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かがやく日本語の悪態 (新潮文庫)
かがやく日本語の悪態 (新潮文庫)
著者: 川崎 洋
出版社: 新潮社
評価: ★★★★☆
カテゴリ: 俗語
コメント:  悪態……悪態って分かるよね? 阿呆とか馬鹿とか間抜けとか,ボケ,尻青,たわけ,おたんこなす,デレ助,オカチメンコ,逆ボタル,脳足りん,すっとこどっこい,唐変木,スカタン,田子作,ウスラトンカチ,ウンコたれ,お前の母ちゃんデーベソと……つまりは口げんかで使う罵り言葉である。<br>  この本は詩人にして日本語の研究者でもある著者が,落語や色里言葉,方言など各方面から取材して集めた,実際に使われている(いた)日本語の悪態の集大成である。なるほどこうしてまとめられた古今東西の悪態を並べてみると,巻頭で著者が嘆いておられる通り,最近の流行の悪態は語呂合わせや短縮形が多くてあんまり芸がない。口げんかで互いにストレスを発散できず,内に溜め込んである日ナイフを振り回すって世相はちゃんと言葉にも影響しているのだなぁと。<BR>  ま,正面切って「次世代に語り伝えよう戦争体験」みたいなわけにはいかぬにしても,「宇治むら」なんてオツな作りの隠語は知っていると楽しいし,「酢豆腐」とか「権九郎」みたいに裏に一個の物語を背負った言葉は知ってるだけでそれ日本文化への造詣ということになるわけだしね……。<BR>  ところで一個だけこの本に異論。124ページに出て来る「男はつらいよ〜寅次郎紅の花」のリリー(浅丘ルリ子)の悪態「口ほどにもない臆病者で,つっころばしでぐにゃちんで,とんちきいのオタンコナスだってんだよ」の中の「ぐにゃちん」は「山田洋次監督の造語なのかぐにゃぐにゃしたオタンチンという語感を覚えます」なんてもんぢゃなくて,単なる★◎♪▼♂だと思いますけど(笑)。
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夢の科学―そのとき脳は何をしているのか? (ブルーバックス)
夢の科学―そのとき脳は何をしているのか? (ブルーバックス)
著者: アラン・ホブソン
出版社: 講談社
評価: ★★★★☆
カテゴリ: 明晰夢
コメント:  …今はムカシ,懐かしい「MacLIFE」に連載を持っていた頃,サヴァン症候群の人たちのことを書いた「なぜかれらは天才的能力を示すのか」( ダロルド・A・トレッファート著)の中に「ハリモグラにはレム睡眠がない」とあるのを読み,コラムで「もしかしたら夢というのはフロイトが言うようなモンではなく,単に脳味噌が記憶をガベージ・コレクトしているのを『意識』がかいま見ちゃってるだけのもんぢゃないのか」と論じたことがある。書いてる方が「こりゃ大発見」とコーフンしたわりには読者からの反応もなく,そのうちすっかり忘れ果てていたのだが,この本を読むとオレの考えはあれで結構いいセンを行っていたんですよ,奥さん。<BR>  筆者によればフロイトの時代に比べて画期的に進歩した脳の基礎研究やさまざまな測定器具の実現により,ヒトが夢をみている時の脳の状態をリアルタイムで見られるようになった結果,夢の研究は長足の進歩を遂げ,いまや「空を飛ぶ夢をみるのは性的欲求不満があるからだ」式のフロイト的夢判断は科学的にほぼ否定されているのだそうな。では脳のどんな活動がヒトに夢をみさせるのか,そもそも夢をみるとはどんな意味があるのか。意図的に明晰夢(自分がいま夢をみていると自覚しながらみる夢)を見る方法とは……などに興味があれば是非ご一読を。今夜から眠るのが楽しみになるかも。
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脳のなかの幽霊 (角川21世紀叢書)
脳のなかの幽霊 (角川21世紀叢書)
著者: V.S. ラマチャンドラン, サンドラ ブレイクスリー
出版社: 角川書店
評価: ★★★★☆
カテゴリ: 医学
