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イヴの七人の娘たち
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著者: |
ブライアン サイクス |
出版社: |
ソニーマガジンズ |
評価: |
★★★★☆ |
カテゴリ: |
生物学
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コメント: |
かなり前のニュースだが,覚えているヒトもいると思う,ミトコンドリアDNAの分析から,現代人全ての「母」にあたる女性が15万年前のアフリカにいたことが判明し,彼女は当然ながら「イヴ」と名付けられた,という話だ。この本はあの研究を行った,オックスフォード大学人類遺伝学教授ブライサン・サイクスそのヒトが,その研究内容を一般向けに噛み砕いて解説したノン・フィクションである。<BR>
この研究のよすがである「ミトコンドリアDNA」とは,細胞質にあって人間の活動エネルギーを生み出す働きをしている器官である。このミトコンドリアのDNAには,他の遺伝子と違って母方からしか受け継がれないという便利な特徴がある。昔バラの育成シミュレーション・ソフトを書いた時に出て来た植物における「細胞質遺伝」というのと同じようなものだナ。おまけにこのミトコンドリアDNAは,約2万年に一度の割合で突然変異を固定することが分かっている。なので例えばこれを読んでいるアナタとオレのミトコンドリアDNAを比べて,その違いの数を数えれば二人の共通の先祖 (母系) までどのくらい遡れば到達するのか,だいたい万年単位でわかる,という寸法なんですね。<BR>
……とは言え,それを実証するまでミチスジはもちろん平たんなものではなく,波乱万丈ヤマナカシカノスケなノン・フィクションになっている。なかでもワタシの心に残ったのは,かのヘイエルダール (こないだ亡くなった) が,コン・ティキ号で「実証」したポリネシア人の南米起源説がミトコンドリアDNAの研究ではっきりと否定されていたことである。これ,言葉は悪いがもっと宣伝すべきだと思うなぁ。まだまだ堅く信じているヒトが周りにたくさんいそうである。<BR>
結論として現在イヴの子孫には35の系列があることが判明している。このウチ東ユーラシア系はアメリカ系を含めて7系列ある。自分のDNAがどの系列かを知りたいヒトは,オクスフォードの研究所サイトに申し込むことができ,その<a href="http://www.sonymagazines.jp/mmt/200111080710">日本語インストラクション</a>がこの本の出版社,ソニーマガジン社に用意されている。やってみます?<BR> |
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かがやく日本語の悪態 (新潮文庫)
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著者: |
川崎 洋 |
出版社: |
新潮社 |
評価: |
★★★★☆ |
カテゴリ: |
俗語
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コメント: |
悪態……悪態って分かるよね? 阿呆とか馬鹿とか間抜けとか,ボケ,尻青,たわけ,おたんこなす,デレ助,オカチメンコ,逆ボタル,脳足りん,すっとこどっこい,唐変木,スカタン,田子作,ウスラトンカチ,ウンコたれ,お前の母ちゃんデーベソと……つまりは口げんかで使う罵り言葉である。<br>
この本は詩人にして日本語の研究者でもある著者が,落語や色里言葉,方言など各方面から取材して集めた,実際に使われている(いた)日本語の悪態の集大成である。なるほどこうしてまとめられた古今東西の悪態を並べてみると,巻頭で著者が嘆いておられる通り,最近の流行の悪態は語呂合わせや短縮形が多くてあんまり芸がない。口げんかで互いにストレスを発散できず,内に溜め込んである日ナイフを振り回すって世相はちゃんと言葉にも影響しているのだなぁと。<BR>
ま,正面切って「次世代に語り伝えよう戦争体験」みたいなわけにはいかぬにしても,「宇治むら」なんてオツな作りの隠語は知っていると楽しいし,「酢豆腐」とか「権九郎」みたいに裏に一個の物語を背負った言葉は知ってるだけでそれ日本文化への造詣ということになるわけだしね……。<BR>
