グリーンは,父が遺した回想のテープと,20年間追い続けてようやくインタビューに応じてくれた「エノラ・ゲイ」の機長,ポール・ティベッツの言葉を重ねあわせつつ,「父達の世代」の心情をさぐっていく。 <BR>
本の終わり近く,グリーンはティベッツに「最後に泣いたのはいつですか」と訊く。エノラ・ゲイのパイロットは答える。「いままで一度も感情的になったり,突然泣き出したりしなかったからといって,心のなかでなにも感じていないわけではないのだ」。
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関連本棚: |
小説苦手のkan
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松山巌の仕事〈2〉手の孤独、手の力 (松山巖の仕事 2)
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著者: |
松山 巌 |
出版社: |
中央公論新社 |
評価: |
★★★★★ |
カテゴリ: |
文芸評論
文化論
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コメント: |
どの文章をとってもながながと感想を書きたくなる本なのだが,なかでも室生犀星の「雀」という短い詩から筆を起こす「詩のなかの住まい,詩のそとの家」という一編が素晴らしい。この詩から,松山氏は今は亡き中上建次のことを思い出す。彼が生前,谷崎潤一郎の著明なエッセイ『陰翳礼讃』を評して「あれは負け惜しみだな」と言った,というのである。谷崎のこのエッセイは,日本の美の極地は陰翳の中にこそあるという主旨のモノだが,松山氏はかねてからこの論からアール・デコを連想していたので,中上の指摘に驚き感心した。<BR>
谷崎が陰翳に映えるものを良しとするのは,照明が進歩して明るくピカピカしたものが増えたからだ。そして松山氏は,アール・デコというデザインもまた,そのような感性の産物であるといい,これを日本の伝統的な美というのは退廃が過ぎるのではないか,と考える。また,彼の見るところ,中上建次の視点はまた違い,西欧文化が移入され家屋も明るくモダンになる中で闇や陰翳をことさら採り出して礼讃する態度に,時代の進歩について行けぬ老人谷崎の「負け惜しみ」を感じたのだろうという。<BR>
そして話は室生犀星に戻ってくる。ここには負け惜しみはない。退廃的な美もない。ここにこそ「日本の美」はあるのではないか,としめくくる。「雀」に続いて同じ詩集『日本美論』から,「隣史」,それに「傾く家」が引用されている。この「傾く家」には鳥肌が立つぞ。日本を紹介するガイドブックに載るようないわゆる「日本の美」を詩人は歌っていない。そういうものではなく,これを「日本の美」と捉えた犀星を私は日本人として誇らしく思う。<BR> |
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