コメント:  事故などで切り落としてしまい実際にはない手足が痛む,という話は私も聞いたことがあった。この本はその現象,「幻肢」を皮切りに,カプグラ・シンドローム (脳に損傷を受けた人が肉親を偽者と感じる現象) ,サヴァン (映画「レインマン」でダスティン・ホフマンが演じたように社会適応能力に障害を持つ人が音楽や数学などの分野で異常な才能を示すこと) ,想像妊娠,多重人格などの現象を神経学的に検証したもの。 <BR>  面白いのは,幻肢などの不可解な現象をただ机上で取り沙汰するのではなく,それに悩む患者の臨床医として実地にその「治療」に取り組んだレポートでもあることだ。幻の手を開くことができず爪が掌に食い込む痛みに耐えかねて病院を訪れた患者が,著者の実験によって「先生,驚きました,手を開くことができました!」と言うシーンの感動は,子供のころ顕微鏡を覗いたり,セミの羽化を観察したり,月についての本を読んだりして感じたものと同種である。 <BR>  ニュートン力学,ダーウィンの進化論,フロイトの心理学と,科学の革命は常に「人類は特別な存在ではない,人類はこの宇宙という自然の一部である」ことを証明して来た,と著者は言う。それらは人間を「神に選ばれたモノ」の座から引きずりおろした,と考える人が多いようだが違うのだ,と。著者のラマチャンドランはインド人であり,その主張・感覚にはヒンドゥーや仏教の禅宗に近いもんが感じられる。その辺,もしかしたら原書で読んでるアメリカ人より我々の方が理解し易いかも。 <BR>
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ソフトウェア職人気質―人を育て、システム開発を成功へと導くための重要キーワード (Professional Computing Series)
ソフトウェア職人気質―人を育て、システム開発を成功へと導くための重要キーワード (Professional Computing Series)
著者: ピート マクブリーン
出版社: ピアソンエデュケーション
評価: ★★★★★
カテゴリ: ソフトウェア・エンジニアリング コンピュータ
コメント:  この本には猛烈に感動した。……なんというか長いことプログラミングに関する原稿でワタシが言い続けて来たアレコレが,もっとちゃんと体系付けられ,学問的に通用しそうな言い回しで語られている,「そうだよ誰かがこういう本を書かなくちゃウソだよ本」なのである。<BR>  もうホンマ,溜飲が下がるというかもっと言ってというか我が意を得たりというかそういう記述の連続で,ときおり本を膝の上に伏せてはああ,オレは間違ってはいなかったぜ,と感慨に耽ることもしばしばだ。たとえば:<BR>  ●資格制度は幻想である。<BR>  ●素晴らしいソフトウエアには署名がある。<BR>  ●ソフトウエア職人は下働きではない。<BR>  ●優れた開発者は管理者よりも価値が高い。<BR>  ●低予算でソフトウエア工学を実行することはできない。<BR>  ●ソフトウエア工学は個人というものを忘れさせる。<BR>  ●ソフトウエア職人は計画的陳腐化と戦う必要がある……。<BR>  おお,こうやって目次から小題のいくつかを書き写すだけで,中身を逐一ここで説明したくなる,腰を据えてじっくりと論じたくなる,一杯やりながらバカ話のネタにしたくなるぞ,なるんですよ旦那(旦那って誰だ?)。
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シティ
シティ
著者: アレッサンドロ・バリッコ
出版社: 白水社
評価: ★★★★★
カテゴリ: 小説
コメント: hello makakas http://pitecan.com/Bookshelf/A4D9/4560047413.html|http://www.hondana.org/programs/write.cgi|shelf=べ*h|category=小説,イタリア|score=★★★★★|isbn=4560047413*h|comment=hello makakas http://pitecan.com/Bookshelf/A4D9/4560047413.html|
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妖星伝 (1) (講談社文庫)
妖星伝 (1) (講談社文庫)
著者: 半村 良
出版社: 講談社
評価: ★★★★★
カテゴリ: 日本 小説 SF 伝奇