ところで一個だけこの本に異論。124ページに出て来る「男はつらいよ〜寅次郎紅の花」のリリー(浅丘ルリ子)の悪態「口ほどにもない臆病者で,つっころばしでぐにゃちんで,とんちきいのオタンコナスだってんだよ」の中の「ぐにゃちん」は「山田洋次監督の造語なのかぐにゃぐにゃしたオタンチンという語感を覚えます」なんてもんぢゃなくて,単なる★◎♪▼♂だと思いますけど(笑)。 |
関連本棚: |
stonechild
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女は結婚すべきではない―選択の時代の新シングル感覚
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著者: |
シンシア・S. スミス |
出版社: |
中央公論社 |
評価: |
★★★★☆ |
カテゴリ: |
結婚
女性
社会
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コメント: |
ヨワイ40を超えてヒトリモノの私がこういうタイトルの本を読んでわかったようなコメントを書いたりすると,おそらく要らぬ憶測とナミカゼを呼ぶだろう予感はある。あるのだが,いや正味のところ,たいへん面白かった。<BR>
アメリカ社会に根強く残る (と言ったら「日本のほうが」だろうが) 「結婚制度への盲目的服従」がいかに人生を,特に女性の人生を苦しくつまらないものしているか,ということを数多くの実例をあげてレポートした本。著者であるスミス氏は,長年連れ添った夫と死別したあと,周囲の人々が「あなたはまだ若いんだから,いい相手を見つけて再婚すべきよ」と勧めるのに憤慨したそうだ。その時の話が面白い。<BR>
なんで女は結婚してないといけないみたいに言われなきゃいけないのか。そう聞き返されて周りの方がたまげてしまい,いろいろな支払いや車の修理など夫たるものの「仕事」を次々とあげつらう。そんなものは自分でできると彼女が言うと最後に出てきたのが「でもゴミ出しは旦那でしょ? (アメリカでは一般にゴミを出すのは男の仕事とされているそうな) 」と言われた。彼女は答える,ゴミ出しのために再婚する?馬鹿みたい(笑)。<BR>
タイトルはトンがっているが (原題は「Why Women Shouldn't Marry」) ,けしてウィメンズ・リブや過激なフェミニズムの本ではない。つうか,ここに「失敗した結婚の例」としてあがってるいくつかの事例はアメリカと言わず日本の夫たちこそ読むべき,身につまされるトコロがある話ではなかろうかと思う。そのヘン,シングルのオレなればこそ,うけけとヒトゴトとして笑って読めたのかも知れぬがね。 |
関連本棚: |
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蕎麦屋のしきたり (生活人新書)
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著者: |
藤村 和夫 |
出版社: |
日本放送出版協会 |
評価: |
★★★★☆ |
カテゴリ: |
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コメント: |
「有楽町・更級」の4代目藤村和夫氏による,蕎麦うちのコツから出しの引き方,通し言葉や符丁から,もりと種もの,「おやど」と出前の汁の違いまで。いやぁ実に面白く読ませていただきました。<BR>
ただちょっとだけ気になったのは,本屋で見かけたポップやオビなどこの本の広告にやたら「粋だ粋だ」と書いてあること。オレ的常識ではそういうのは「粋がる」って言って,これ以上ないくらい「粋ぢゃあねぇふるまい」だったはずだと思うんだがなぁ,NHKとかのヒトはどうお考えですか。<BR>
さすがに著者の藤村氏はその辺をわきまえてらして,ある広告では「私たち蕎麦を召し上がっていただく人間からすれば,粋だの,粋でないだのと生意気は言えない」とコメントなさってた。そうですよね,普通は。まぁその上で,それが「粋かどうかは知りませんが」と断りつつ,蕎麦屋にとって嬉しいお客というのを次のように紹介してらっしゃるので引用しようか,その客というのは,<BR>