コメント:  半村良が実に20年の歳月を費やして完成した伝奇文学の最高峰。<BR>  我が国において,古来「神道」と対極にあったとされる「鬼道」,その信徒たちは皆超能力を持ち,破戒仏を尊み,戦乱と流血の影に暗躍して来たという。江戸は飢饉,腐敗の田沼時代,伝説の統率者にして不死身の存在「外道皇帝」が再臨するという……。<BR>  うう,これ以上なにを言えよう。読む者の宗教観,世界観,生命観,倫理観,宇宙観をもひっくり返す空前絶後の力業。日本語が読めるなら,「妖星伝」を読まぬうちに死ぬな。
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蟻の革命―ウェルベル・コレクション〈3〉 (角川文庫)
蟻の革命―ウェルベル・コレクション〈3〉 (角川文庫)
著者: ベルナール ウェルベル
出版社: 角川書店
評価: ★★★★★
カテゴリ: 小説 SF
コメント:  「蟻」トリロジーの最終巻である。1995年に最初の「蟻」が,96年に「蟻の時代」が刊行されてから待つこと実に7年,出版元も変わって文庫本での最終巻はちと悲しいが(「蟻」「蟻の時代」は上下2巻の単行本で持っているのだ),それでもこれを読めたことの幸せを素直にかみしめたい。いやぁ人生へのココロノコリが一個減った(いやまだ山ほどあるんだけどね)気分である。<BR>  シリーズ全部について解説すると長くなるのだが,このトリロジーはつまりニンゲンとアリという,共にこの地球上で社会生活を営む2種の生き物の邂逅と対立,そして共生の可能性についての物語である。フランスの郊外都市フォンテーヌブローを舞台に森に住む赤アリたち,そして彼らとのコミュニケーションに成功したニンゲン達が主人公だ。<BR>  この完結編では,森の中で謎の本「相対的かつ絶対的知の百科事典」を拾った拒食症の少女ジュリーと,ニンゲンと共に暮らしニンゲンの文化について深い知識を身につけた赤アリ103号とが合わせ鏡のように「蟻の革命」と「指(アリ達はニンゲンをこう呼ぶ)の革命」を推進する。ニンゲンたちは高校に立てこもって理想社会を作り上げようとし,アリたちは火の使い方を覚えカタツムリに乗って指との「コンタクト」にやってくる。いやぁ読み終わってしまったのが惜しい。まだ読んでないヒトが心底うらやましいぞ。<BR>
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食糧棚
食糧棚
著者: ジム クレイス
出版社: 白水社
評価: ★★★★★
カテゴリ: 小説 イギリス
コメント:  ジム・クレイスの短編集,いや掌編集というべきか。訳者によるあとがきによれば,著者はイタロ・カルヴィーノの「見えない都市」,プリーモ・レーヴィの「周期律」および,ある民話(そのストーリーもあとがきには紹介されているが長くなるので割愛する)にインスピレーションを得て本書を執筆したそうで,話の数はチェス盤(その民話にはチェス盤が出て来るのだ)の升目と同じ64,全ての話が食べること,食べものを主題にしている。<BR>  それぞれの話は全く独立しており,ショート・ショート風にオチのあるものあり,ないものあり,詩のように音読して楽しめる(翻訳でも)ものあり,音読以外では楽しめそうもないものあり,と実にバラエティゆたか。だがどの話もどこかに一本,クレイス波というかクレイス節というか,幸福の背骨に沿ってただひとすじ流れる冷や汗のような悪意というか無気味さみたいなものが添加されており,読み進むにつれてそのなんとも嚥下し難い余韻だけが蓄積されていく構造になっている。<BR>  読んでいる最中,「一人の男が飛行機から飛び降りる」のバリー・ユアグローを思い出したが,ユアグローの短編が(本人がそう思っているかどうかは知らないよ),無意識に潜む不条理を不条理の形のまま文章に掬い取ろうとしたものだとすれば,クレイスのこれらの掌編は食べるという行為の根源にある野蛮が,我々の文化によって隠蔽され隠蔽され隠蔽されてなお垣間見えてしまうその瞬間を文字で切り取ろうとしたものだと言えるかもしれない。遠い昔井上陽水がインタビューに応えて言っていたように「ものを食べているところをヒトに見せるもんぢゃない」のだ。