まず酒を一本取り,お品書きを吟味しながらおもむろに飲みはじめ,しかるべき時に手の掛りそうな「つまみ」を注文し,できてきたらお代わりの酒を注文,食べているうちに「蒸籠,一枚」。水を切りながらつまみつつ,「もう一本」。「板わさでもおくれヨ」。酒がなくなる頃,「蒸籠,もう一枚」。これをゆっくり食べて,湯桶を入れて,残りの汁を全部飲んでしまってから「お勘定」。どうです蕎麦屋が喜ぶ客になれそうですか? |
関連本棚: |
KT
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知って合点 江戸ことば (文春新書)
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著者: |
大野 敏明 |
出版社: |
文藝春秋 |
評価: |
★★★★☆ |
カテゴリ: |
歴史
民俗
言語
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コメント: |
オレはもともとこのテの話が大好きでよく読むんだが,これもまた目からウロコがボロボロと落ちる面白本,最近の流行で言えば「へぇ」連発でありました。以下オレが「ヘぇ」を発したヤツを2つばかし……。<BR>
(1)「男はつらいよ」で寅さんがいう「タコ社長」の「タコ」は江戸弁では「ばか」の上を行く罵倒語なんであり,その由来は「イカ」だったのだ。……これぢゃなんだか分からないか,将軍の家来には旗本と御家人という2種類があった。もちろん旗本の方が上(身分は大名と同格)なんだが,その区別は将軍に謁見できるかどうかであり,それが許されない御家人達を「お目見得以下」と読んだのだそうだ。旗本の子供は御家人の子供を馬鹿にして「以下」と呼ぶ。「イカ」と罵られたら「タコ」と言い返すしかないぢゃないか。なので,「タコ」というのは「目上のニンゲンを罵って言う罵倒語」なのである。寅さんもあれでタコ社長の方が自分より偉いとは思っているのである(ホントか?)。<BR>
(2)「旦那」も元々は上の旗本,御家人の違いから産まれた言葉なのだ。江戸後期,市場経済の発達に伴って昇給のない武士の生活は相対的に苦しくなり,買い物に行く下女なども雇えなくなって「御用聞き」というシステムが発生した。その御用聞き達は旗本の家では主を「殿様」と呼び,御家人の家では差を付けて「旦那様」と呼んだのである。やがて明治維新が起こり,山の手が薩長出の官員(新政府の役人)で溢れた時,江戸の商人達は彼等を御家人と同格と看做して「旦那」という言葉を使い,田舎者の役人はこれを尊敬語だと思って喜んだ,という話なんですよ,旦那。知ってましたか? |
関連本棚: |
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DUTY(デューティ)―わが父、そして原爆を落とした男の物語
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著者: |
ボブ グリーン |
出版社: |
光文社 |
評価: |
★★★★☆ |
カテゴリ: |
歴史
ドキュメント
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コメント: |
「マイケル・ジョーダン物語」で日本でも名前を知られているシカゴ・トリビューン紙のコラムニスト,ボブ・グリーンによるドキュメンタリー。落とされた側の国のヒトとして,また今アメリカがやってる戦争は暴挙だと思っているヒトとして,軽々にこの本を「良かった,感動した」とは言いにくいんだが,良かったし感動してしまった。 <BR>
彼の父親は第二次世界大戦に従軍し,主にヨーロッパで戦った。ドイツが降伏し,次の作戦,日本上陸のため船でインド洋を渡っている時,広島,長崎に原爆が落とされ,日本が降伏,おかげで若きボブ・グリーン・シニアはもう人殺そしてそのことを,原爆を落とし戦争を終わらせたB29「エノラ・ゲイ」の乗員達に感謝していた,というのである。グリーンは,父が遺した回想のテープと,20年間追い続けてようやくインタビューに応じてくれた「エノラ・ゲイ」の機長,ポール・ティベッツの言葉を重ねあわせつつ,「父達の世代」の心情をさぐっていく。 <BR>
本の終わり近く,グリーンはティベッツに「最後に泣いたのはいつですか」と訊く。エノラ・ゲイのパイロットは答える。「いままで一度も感情的になったり,突然泣き出したりしなかったからといって,心のなかでなにも感じていないわけではないのだ」。
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小説苦手のkan
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メディア・リテラシーの方法
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著者: |
アート シルバーブラット |
出版社: |
リベルタ出版 |
評価: |
★★★★☆ |
カテゴリ: |
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コメント: |
監訳者あとがきを引用すれば,「メディアは構成されたものであるという前提のもとに,イデオロギー,自分史,非言語的表現,神話分析の視点からメディアを読み解こう」とし,そうした「メディア製作のさまざまな方法や技法を明らかに」することを目標に書かれた一種の「教科書」である(各章末にレジュメというか復習ドリルみたいのもついてるし)。<BR>
例えばこんな話だ。「となりのサインフェルド」のようなコメディは,主要な登場人物が直面するささいな問題,人間関係の苦労などを扱う。ここには,「成功とは純粋に個人的満足によって測られるものだ」というメッセージが込められている。彼等の社会的活動はそうした個人的欲求の充足と人間関係の構築(あるいは修復)に限定された形でオーディエンスに提示され,しかもその解決方法としてたいていはスポンサーの意に沿った「消費主義的行動」が採用される。映画を観に行くとか,ショッピングをするとか,そうした行為により彼等の「今週の問題」は解決あるいは先送りされるわけだ。<BR>
この本が出色なのは,上のようなメディア作品の構造分析に加えて,それを構成する諸要素,例えば登場人物の表情や動作,容姿や服装から,音声コミュニケーションの諸要素にわたる詳細な考察がなされていることだ。例えば会話における声の大きさは権威や信念の表れとなりうるし,逆に小ささは不安感,服従,曖昧さなどを表現する。<BR>
いやはや,全てのメディアがこの本に研究されていることがらを全て応用してその出力(だんだん作品とは呼びたくなくなってくる)を製作しているワケはない,と思うものの,そんなコトまでと空恐ろしくなるような部分もある。対象をとらえるカメラ・アングルに意味があり,上から撮れば対象を弱く無力に,下から撮れば強さと権威を感じさせるくらいは知っていたが,その水平な移動方向にも意味があり,カメラが文字を読む方向(欧米では…このページもそうだけど左から右)に動く映像は安定を,逆は不安を醸しだすなんて知ってましたか?<BR>
まったく,誰かに読んでもらいたい,というより,ある種の連中にはあんまり読んでいただきたくないような本である。そう思ったのはオレだけぢゃないらしく,地味な学術書にも関わらずオビの文句もこう書かれている。「どなたさまのご用心! 政治家までこんなことお勉強しているんだって……」。確かにそれはヤバいかも。 |
関連本棚: |
柴田邦臣
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マネー・ボール 奇跡のチームをつくった男
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著者: |
マイケル・ルイス |
出版社: |
ランダムハウス講談社 |
評価: |
★★★★☆ |
カテゴリ: |
野球
ドキュメント
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コメント: |
オビのアオリをそのまま書き写せば「貧乏球団アスレチックスは,なぜ勝ち続けるのか? 小説ではぜったい書けない男たちの熱いドラマ。」 <BR>
アスレチックスというのはサンフランシスコの対岸,オークランドに本拠地を置くメジャーリーグのチームだ。日本人選手もおらず,「A's」という略称を見てニッポンの阿呆な国会議員が「アメリカはすごいな,エイズにかかったヒトのプロ野球チームがあるのか」と言った(知らないヒトは信じないかもしれないが実話です。次から真面目に選挙に行く気になりましたか?)時以来日本の新聞などでメインの話題になったことはない(と思う)。 <BR>