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魚籃観音記 (新潮文庫)
魚籃観音記 (新潮文庫)
著者: 筒井 康隆
出版社: 新潮社
評価: ★★★★★
カテゴリ: 日本 小説
コメント:  1997年から2000年にかけて,主に新潮社の雑誌に掲載された作品を集めた短編集 (なぜか一つだけ文芸春秋の「オール読物」掲載作品がはいっている,なんで?) 。<BR>  なんと言っても圧巻は表題作,孫悟空と観音菩薩が姦るという「ポルノ西遊記」である。帯にも「発禁覚悟」とあるがこれはスゴイ。まさに天才筒井康隆の面目躍如,作品中,男性器を表す単語だけで,陰茎,ちんぽこ,ペニス,逸物,陽根,男根,錫杖,珍棒,陽物,魔羅,へのこ,棍棒,男性自身,肉茎,肉棒,一物,大砲,珍宝,巨根,松茸,&lt;b style="color:black;background-color:#ffff66">デチ棒</b>,コック,こね棒……はぁはぁ,こんだけあり,それらがまた適材適所 (笑) ,こーふんするぞ,これは。<BR>  だいたい筒井作品のセックス・シーンというと,大概のヒトが「エディプスの恋人」のあのシーンを想起するらしいのだが,あれはあんまりエッチぢゃない。個人的意見としていままでのベストは「残像に口紅を」の第二部,世界から「あ」と「ぱ」と「せ」と「ぬ」と「ふ」と「ゆ」と「ぷ」と「べ」と「ほ」と「め」と「ご」と「ぎ」と「ち」と「む」と「ぴ」と「ね」と「ひ」と「ぼ」と「け」と「へ」と「ぽ」と「ろ」と「び」と「ぐ」と「ぺ」と「え」と「ぜ」と「う゛」と「す」が消え失せたあとで行われるそれであったが,この「魚籃観音記」はあれにまさるとも劣らない。むしろあれの「饒舌バージョン」とでも言うべきか。<BR>  他の短編では「粗忽電器屋」とでも言うべき「作中の死」が面白い。鼠や犬猫 (が主人公の小説もこの本にはあるのだが) ではなくニンゲンの行いを小説という形で描く以上,意識してあるいは意識せずに身辺の誰彼をモデルとして書くことはどんな作家でもするだろう。が,その行為自体に着目し,思索し,こうした短編にまで昇華するのはやっぱり筒井さんならではという気がする。かなり印象は違うがこれは「虚人たち」の系譜に連なる作品だと思う。<BR>  なお,当然というかオレはこの本を単行本で持っているのだが,そのISBNをAmazonで検索したところ不本意ながら文庫本しか出なかった。文庫を出したらもう単行本は印刷もしないのだろうか。なんだかなぁ。
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一人の男が飛行機から飛び降りる (新潮文庫)
一人の男が飛行機から飛び降りる (新潮文庫)
著者: バリー ユアグロー
出版社: 新潮社
評価: ★★★★★
カテゴリ:
コメント:  不条理と言えば不条理,脈絡がないと言えば脈絡がなく,悪夢だと言われればそうかもしれない,と思わせるようなごく短い話が149編納められたなんとも変わったテイストの本。著者のユアグローは南アフリカ出身,現在はアメリカに住んでいる。70年代からこのテの作品を発表,80年代にはMTVとかで自作短編の朗読とかもやっていたらしい。<BR>  で,このテイストをなんとか真似できないもんかと<a href="http://snakehole.air-nifty.com/yourgrau/">ゆあぐろ風</a>というblogを立ち上げてみました。興味があればご笑覧あれ。
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松山巌の仕事〈2〉手の孤独、手の力 (松山巖の仕事 2)
松山巌の仕事〈2〉手の孤独、手の力 (松山巖の仕事 2)
著者: 松山 巌
出版社: 中央公論新社
評価: ★★★★★
カテゴリ: 文芸評論 文化論