が,このアスレチックス,ここ数年の成績は抜群。本書に寄れば「ニューヨーク・ヤンキーズの1/3以下の年俸総額の選手達を使って,ニューヨーク・ヤンキーズ並みの成績を上げ続けている」。まさに奇蹟のチームなのである。これは,その「奇蹟」を可能にした元二流メジャーリーガーのジェネラル・マネージャー,ビリー・ビーンの哲学と思想(というほど形而上的なモンでもないが)を追ったドキュメンタリー。「野球」を徹底的に科学し,文字通りの意味での「勝利の方程式」を作り上げた男の物語である。 <BR>
オレの読後感を正直に吐露すると「横浜ベイスターズの関係者はみんなこれを読め,他のチームのヤツはお願いだから読まないでくれ」ということになる。あ,あと一言だけ,1998年我らがベイスターズの優勝監督・権堂さんが「送りバントというのはわざわざ敵にアウトを献上するという世にも馬鹿馬鹿しい作戦だ」と言っていたのはデータ的にも圧倒的に正しかったのだ。まだ遅くない,ダイちゃん,権堂さんの采配を思い出そう!<BR> |
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ファストフードが世界を食いつくす
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著者: |
エリック シュローサー |
出版社: |
草思社 |
評価: |
★★★★☆ |
カテゴリ: |
アメリカ
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コメント: |
まず本から離れたところから筆を起こす。2001年10月3日の毎日新聞「記者の目」というカコミ記事に論説室の高畑昭男という記者が「タリバンも米国も悪か? 『どっちも』論こそ危険だ」と題して,「テロは『絶対悪』なんだから今こそ米国に協力してこれと戦わねばならない,テロとの戦いは『絶対に必要』なことだ」という好戦論を書いていた。<BR>
オレとてテロリストの側につき彼等の行動を支持するわけではない,ないが,この記者に逆に聞きたい。世界中が協力して「テロ支援国家アフガニスタン」を攻撃し,再度の報復テロなどできぬよう,一族郎党皆殺しにしたとしよう (オレはそうしてもテロはなくならないと思うが,「テロ」の主たる母体が「憎悪」である以上,皆殺しはこの記者などのいう「根絶」の最低条件だろ? 殺したいんだろ?) 。そしてどんな世界がやってくるのだ? <BR>
さぁ,米国を攻撃するテロリストはいなくなった,世界各国は今さらながら「世界最強」を誇る米軍の力を見せつけられた。そのあとで,例えばこの日本はブッシュに「京都議定書の批准」を要求できるのか? 核実験全面禁止条約 (CTBT) を反故にしてる,と批判できるのか。世界中どこの国が米国の首に鈴をつけられる? この戦争で勝利の味を覚えた米国民はきっと言うぞ,「なにジャップがアメリカの政策に反対してやがるだと,そんなヤツはテロリストと同じだ,かまうこたぁないからやっつけちまえ」。<BR>
米国にはそんなことをしない良識がある? あるかどうかがこの本に書かれている。あの国の象徴とも言えるファストフード産業が,他国民どころか自分の国の将来をになう子供らまでを,いかに食い物にして肥え太って来たか。そして歴代共和党政権が,特にレーガン・ブッシュ政権がいかにそれに手を貸して来たか,が全部書かれている。<BR>
テロリストは犯罪者として裁かれ罰せられるべきだ。今回の米国のやり方には賛成できない。なぜなら,米国以外の国がテロに遭った時に同じことができないやり方,アメリカにしか出来ないやり方でテロと戦おうと言ってるからだ。圧倒的な暴力をバックに,やんわりと協力を強制する。こう言っちゃなんだが,それはヤクザのやりクチだ。都合のいい時だけ「自由主義社会の盟主」になって権力を行使し,別の時には他国の苦境を顧みない。<BR>
石油などの化石燃料を使いたいだけ使い,世界中の二酸化炭素の約1/4を一国で排出するアメリカは,例えば地球温暖化による海面上昇が死活問題であるいくつかの国の苦しみには鼻もひっかけない。「自国の産業に悪影響があるから」京都議定書は批准しない,と言い切ったではないか。あんなことは米国にしか言えない。もしよその国があんな態度を取ったら他ならぬ米国にこっぴどく非難されるに決まっているからだ。そういうメンタリティがどっから来るのか,それもこの本を読めば解る。必読だと思う,あなたが例えばマクドナルドが大好きであれば。 |