コメント:  どの文章をとってもながながと感想を書きたくなる本なのだが,なかでも室生犀星の「雀」という短い詩から筆を起こす「詩のなかの住まい,詩のそとの家」という一編が素晴らしい。この詩から,松山氏は今は亡き中上建次のことを思い出す。彼が生前,谷崎潤一郎の著明なエッセイ『陰翳礼讃』を評して「あれは負け惜しみだな」と言った,というのである。谷崎のこのエッセイは,日本の美の極地は陰翳の中にこそあるという主旨のモノだが,松山氏はかねてからこの論からアール・デコを連想していたので,中上の指摘に驚き感心した。<BR>  谷崎が陰翳に映えるものを良しとするのは,照明が進歩して明るくピカピカしたものが増えたからだ。そして松山氏は,アール・デコというデザインもまた,そのような感性の産物であるといい,これを日本の伝統的な美というのは退廃が過ぎるのではないか,と考える。また,彼の見るところ,中上建次の視点はまた違い,西欧文化が移入され家屋も明るくモダンになる中で闇や陰翳をことさら採り出して礼讃する態度に,時代の進歩について行けぬ老人谷崎の「負け惜しみ」を感じたのだろうという。<BR>  そして話は室生犀星に戻ってくる。ここには負け惜しみはない。退廃的な美もない。ここにこそ「日本の美」はあるのではないか,としめくくる。「雀」に続いて同じ詩集『日本美論』から,「隣史」,それに「傾く家」が引用されている。この「傾く家」には鳥肌が立つぞ。日本を紹介するガイドブックに載るようないわゆる「日本の美」を詩人は歌っていない。そういうものではなく,これを「日本の美」と捉えた犀星を私は日本人として誇らしく思う。<BR>
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職人学
職人学
著者: 小関 智弘
出版社: 講談社
評価: ★★★★★
カテゴリ: 文化論 技術
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『坊っちゃん』の時代―凛冽たり近代なお生彩あり明治人 (アクションコミックス)
『坊っちゃん』の時代―凛冽たり近代なお生彩あり明治人 (アクションコミックス)
著者: 関川 夏央
出版社: 双葉社
評価: ★★★★★
カテゴリ: 日本人論 マンガ
コメント:  関川夏央・谷口ジローのコンビが実に12年をかけて「近代日本の青春,明治」を描いた漫画シリーズ。 <BR>  第一部「坊ちゃんの時代」で漱石,第二部「秋の舞姫」で鴎外,第三部「かの蒼空に」で啄木,第四部「明治流星雨」で秋水,そして最後の第五部「不機嫌亭漱石」で再び漱石を中心に描かれているが,それら「主人公」はあくまで各々の時代,事件を語る狂言回しとしての役割を担っておるに過ぎず,あたかもバルザックの「人間喜劇」のように総体をもって日本にかつてあった「明治」という時代を描いている。 <BR>  いやいや,これは傑作です。読むべし。 <li> <a href="/%E5%A2%97%E4%BA%95/4575712299">文庫判</a>もありますね。(<a href="/%E5%A2%97%E4%BA%95">増井</a>) <li>ほう,文庫が出てるの? 揃えることをお勧めしますね。ヘタな明治本よりよっぽどタメになると思います。
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食べるアメリカ人
食べるアメリカ人
著者: 加藤 裕子
出版社: 大修館書店
評価: ★★★☆
カテゴリ: 健康 アメリカ
コメント:  オビにある,「アメリカ人は,なぜあんなにマズい食事で平気なのか?」という宣伝惹句にノセられて買ってしまった235ページ。この設問への答えとしてあげられているのはピューリタン的禁欲指向,開拓時代に培われた味より便利さへの渇望,そしてそれが行き着いた果ての,「オフクロの味は缶詰スープ」という現実など,目からウロコが落ちるような話ではない。まぁCIAやNSAの陰謀でメシがまずいわけもないが。<BR>  面白かったのはアメリカ人のどっかおかしい健康オタクぶりや,傍若無人なスシの食い方など,オレも常々思っていたあれこれが取り上げられていること。思わずそうそう,そうなんだよね,と同意首肯させられる。普通の日本人なら3食分はゆうにありそうな量のメシをコーラの1リットル瓶で腹に流し込みながら「日本食はローカロリー,ローファットだというから食ってるんだがちっとも痩せない」と愚痴るおばさんを見たことがあって,オレも「そんだけ食うなら何食っても一緒ぢゃないのか」と思ったもんな。<BR>  その他,アメリカで美味しいものを食うには郊外のエスニックを狙えだとか,結婚祝いの贈り物として定番のクックブックの話だとか,ベジタリアンの種類だとか,スラスラ読めるだけでなく史料的な価値もありそうだ。ここ数年,毎年行っている,バークリーのレストラン「シェ・パニーズ」の創業者アリス・ウォーターズの開店直後の苦労話なども興味深い。