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からくり民主主義
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著者: |
高橋 秀実 |
出版社: |
草思社 |
評価: |
★★★★☆ |
カテゴリ: |
ドキュメント
社会
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コメント: |
一読して,ようようこういうことを専門にルポするヒトが出て来たか,と思った。以前,シグマ計画のてん末について「SPA!」の取材を受けた(なんでオレが?とはオレも思ったけどね)時に同じような話をしたのだが,自分の専門分野のことが新聞や雑誌に取り上げられた時に感じる隔靴掻痒感や非現実感みたいなものって,きっとどの業界のヒト,どの事件の当事者にも共通しているコトなのだと思うのだ。<BR>
オレたちは「シグマ計画」について「こいつらあほか」と思ってたし,防衛庁のシステムの開発チームにオウムの子がまぎれこんでいた事件の時には「なんで騒ぐねん,いて普通やんか」と話し合ってた。同じように「報道される米軍基地問題」と地元のヒトの見ている現実は違うものだし,若狭湾原発銀座に住む「事故報道に不安を隠せない」はずのヒトビトの本音は「たまに事故が起って反対派が騒がないと補助金が減る」だったりするんである。<BR>
まぁありがちな表現を使えば「ニッポンの建て前と本音」つうことなんだが,今まで「そういう構造」について書くヒトというのはあんまりいなかった。「ゲンパツは危険ですコレデイーのか?」「諫早湾でムツゴロウが死んでいますコレデイーのか?」「統一教会のマインドコントロールは親から子を奪いますコレデイーのか?」……てなぐあいに,このテの問題に対するアプローチというのはたいてい「個別の問題に対する真正面からの告発」であり,「これがゲンジツです,これでイーのか?」と問うものだったのだ。<BR>
この本の著者・高橋さん(オレと同年なのだ)は,上にあげたような現場に「えらく遅れて」取材に行く。新聞やテレビや週刊誌の取材が帰ってさらに1年も経ったあとで取材に行くのだ(本人はいつも「出遅れる」と書いている)。そして当事者のみなさんと「世間話」をする。するとそこにはもともとそこにあった問題ではなく,それが「報道」というフィルタをどう通って行き,問題自身をどう変質させていったか,が見えてくる。で,その構造が同じなんですね,みんな。そして,そのフィルタの外側,つまり報道を通した結果としてオレタチが見るものは「からくり民主主義」なんである。どっとはらい……というべきか(笑)。 |
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未知なる地底高熱生物圏―生命起源説をぬりかえる
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著者: |
トーマス ゴールド |
出版社: |
大月書店 |
評価: |
★★★★☆ |
カテゴリ: |
生物学
地学
物理学
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コメント: |
実はこの邦題はあんまり出来がよくなくて,いったい何の「生命起源説をぬりかえる」んだか分からないと思うが,これは石油,石炭,天然ガスなどのいわゆる「化石燃料」の生命起源説のこと,早い話が石油も石炭も「化石燃料」なんかぢゃあねぇ,と主張する本である。<BR>
以前読んだ「トンデモ科学の見破りかた〜もしかしたら本当かもしれない9つの奇説」(ロバート・アーリック著)のなかでとりあげられ,「トンデモ度ゼロ(本当であってもおかしくない)」と判定されていたのに興味が湧いて買ってみたのだがいやはや恐れ入りました。小学生の頃理科の授業で,石油石炭は大昔の生き物の化石が地面の下でよくわかんない変化を遂げたものと教えられて以来固陋蒙昧なる生物起源説信奉者であった不肖フジモト,前非を悔いて本日よりこっちにコロビます。そうはいうがあんたこれは「第二の地動説」かも知れないよ。<BR>
以下ゴールド先生(いきなり先生扱いである)の主張をごく大雑把に総括してみる。<BR>