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ねじとねじ回し-この千年で最高の発明をめぐる物語
ねじとねじ回し-この千年で最高の発明をめぐる物語
著者: ヴィトルト・リプチンスキ
出版社: 早川書房
評価: ★★★☆
カテゴリ: 文化論 技術
コメント:  ペンシルバニア大学で建築学の教鞭をとる著者に,ニューヨーク・タイムズからミレニアムを記念するショート・エッセイの依頼が来る。テーマは「この千年で発明された最高の道具」は何か。彼は早速自らの道具箱を引っくり返して最高の道具を選ぼうとするが……。<BR>  前半は「この千年で最高の道具」探しを通して候補にあがった道具達の歴史が綴られる。これかあれかといろいろな道具について来歴を調べるのだが,ほとんどがこの千年どころか前の千年以前の発明であることに驚かされる(著者も,読者もだ)。で,結局それは「ねじ回し」であるということになり,後半,ねじ回しとそしてねじそのものの起源を遡る旅が始まる。<BR>  ……と,いうわけでなかなか興味深い本なんだが,惜しむらくは読んでいるこっちの基礎知識が足りな過ぎてナニを言ってるのか分からないトコロも少なくない。例えば「☆という道具の仕組みは◎と●の組み合わせ」などと書かれていても,オレには●がどんなものなのかさっぱり見当がつかないのね。そんな日が来るかどうかは分からないが,もし歳とって日曜大工でも始めたらもう一度読もうかね。
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¥999 BOOK PLUS
¥999 BOOK PLUS
著者: フレデリック ベグベデ, Fr´ed´eric Beigbeder, 中村 佳子
出版社: 角川書店
評価: ★★★☆
カテゴリ: 青春 ユーモア 小説
コメント:  ヘンな題名だが,本国フランスで発売されたときの題名が「99F」つまり「99フラン」で,本の値段そのままだった。もちろん今はユーロになったので「14.99e(ユーロ記号のつもり)」に改められている,らしい。そして日本でも「¥999」というのが書名であり,また値段なのだ。税別999円で売っているわけである。
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呪いの研究-拡張する意識と霊性
呪いの研究-拡張する意識と霊性
著者: 中村 雅彦
出版社: トランスビュー
評価: ★★★☆
カテゴリ: 心理学 民俗 宗教
コメント:  愛媛大学で社会心理学を教えている著者は,同時にちゃんと資格を取った神主(神職というのが正確らしいが)でもあり,主に「呪術的実践と神道的世界観の心理学的研究」というのを行っている……そうな。<BR>  映画「死国」にも出て来たが,四国には伝統的に市井のシャーマン「拝み屋」が多数在住し,占い,まじない,加持祈祷などを行っている。彼らの役割,社会的位置などを文化人類学の観点から構造主義的に分析した研究は多い。が,それらの研究の多くは,基本的に彼らの行為の真偽や効果についての言及は避けてきた。本書はそれらの研究とは逆に,呪術や託宣,霊視や念力などの効果を現実のものとして認め,それが機能する心理的世界の模式を提起しようと試みたものである。<BR>  多少牽強付会的な印象もあるが,ユング呼ぶところの「ヌミノーシティ(霊性体験)」を,多くの場合その励起要因となる宗教性から切り離し,逆に全ての宗教がこの「霊性」の顕現に他ならないとする論理展開は興味深く,世界観としても面白い。また,この現象(というかチカラというか)を悪用しての呪詛やオウムのような人心収攬の危険性についてもキチンと言及しており,所謂「トンデモ本」ではない……いやトンデモ本を楽しもうと思って読んでも十分楽しいけどね(笑)。<BR>