生物起源説はもともと,石油などの還元燃料は二酸化炭素が還元されたものであり,地球上で二酸化炭素を還元して同化することが出来るのは葉緑素を持った植物(生物)だけだから,石油はその死骸の成れの果ての市兵衛さんに違いないという。しかしこれが正しいとすれば,光合成の能力を獲得する前の生物はどうやって自分の身体を形成していたのか,生命は発生と同時に炭素同化能力を持っていたというのか,それはちとありそうもない。<BR>
最近の研究により,太陽系の多くの惑星,衛星などがその内部に炭化水素を多量に含有していることが判明した。つまり生命のいないよその星にも石油と同じく酸素と反応して二酸化炭素とエネルギ−になる物質が存在しているわけだ。とすれば,なんで地球の炭化水素だけがそれらとは違って植物のみなさんの光合成努力の賜物であるのか。モノゴトに二種類の説明があったら単純な方がより正解に近いんぢゃなかったのか(オッカムの剃刀ですな)。<BR>
シンプルでしょ? そして先生はこの自説を証明すべく,生物起源説によれば絶対に石油なんか出るはずのないスウェーデンの原野を試掘し,商業的には採算ベースに満たないものの決して「微量」とは言えない石油と磁鉄鉱のペーストを掘り出してしまう。しかし有力な科学雑誌はこれを黙殺「受理して掲載するにはほかの研究チームによる調査結果の再現が必要」とかほざくのである。あのなぁ花崗岩の原野に深さ6キロの穴を掘るのにいくらかかると思っているのだ。この理屈は「アメリカ以外の国が月から石を持ち帰るまであれを『月の石』とは認められない」というコトだぞ。<BR>
てなわけで,いつのまにかゴールド先生の憤懣まで身に背負ってしまったワタシだが,とにかくこの本は科学好きには絶対に面白い「極私的2004年輝け面白科学本大賞」最有力候補(邦訳が出たのは2000年だけど)の一冊なので,御用とお急ぎでない方はじっくり腰を据え,この「第二の地動説」を吟味してみてくれたまえ。 |
関連本棚: |
増井
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ポップ1280
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著者: |
ジム トンプスン |
出版社: |
扶桑社 |
評価: |
★★★★☆ |
カテゴリ: |
ピカレスク
アメリカ
小説
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コメント: |
吉野朔実の「弟の家には本棚がない」で知って取り寄せた1910年代のアメリカの田舎町を舞台にした暗黒小説……。つか,こりゃアメリカ版「村井長庵」(「歌舞伎・勧善懲悪覗機関(かんぜんちょうあくのぞきからくり)の」でもいいんだけど,ここは「筒井康隆の」を思い起こしていただきたいところ)ですな。<BR>
人口1280人の田舎町ポッツヴィル,この町の保安官ニック・コーリーは間抜けの皮をかぶった極悪人である。町の売春宿に巣食うヒモ達を殺して隣の郡の保安官をその犯人に仕立て上げるわ,時期保安官選挙の対立候補を噂を武器にして追い落とすわ,愛人の亭主を銃の暴発事故に見せかけて殺すわ……。そして彼はうそぶくのだ。「オレの意志ぢゃない,オレはみんながオレに期待していることをしているだけさ」。<BR>
同じ暗黒小説と呼ばれても,エルロイや馳星周の主人公たちはもっとギラギラで欲望むき出し,人を殺すときも鼓動バクバクな感じがするんだが,この男は違う。心の底からそんなことはたいしたことぢゃないと思っている,通るのに邪魔な石をどかすような感じ。ね,村井長庵でしょ? <BR>
……ところで「弟の家には本棚がない」にはこの本をネタにジャン=ベルナール・プイというフランス人作家が「1280の魂」という本を書いた,でも翻訳はされていないという話が出てくるのだが,ワシもそれが読みたい,読みたいぞ。 |
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脳のなかの幽霊 (角川21世紀叢書)
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著者: |
V.S. ラマチャンドラン, サンドラ ブレイクスリー |
出版社: |
角川書店 |
評価: |
★★★★☆ |
カテゴリ: |
医学
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コメント: |
事故などで切り落としてしまい実際にはない手足が痛む,という話は私も聞いたことがあった。この本はその現象,「幻肢」を皮切りに,カプグラ・シンドローム (脳に損傷を受けた人が肉親を偽者と感じる現象) ,サヴァン (映画「レインマン」でダスティン・ホフマンが演じたように社会適応能力に障害を持つ人が音楽や数学などの分野で異常な才能を示すこと) ,想像妊娠,多重人格などの現象を神経学的に検証したもの。 <BR>
面白いのは,幻肢などの不可解な現象をただ机上で取り沙汰するのではなく,それに悩む患者の臨床医として実地にその「治療」に取り組んだレポートでもあることだ。幻の手を開くことができず爪が掌に食い込む痛みに耐えかねて病院を訪れた患者が,著者の実験によって「先生,驚きました,手を開くことができました!」と言うシーンの感動は,子供のころ顕微鏡を覗いたり,セミの羽化を観察したり,月についての本を読んだりして感じたものと同種である。 <BR>
ニュートン力学,ダーウィンの進化論,フロイトの心理学と,科学の革命は常に「人類は特別な存在ではない,人類はこの宇宙という自然の一部である」ことを証明して来た,と著者は言う。それらは人間を「神に選ばれたモノ」の座から引きずりおろした,と考える人が多いようだが違うのだ,と。著者のラマチャンドランはインド人であり,その主張・感覚にはヒンドゥーや仏教の禅宗に近いもんが感じられる。その辺,もしかしたら原書で読んでるアメリカ人より我々の方が理解し易いかも。 <BR> |
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夢の科学―そのとき脳は何をしているのか? (ブルーバックス)
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著者: |
アラン・ホブソン |
出版社: |
講談社 |
評価: |
★★★★☆ |
カテゴリ: |
明晰夢
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コメント: |
…今はムカシ,懐かしい「MacLIFE」に連載を持っていた頃,サヴァン症候群の人たちのことを書いた「なぜかれらは天才的能力を示すのか」( ダロルド・A・トレッファート著)の中に「ハリモグラにはレム睡眠がない」とあるのを読み,コラムで「もしかしたら夢というのはフロイトが言うようなモンではなく,単に脳味噌が記憶をガベージ・コレクトしているのを『意識』がかいま見ちゃってるだけのもんぢゃないのか」と論じたことがある。書いてる方が「こりゃ大発見」とコーフンしたわりには読者からの反応もなく,そのうちすっかり忘れ果てていたのだが,この本を読むとオレの考えはあれで結構いいセンを行っていたんですよ,奥さん。<BR>
筆者によればフロイトの時代に比べて画期的に進歩した脳の基礎研究やさまざまな測定器具の実現により,ヒトが夢をみている時の脳の状態をリアルタイムで見られるようになった結果,夢の研究は長足の進歩を遂げ,いまや「空を飛ぶ夢をみるのは性的欲求不満があるからだ」式のフロイト的夢判断は科学的にほぼ否定されているのだそうな。では脳のどんな活動がヒトに夢をみさせるのか,そもそも夢をみるとはどんな意味があるのか。意図的に明晰夢(自分がいま夢をみていると自覚しながらみる夢)を見る方法とは……などに興味があれば是非ご一読を。今夜から眠るのが楽しみになるかも。 |
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著者: |
ジム クレイス |
出版社: |
白水社 |
評価: |
★★★★☆ |
カテゴリ: |
小説
イギリス
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hello makakas http://pitecan.com/Bookshelf/A4D9/4560047197.html|http://www.hondana.org/programs/write.cgi|shelf=べ*h|category=小説,イギリス|score=★★★★☆|isbn=4560047197*h|comment=hello makakas http://pitecan.com/Bookshelf/A4D9/4560047197.html| |
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