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エノケンと“東京喜劇”の黄金時代
エノケンと“東京喜劇”の黄金時代
著者:
出版社: 論創社
評価: ★★★★
カテゴリ: レビュー
コメント:  オレは1961年生まれなので当然その全盛時代を知る由もないわけだが,あの筒井康隆をして「子供の頃ボクはエノケンになりたかった,『エノケンのように』ではなくて,エノケンそのものになりかったねぇ」と言わしめた『喜劇王・エノケン』,その片鱗くらいは知っておかねばと出演映画が放送されれば録画・鑑賞に務めている。昨年11月に江戸・東京博物館が行った特別企画「エノケン生誕100年記念映画祭」には「エノケンの千万長者」を観に行ったし……。<BR>  が,この本を読むとやっぱり「最高のエノケン」は映画ぢゃなくて舞台なのだと書いてある。もちろん執筆者の人たちはエノケン・ファンが嵩じて「東京喜劇研究会」なんてのを作っているわけで思い入れたっぷりなのは織り込み済みなんだが,しかしまぁ実に面白そうなんだよね。<BR>  『世界珍探検』(原作はカミ)では,南方で人食い人種に捕まった探検家のエノケン,縛り上げられて火あぶりにされるというところで肝心の酋長が出てこない。しばらく芝居を繋いだあと,エノケン自ら縄をほどき,舞台の袖に入るや「酋長はどうした! てめえなんかクビだこの野郎!」と叫び,しょんぼりした酋長を引っ張り出して来て客席にニヤリ……これは見たいよなぁ。<BR>
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帝国以後 〔アメリカ・システムの崩壊〕
帝国以後 〔アメリカ・システムの崩壊〕
著者: エマニュエル トッド
出版社: 藤原書店
評価: ★★★★
カテゴリ:
コメント:  アフガン,イラクとヤリタイ放題でいよいよ世界を統べる帝国たらんとしているかに見えるアメリカであるが,彼の国が真に世界帝国になりうるチャンスはとうに失われたのであり現在はその崩壊の過程にある,というフランス人歴史学者の挑発的分析の書である。 <BR>  まず,ソ連の崩壊以降世界は安定へと向かっているという基本認識が語られる。第三世界では未だイデオロギー的,もしくは宗教的熱病の発作のような争乱が見られるけれども,全体の傾向として発展と民主主義の確立へと漸進している……。ところがそうした方向を喜べない国が世界に一つだけある。それがアメリカ合衆国なのである。 <BR>  例えば今話題のイラク新法,もし北朝鮮が攻めて来たら(毎日餓死者を出してるようなクニがほんとに攻めて来られると思ってるヒトがいるのはワリと驚きなんだが)アメリカさんに守ってもらわなくちゃならないんだから賛成しなくちゃ,と言うヒトが結構いる。裏を返せば北朝鮮と仲良くできれば死ぬかもしれないイラクくんだりに我等が自衛隊を送る必要はないのであり,そうなると困るのは日本ではなくてアメリカだ。だからアメリカは軍事的に比較すればとるに足らないイラクやキューバ,北朝鮮を「悪の枢軸」と喧伝する。ヤツラと闘う正義のアメリカの言うことを聞け,というわけだ。 <BR>  著者の分析では,そろそろアメリカのこの論理に基づく「演劇的小規模軍事行動主義」(ブッシュの言う「テロリズムとの戦い」の上の文脈による言い換え)の底が割れて来ている,ということになる。今回のイラク攻撃に関しても,アメリカにとって「欧州にある保護領」であるドイツが公然と異を唱えた。「極東の保護領である日本もいずれ……」という期待はいささか買いかぶりぢゃないかと思うが,ともかく今や「消費しかできない世界の略奪者」たるアメリカの崩壊は歴史の必然だという分析には,賛否はともかく一読の価値があろう。
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再現・昭和30年代 団地2DKの暮らし (らんぷの本)
再現・昭和30年代 団地2DKの暮らし (らんぷの本)
著者: 青木 俊也
出版社: 河出書房新社
評価: ★★★★
カテゴリ: 文化 社会
コメント:
関連本棚: 家をたてたい人
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